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10剥き目・ニーナ

どうも、ニーナです。


先日の復讐の宴(ティータイム)は久しぶりに楽しませていただきました。

ああいうのは嫌いではありません。だからといって好き好んでいるわけではないですが、あのようなモノを見ると、心が昂るのは止められませんね。

豚の死に様には胸がスッとしました。ユーリ様のご両親を亡き者にした憎き怨敵でしたので。


ユーリ様からご両親の最後を聞いた時は、ハラワタが煮えくり返って危うく豚を殺しに行くところでした。

ユーリ様が復讐を成さねば意味がないというのに、我ながら軽率で困ります。

まあしっかりユーリ様が止めてくださいましたが。


それから慎重に入念に準備を積み重ね、完遂することができました。

ならず共の情報から使用人達のプライベートまで様々な情報をかき集め、ユーリ様と一緒になって分析し、作戦を立て、実行に移す。

言葉にしてしまえばこれだけのことですが、私にとっては非常に素晴らしい時間でした。

何よりもユーリ様と秘密を共有するという夢の様な権利を与えてくださったことに感涙せざるを得ません。


復讐を成した後、王に呼ばれ謁見しましたが、周りの貴族達にイラついてもう少しで飛びかかりそうでした。

ユーリ様をあんな品定めするような下劣な目で見るのは許しがたいです。一目見ただけでユーリ様の価値を理解できない屑共はみな消えてなくなればいいのです。

嗚呼ユーリ様ユーリ様ユーリ様ユーリ様ユーリ様ユーリ様!

つぶらな瞳に透き通るような肌、妖艶な黒髪と大人顔負けの知識、全てに置いて完璧で、後は私が体術をお教えすれば全て解決ですね!

ユーリ様に手取り足取り・・・


おっと暴走しそうでした。危ないですね。さすがユーリ様、一瞬で私の理性を刈り取っていきます。

『ユーリ様の為の完璧メイド』であるが為の表情管理にはいつも苦労します。

口をしっかりと結んでおかないといけません。



何はともあれ謁見も無事に終わり、城に泊まるかと思ったのですが、ユーリ様は部屋はいらないといってさっさと城下町へ降りてしまわれました。

もちろん私もついて行きましたが、お呼びでないのも数名来てますね。

ユーリ様も気づかれたようです。やはり流石です。


私がどうするのかお尋ねしようとした時でした。


「ニーナ、こっち」


どうやら尾行者の死角に入るようです。しかしそう簡単に逃げられるような者達とは思えないのですが・・・。

ユーリ様に手招きされて入った、人気のない路地。そこでユーリ様に手を引かれ、危うく転びそうになったと思ったら、全く知らない空間にいました。


「ここがこれから俺達の家になる」


待ってくださいユーリ様。私の理解が追いついていません。


「ここは、どこなのでしょうか?」


「ここは俺が魔法で作り出した空間だ。これを持っておけ。お前が入りたい時はそれに魔力を流して、こう捻ればいい」


ユーリ様が差し出してきた鍵を大事に受け取りました。

ここが私達の愛の巣になるのですね!わかります!

でも心配なこともありますね・・・。


「ユーリ様・・・この鍵を、もし、万が一なくしてしまったらどうしましょう?」


これは聞いておかないといけません。悪用されたらユーリ様の生活が脅かされてしまいます。


「ああ、心配するな。ニーナ以外には使えない。というか最初に魔力を流した者にしか使えないから、今の内に魔力流しておいてくれ」


それはもうかつてない程の俊敏な動きで魔力を流し込みました!これでこの鍵は私だけの物です。ユーリ様がくださった私だけの・・・ウフフフフ。どうしましょう、顔が緩んでしまいそうです。


「に、ニーナ?!大丈夫か?変な顔してるぞ?」


「はっ」


やってしまいました。笑顔を押し出さないように必死にこらえていたら、表情が歪んでしまったのでしょう。ユーリ様が心配そうにこちらを見ておられます。

恥ずかしくて死にそうです。なんと醜いものをお見せしてしまったのでしょう。


「なんならあそこのベッドで休むといい」


「そ、そうさせてもらいます!」


運良く指し示された逃げ道にそれはもうまさに脱兎のごとく飛び込みました。


「うわぁ・・・」


そして思わず声を漏らしてしまったのは仕方がないと思います。

だって飛び込んだ巨大なベッド・・・いえこれは座るものなのでしょうか?それにしては広めに作ってある気がしますが、とにかくその見たこともない家具は、すごく柔らかく包み込むように私を迎えてくれたのです。


「気持ちいいか?・・・ちゃんと再現できてるみたいだな」


「はい、すごくふかふかです」


後半ぼそぼそ言われたのは聞き取れませんでしたが、今はそれよりもこの高級な家具に夢中です。

と、少し冷静になってみるとこの空間の異質さが窺い知れました。

壁は無機質に白くまっさらで、どんな石を使っているのかもわかりません。ユーリ様に聞いたところ、こんくりーとという材質が再現されているそうです。

そして床も木目があるのにツルツルしていて不思議な感じですね。これはふろーりんぐという加工なのだそうです。

ユーリ様は一体どこからこういう知識を仕入れてくるのでしょうか?オーガリーもいつの間にか習得されていましたし、いつも私の自身を抉り取っていきます。

そんなところも素敵ですけどね。


それにしてもこの空間はすごいです。

風呂場――何故かガラス張りで丸見えなのですが――があって、恐ろしく機能的なキッチンがあって、冷蔵庫という世にも奇妙な食料庫までついています。

高めの天井には細長い光る棒が取り付けられていて、昼夜関係なく内部を照らしてくれるそうです。

更に、望めば窓を設置することもできるんだとか。窓からは周囲の様子が見え、外から中は見ることはできないと。

至れり尽せりとはこのことでしょう。


一通りの家具の説明を終え、私とユーリ様は湯沸かし器というこれまた奇妙な道具で紅茶をいれて、ささやかなティータイムです。


「お味の方はどうでしょうか?」


「おいしいよ。さすがニーナ」


そう言って優しく微笑まれるユーリ様に、私は思わず抱きついてしまいました。

もう先程からウズウズしていたのです。

というよりもここ最近忙しかったので、ユーリ様とイチャイチャする時間が取れなかったのが本当の理由でしょうか。


「わっ、ニーナ溢れちまうだろ」


そう言いながらしっかりと私の胸を揉みしだいているあたり、さすがユーリ様と言わざるを得ませんね。


「急にどうした?」


「労働過多による欲求不満です。一刻も早く解消する必要があると思われます」


「それで抱きついてるわけ?」


「左様です。ついでに揉まれております」


「実は俺も欲求不満だったりして」


白い天使のようなユーリ様も好きですが、こういう黒いユーリ様もそれはもう愛おしいです。


「ではメイドとして主の欲求不満には答えなければなりませんね」


「やっぱ落ち着くわーこれ」


私の胸に顔を埋めるユーリ様を、そっと抱きしめます。

やはり不思議な方ですね、ユーリ様は。

まだ5歳だというのに、あまりに辛い過去を背負っていらっしゃいます。

それをおくびにも出さないで、私とこうして戯れてくださる。

しかし復讐は終わったのですよ。

一度くらい、寂しがってもよろしいのではありませんか?


私がそう耳元で静かに囁くと、ユーリ様は一瞬びくっと体を強ばらせましたが、すぐに胸の中で「いいのかな?」とくぐもった声が聞こえました。

その声は5歳の子供が出す年相応の寂しい悲しい声音でした。


「私に父親は務まりませんが、母親の代わりであれば誠心誠意務めさせていただきますよ」


赤子をあやす様に頭を撫でながらそう言いました。

もうユーリ様にご両親はいません。どんなことをしても戻っては来ないのです。

それがどれほど寂しいことか、私には想像もつきませんでした。

でもこれ以上耐えていてはユーリ様が壊れてしまうと思ったのです。


案の定でしょうか、私の胸元で鼻を啜る音がし始めました。

ユーリ様は静かに涙しながら、時折「母さん」と絞り出すように呻くのです。

私はその御姿にもらい泣きして、一層強く最愛の人の小さな体を抱きしめました。




愛してやまないユーリ様、このニーナ、我が身尽き果てるまで共にいることを誓います。

だからどうか、明日は笑ってくださいますよう。

ニーナはユーリには結構な割合でエスパーを発揮します。


ユーリは基本前世を引きずってその精神年齢で行動してますが、この世界での親には普通の親子感情を持っていたと思ってもらえればいいです。

ユーリはシャイですからね。自分にも嘘をつくのです。

それで頭の中がチョイ悪っぽくなるのです。



ニーナの立場が強すぎて他のヒロイン出しにくいかもしれない・・・

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