第25話 二度目の買い食い
◆ソルゾラス家
【アロフィス・ソルゾラス】
自由都市の英雄。竜殺しの二つ名を持つ白金等級。四人の妻と、数えきれない愛人、買い上げた女奴隷を屋敷に置き、連れ歩く以外では外へ出さない。教会へ多額の献金をし、冒険者ギルドにも寄付している。傭兵団を率いて魔物討伐に向かう。
「僕はみんなを幸せにする」
【フィデリア・ソルゾラス】
第一夫人。アロフィスの幼馴染で、かつては同じパーティーの冒険者だった。リリアの母。屋敷では、新しく来た女たちを馴染ませる役を任されている。娘が家を出てすぐに、私財を投じて「娘の保護」を依頼した。
「ただ、無事だとだけ、時折教えてください」
【第二夫人】
アロフィスに随行し、商人組合や教会との付き合いに気を配る。
「あなた、素通りするところだったわ」
【第三夫人】
金等級の冒険者だった。大陸屈指の戦闘術ケラガ・ルヴ(略式)を修めている。気性が激しく、第四夫人を迎えると聞いて声を荒らげた。現在、屋敷にいない。
「またそれ! 女ばかり増えてるじゃない!」
【第四夫人】
グレンス商会から嫁いできた。最年少の妻。兄を慕っていて、兄の書いた手紙を両手で持って走る。
「ひどいと思いませんか?」
【家令】
屋敷の内外の知らせを、アロフィスへ取り次ぐ。数少ない男性使用人。
「旦那様。実は、先ほどより、いくつか知らせが」
【傭兵団】
金で雇われた者たち。腕にソルゾラス家の腕章を巻く。女を「連れてくる」役も担う。
「ま、どうせ顔隠してる女なんてブスに決まってる」
◆グレンス商会
【イーゴ・グレンス】
次期当主。第四夫人の兄。「英雄の義兄」を名乗る。胡椒と岩塩を握り、公爵家への販売を断った。ロッタに商会へ来いと迫り、断られると帰さないと言った。
「力を持った男には、金も女も集まる」
【テオ・グレンス】
イーゴの弟。兄のやり方を諌めるが、突っぱねられる。
「先に手を出したのはこっちだろう」
【主人】
イーゴとテオの父。病に倒れてから、商会の表に出ていない。公爵家とは代々の付き合い。
◆教会
【マルドゥク】
司教。アロフィスの功績を称え、献金を受け取る。見返りに彼の一夫多妻を祝福する。塩の製造・販売許可権を主張しており、海水から塩を作る者を取り締まる。
「多くを恵む者が多くを娶る。それが理ですからな」
◆冒険者ギルド
冒険者に依頼を斡旋する組織。
等級は下から、鉛・鉄・銅・銀・金・白金。白金等級は、自由都市に二人しかいない。
【受付嬢】
ナナの登録を受け付けた。規則に忠実。英雄の裏取引を断っている。
「規則は、規則ですから」
【副ギルド長】
英雄の口利きで、その席に就いた。ナナの捕縛に金貨二枚を出し、英雄と教会へ使いを走らせようとした。負傷して教会に運び込まれる。
「君は責任をとれるのか?」
◆沿岸区
港は公爵家のもの。都市を追われた者たちの浮き家が、そこに庇護されている。舫い綱で船と船を編み、外側に漁船を並べて壁にしている。
【リリアーヌ・ソルゾラス(リリア/ナナ)】
アロフィスとフィデリアの娘。十三歳。屋敷を出て、高台の屋敷でメイドとして働く。ケラガ・ルヴの訓練による換骨奪胎で、一ヶ月のうちに背も声も変わった。冒険者としての登録名はナナ。登録初日に銅等級。
「……わたしは、あの家に帰らないから」
【メイ】
白金等級の冒険者。姓は伏せている。沿岸区の依頼を多く受け、庶民の味方とも呼ばれる。諸外国からも依頼が絶えず、そのためか不在も多い。人並外れてよく食べる。
「リリアには、父親を超えてもらうわ」
【老婆】
海に浮かぶ宿の主。家から逃げてきた娘、売られかけた娘を泊めてきた。フィッシュフライが宿の名物。
「うちは、そういう子ばかり泊めてきたからね」
【メイド長】
高台の屋敷を取り仕切る長身メイド。使用人を四交代で働かせ、休みを守らせる。
「胡椒よりも、あなたたちが欠けたら、困ります」
【港の女たち/屋台の店主たち】
海鳥の羽や貝を納め、綿や蝋燭を受け取る。近ごろ、場所代を求められている。値上げの理由を、客のほうから聞かれる。
「あんた、それやると教会がうるさいよ」
【ロッタ】
高台の屋敷のメイド。そばかす。リリアより年上。料理を教えた。怖い相手にも、言うべきことは言う。
「英雄の義兄? どこが偉いってのさ!」




