表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セトウチに灯る光  作者: Leon Black Angel


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/52

第45話:贖罪の主――審判と慈愛の旋風

瀬戸内の地に、ついは「あの方」が降臨しました。伝説の戦神クラトスが、かつて自ら刃を向けた主と再会し、数千年の呪縛から解き放たれます。影の軍勢が奈落へと消え去り、精神世界では神々の傲慢が打ち砕かれます。罪を悔い、真実を求めた魂たちに与えられるのは、滅びではなく「救済」。運命の夜明けが、今、静かに始まります。

漆黒の雲が割れ、垂直に降り注ぐ白銀の光の中に、その男は立っていた。

華美な法衣も、威圧的な武器も持たない。ただ、そこにいるだけで全ての憎悪が霧散し、戦場に静謐な慈愛が満ちていく。

「……真実を求める心の叫びに応え、私はここに裁定を下す」

イエスが静かに、しかし宇宙の端々まで響くような威厳を持って両手を広げた。

その瞬間、瀬戸内の街を埋め尽くしていた無数の影の兵士たちが、一斉に断末魔の悲鳴を上げた。足元の地面が巨大な亀裂となって裂け、そこから底知れぬ「アビス(深淵)」の引力が発生する。

「う、あああああッ!」

影たちは抗う術もなく、渦巻く闇の底へと吸い込まれていく。ナンドやリュウ、ジュンを苦しめていた絶望の軍勢は、主のただ一度の命令によって、塵一つ残さずこの世界から消し去られた。

呆然と立ち尽くす仲間たちの中で、ただ一人、激しく肩を震わせている者がいた。

クラトスだ。

彼はかつて、天界で主を襲った自らの罪に苛まれ、顔を上げることすらできない。

「主よ……」

絞り出すような声と共に、クラトスは石畳に額を擦りつけるようにして跪いた。その時、厚い雲を割った温かな光のような手が、そっと彼の肩に置かれた。

クラトスが恐る恐る顔を上げると、そこにはかつてと変わらぬ、慈しみ深い微笑みを湛えたイエスの姿があった。

「よくぞ、戻ってきてくれました」

「……っ! 私は、私は、あなたに刃を向けた大罪人だ! 救いなど、受ける権利はない……私は、アビスへ堕ちるべき男なのだ!」

クラトスの瞳から、大粒の涙が溢れ出す。しかしイエスは首を振り、柔らかな声で答えた。

「私はあなたを裁くために来たのではありません。父の子らを、失われた羊たちを救い、贖いを与えるために来たのです。……残念ながら、平和を拒み、自らの誇りと自由という名の傲慢に生きる者もいますが、あなたは違う。あなたは愛を思い出した」

「私を……救ってくださるのですか、主よ」

「それが、あなたの望みですか?」

「はい……わが主よ!」

イエスがクラトスの額にそっと触れる。その瞬間、彼の肉体を覆っていた傷跡と、数千年の憎悪の重圧が光の中に溶けて消えた。クラトスの姿はまばゆい粒子となり、天へと昇るようにしてその場から消え去った。

間髪入れず、イエスの意識はレオンたちが戦う精神世界へと介入した。

そこでは、追い詰められたポセイドンとリリスが、今なおレニとジラの魂を汚れた鎖で縛り付けていた。

「この世界は我らのものだ! 貴様に干渉する権利はない! この人間共は、我らが選んだ器だ!」

神々の咆哮に対し、イエスは静かに告げた。

「貴様たちが支配できるのは、憎しみに染まった心だけだ。だが、この者たちは、心の底から私を求めた。その真実の叫びがある限り、貴様たちの支配はここで終わる」

イエスの瞳が鋭く光り、絶対的な権威が発動する。

「深淵へと退け、闇の住人よ。私は汝らに命ずる!」

その一言は、宇宙の法そのものだった。

ポセイドンとリリスの絶叫が精神世界を震わせた。彼らの神核は無理やり引き剥がされ、現実世界のレニとジラの肉体から、不気味な青と黒の霧が噴き出した。霧はそのまま、先ほど開いた大地の裂け目へと吸い込まれ、永遠の封印へと連れ去られていった。

「う、あ……」

依代(器)としての呪縛から解放されたレニとジラは、そのまま糸の切れた人形のように崩れ落ちた。近くにいたナンドとリュウが、咄嗟に二人を抱きとめる。

「レニ! ジラ! しっかりしろ!」

同時に、全ての力を使い果たしたレオンもまた、膝から力が抜け、前のめりに倒れ込んだ。

「レオン!」

間一髪、ララが彼を抱きしめるようにして受け止めた。

瀬戸内の街を覆っていた水位が急速に引き、暗雲の隙間から、本当の朝の光が差し込み始める。

神々の乱入は終わり、英雄たちは傷つきながらも、一つの長い夜を越えた。

第45話をお読みいただき、ありがとうございます!

ついに「主」による救済が行われました。クラトスの贖罪、そしてレニとジラを苦しめていた神々の追放。圧倒的な権威をもって闇を払うイエスの姿は、まさにこの物語の究極の光でした。

仲間たちは全員救われましたが、戦いの代償は大きく、皆が深い眠りについています。

瀬戸内の街に訪れる、本当の夜明け。

しかし、レオンの中にいるカイロスはどうなったのか? そして、救われた者たちのこれからの運命は――。

物語はいよいよ、エピローグへと向かいます。

ここまでの熱い展開を応援してくださった皆様、ぜひ最後に【☆☆☆☆☆】の評価やブックマークをお願いします!執筆の励みになります。

次回、第46話「安らぎの陽光――新しき旅路」。

お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ