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汚穢  作者: ロベストラ
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ソウル・チャンバー

扉を開けると椅子に腰かけていた髪を水色に脱色した女性が立ち上がり、こちらに向かってきた。


はじめまして。イロリと申します。

律儀なお辞儀をし、名刺を渡してきた。

あなたの罪を教えなさい キャプテンTJイロリ


なんですかこれは?

さすがチヒロ様。お目が高い。この名刺には私のこだわりが随所に散りばめられておりまして。

この微妙な具合のオフホワイトに、透かしまでいれていて……

いえ、そうじゃなくて……あなたの罪を教えなさいって……

それは私が運営する教団の名前です。

名刺から顔を上げると、彼女とはじめて眼があった。

あらゆる存在を無機質な物として呑み込んでいく、空虚な深淵がガマ口を開けていた。


はじめまして。月島と申します。

そういうと私の横にいた大男が大きく身をかがめ、名刺をさしだした。

ありがとうございます。イロリと申します。

名刺を受け取ると、露骨に眉をひそめた。

えー……ありがとうございます。イロリ様ですね。

よろしければ、そちらにおかけになってください。

そう促すと、ありがとうございますと言い、イロリと付き添いの連れが椅子に座った。


早速で恐縮ですが、本日はウチのチヒロにお話したいことがあると伺いました。

どういったご用件でしたでしょうか。

はい。単刀直入に申しあげますと、チヒロ様。

そう言うと、私の方に目を向けてきた。

わたくしたちの教団に入信する気はありませんか?

まさかの勧誘だった。


ちょっと待ってください。大男が割って入る。

私共ですが、会社組織の秩序を維持するといった目的により、

宗教等の勧誘行為は社内規則により禁止とさせていただいております。

そのような勧誘はご遠慮していただけますでしょうか。


あら。そうなんですか?小暮社長からは許可をいただいておりますが。


左様でございますか。ただ、いかなる業務命令……たとえそれが小暮社長発令のものであろうとも、

社内規則が優先されるといった風に私は認識しております。

勧誘行為を許諾するかどうかの有無を含めて、

社長の小暮と一度相談いたしますので、

この場での勧誘行為は控えていただけますでしょうか。


わかりました。ただ、せっかくこのような場を設けていただきましたことですし、

チヒロさんにせめて、わたくしたちの活動がどのようなものかだけでも、

お伝えさせていただいてもよろしいでしょうか。

イロリと帯同していた眼鏡をかけた女が、

カバンから冊子を取り出し、こちらに渡してきた。


表紙には火の海の中、ビーフジャーキーや梅干しのように

赤く爛れたたくさんの人間のようなものが、

苦悶の表情を浮かべながら、天に向かって許しを乞うている様相が描かれていた。

私の連れは隣で怪訝な表情を浮かべていた。


チヒロさん、月島さん、おめでとうございます。

あなた方は、わたくしの見立てでは罪の因子を持っておりません。

イロリがそう言うと、隣の眼鏡はす、すごいと驚嘆していた。


罪の因子?


はい。勝手ながら、お二方のソウル・チャンバー内の魂を覗かせていただきました。

素晴らしいです。あなたたちの魂には罪の因子は何一つとしてございませんでした。


ちょ、ちょっと待ってください。

話についていけてないんですけど……

まずソウル・チャンバーってなんです?

それに罪の因子って……


おっと。わたくしとしたことが不躾に申し訳ございません。

言葉足らずでしたね。いちから説明させていただきますと、

人間の頭蓋骨の中には、箱状の小部屋のようなものが備わっているんです。

それはソウル・チャンバーといい、この中には5つの因子から構成される魂がしまってあります。


魂がしまってありますって言いますけど、頭蓋骨にはそんな小部屋のようなものなんてないですよ。


ありますよ。


……昔、僕は業務中に頭を骨折しましてね。

その時にレントゲンを撮りましたけど、そんなものは見当たりませんでしたよ。


ソウル・チャンバーや魂の因子はその性質上、

肉眼、ましてや、無知蒙昧で驕り高ぶった人類がこしらえた機器などではとらえることはできません。

わたくしのこの右目のみが見抜くことができるんです。

わたくしはこの地球上で唯一、魂の因子を見通す能力……

ジャッジメント・アイを習得しております。


わけのわからない名詞が次から次へとでてきて混乱してくる。


罪の因子がある人間は、必ず罪を侵します。

そのように上位者により、プログラムされているんです。

これは輪廻転生を繰り返えそうとも決して逃れることができぬシステムです。

罪人はどう抗おうとも罪人としての運命を全ういたします。

そしてこの因子の数により、侵す罪の重さが違ってきます。

例えば以前、国際的なテロを企て実行した首謀者がいましたよね?

ああいった輩の魂は5つの罪の因子で構成されております。

逆に罪の因子が1つしかない人間……これは人口の60パーセントに値しますが、シンプルにクズです。

因子が2つある連中は連中は所謂パワハラ上司やお局になります。

パーソナリティに深刻な問題を抱えているタイプです。

収監されるレベルの悪事はしませんが、その気質により周囲の人間の心身を蝕みます。

わたくしも以前、死を通じたリプログラミングが実行されるまでは、

堅気の世界で事務員として働いていました折に、お局の餌食となりました。

わたくしが部署内のイケメンに備品の在処を聞いたのが気に食わないみたいで……


興が乗ってきたのかそれからくどくどと事務員時代の愚痴をはじめてしまった。


あのすいません!

痺れをきらした月島がついに遮った。



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