宣戦布告
次の朝はとても早起きしてしまった。
昨日疲れてすぐ寝てしまったせいだろうか。
…昨日は楽しかったなぁ。
昨日の余韻に浸りながら、私は普段着に着替え、
廊下に出た。
「あら陛下、私を呼んでくださればよかったのに」
「フィルスもたまには休みなさい?」
「お優しいこと」
フィルスはニコニコと嬉しそうに笑ってくれた。
すると突然、私の耳に魔力通信が入った。
…これ光魔法じゃ無い。光じゃなかったら闇?
その通信の内容は、
『3日後の月無し夜に貴様らの国を蹂躙する』
…宣戦布告やん!?
まさか堂々と私に直接通信を飛ばすとは、なかなかに肝の据わった大将である。
…全土に戦争警備命令を出さないといけないやつだね。
戦争は本当に嫌いだ。命が泡の如く消え、どちらかの意志が消えるまで続けられる無駄な争い。
…せっかくいい気分だったのに。
心の中で文句を垂れながら、私は国々の領主たちに一斉に、
『闇からの宣戦布告あり、至急対策』
そう命令を下した。
次に各大臣と、クリス、フォトス、マティア、ランブルに、
『闇からの宣戦布告あり、至急会議室に集まれ』
と命令を下した。
私の命令により、場内は一斉に動き出した。
メイドや従者たちは、慌ただしく廊下を駆け回り、
その半数以上が会議室に流れていった。
…緊張感が一気に増すね。
正直言ってこういうバタバタした感じは好きでは無い。
…それでも私は守護神だから。国民を守る『義務』がある。
私は会議室の議長席に座り、さまざまな情報元から送られてきた闇の状況を整理していく。
…今はまだ動きはないのか。3日経ってからきっちり動き出すつもりなのかな。
今のところまだ結論は出せない。だが、何かしら闇も光への対抗策を持ってくるはずだ。
…面倒臭い!
私が情報を整理しているうちに、大臣たちが皆揃った様だ。
皆椅子の隣にきっちりと並んでいる。
「皆の者、席につけ」
私がそう言えば、洗練された動作で皆が席につく。
…みんな揃っててかっこいいねぇ。
左大臣、サタル。イリオス家次期当主。
右大臣、リリス。クマーレ家長女。
軍部大臣、フォレスト。グラス家当主候補者。
産業大臣、リティス。ヴィータ家次女。
魔術大臣、フランテリー。ムーンライト家次期当主。
福祉大臣、アリス。ムシュー家次女。
財務大臣、リディオ。アステリー家当主。
環境大臣、リリフ。アネモス家長女。
書記、アクア家長女、ウオリア。
フィウ家長男、フレイグ。
…こうやって集まると、なかなかに壮観だね。
大臣は、基本的に毎年それぞれの家から1人ずつ選出され、それぞれの得意に着く。
…フォレストなんて、仕事は最低限しかしてないからね!鍛錬があるとかなんとか言って、毎回逃げてるの聞いてるから!
私の後ろには、クリスたち身内が座っている。
私は一呼吸おいて、皆に向けて声を発する。
「皆の者、今日はどの様な事情があってここに集まってもらったか、わかっているな?
闇からの宣戦布告があった以上、こちらとしても無視しているわけにはいかないところまで来てしまっている。これ以上闇との因縁を深めるわけにはいかない。これから皆の者に今からやってほしいことを伝える。どうかわが国の平穏のために、尽力してくれたまえ」
「「御意」」
皆の心が一心に揃っているのを感じる。目指すべき場所をきちんと理解してくれている様で何よりだ。
「まず、右大臣、左大臣は今から下す命令をしっかり記録し、妾から直接指示が無くとも滞りなく動けるようにしろ」
「「御意」」
「次に軍部大臣。兵士たちの指揮を取り、至急戦闘準備を進めろ。戦争前の祝福の準備も忘れるな」
「はっ」
フォレストが真面目だとちょっと可笑しくて笑いそうになるが、ここで笑ったら威厳が消え失せるので堪える。
「産業大臣。異空間へ避難させる住民たちの財政サイクルをしっかり確立してくれ」
「承知しました」
「魔術大臣。戦争用の魔術武器と回復薬の準備と、量産を進める様に」
「仰せのままに」
「福祉大臣。異空間に避難する住民たちの福利厚生を確立し、病や汚れに怯えぬ様にしろ」
「御意」
「財務大臣。国々への財政援助の調整を迅速に行え」
「はっ」
「環境大臣。グラス家と協力し、闇による自然の変化や、資源の動きに目を配れ」
「承知いたしました」
…流石にここまで一気に命令出すと、疲れるよぉ…
だが、まだ休憩するわけにはいかない。
「皆の努力により、我が国に勝利の栄光がやってくることを期待している」
「「ご期待に添えるよう、精進いたします」」
そう挨拶をすると、皆はバタバタと持ち場へと向かう。
「ハァ…」
皆がいなくなった部屋で、私はやっとため息をつくことができた。
「頑張ったね、ソレイユ」
クリスが褒めてくれたが、目は合わせない。
…絶対目を合わせたらイタズラしてくるパターンだよ!私知ってる!
取り敢えず席を立ち、正装に着替えに部屋へ戻る。
私の正装は、クリスタルローブ。
クリスタルランスと同じ鉱物が飾りに使われており、これぞ国王と言った感じの服だ。
白い布は最高級の光絹。
金の刺繍は、光の魔力を長い時間をかけて、より合わせ、作られた糸で縫われている。
頭に兜を模したティアラを乗せてもらい、クリスタルランスを持って、兵士たちの集まる中央庭園へと光の象徴となる白いマントをはためかせながら、私は向かった。




