陽光
翌日。
暖かい日の光と共に目覚めた私は、満面の笑みでカーテンを開けた。
「久しぶりの休日だーーー!!!」
…前回の休日から実に1028日!!いやーー久しぶりの休みって最高!!!
本日は家族みんなで海にお散歩です!!!
もちろん、ランプルを含めて。
今から準備して向かうのは、タイズ海。
最も青い海、なんて言われている有名な観光地。
そこを王族権限で貸切にしました!!!
…地位もたまには役立つものだね。
私はベルを鳴らし、フィルスと着替えと準備を進めた。
まだ太陽が天頂に届かないころ。
「海だーーーーー!!!!」
私たちはタイズ海に到着した。
クリスとフォトスは、海に着くや否や、速攻で海に飛び込んでいる。
…いくつになっても、男子だねぇ。クリスは。
対して私たち女子グループは、魔法船で海を見渡すことにしている。
…私は生態系の調査も兼ねてるけどね。
どこへ行っても仕事仕事。全くである。
少し塩辛い海風と、すっきりと晴れ渡る初夏の空。
まだ海開きすらもされていないが、結界を弄れば気温なんてどうにでもなる。
「今日の母様はとてもお美しいですね」
「あら、ありがとうマティア」
私は白いワンピースに、青色のグラデーションがかかったレースが重ねられた、お出かけ用の軽い服を着ていた。
…そう!これ実は私の密かなお気に入り。
マティアか褒めてくれたことににへにへしていると、
「意外と日本と海変わらないんだね」
と、ランプルが懐かしそうに呟いた。
「遊びたいならあそこの男子たちに混ざってはしゃいできてもいいわよ」
「結構です」
海で遊びたいのかと思って、提案したら食い気味に断られた。解せぬ。
なんでだよぉ、と思いつつ、私は海を眺める。
『海は全ての起源。尊ばねばなりませんよ、姫様』
そう口酸っぱく言っていたお婆様を思い出す。
お婆様はクマーレ家の出だったから大切にしろと言っていたのかも知れないけれど。
魔法船での周遊が終わると、私たちはベンチでアイスやら、お菓子やらを食べて、男子たちを見ていた。
…よくあんなふうに動き回れる体力あるよね。
私だったらとっくにへばってるなぁ…と思いつつ私はアイスを頬張る。
その時、海の底から響く様な地鳴りがした。
…うん。まじで休ませてくれよ。
海で地鳴りと言ったら、まあ
「ギャオォォォォォン」
クラーケンですよねぇ。知ってた知ってた。
大きなイカの怪物。クラーケン。
その逆鱗に触れれば島一つ沈むと伝わる怪物だが。
「相手が悪かったな!クラーケン!」
杖を構えるマティアとランプルを横目に、私は指をパチン、と鳴らした。
ドヒュン…
私の魔力に貫かれたクラーケンは海にひれ伏した。
「さっすが養母様」
「ランプルもこれくらいできる様になってもらわなくちゃね」
「え、無理無理」
私の目標提示に青ざめた顔で拒否されてしまった。
…まあ私もの魔力に敵うものはいないからな!はっはっは!
ムフー、と言う顔で胸を張っていると、
「さすが俺のお嫁さん」
クリスがニヤニヤした顔で、私を褒めてくれた。
「マティアとランプルはフォトスと一緒に遊んでやってくれ。あいつ意外と寂しがりだから」
「「はーい」」
…なめらかに人払いしてるよ!!この人!!!
なんと言う手腕だ!!とか色々なことを考えていると、
「ちなみにその服は、誘っているつもりではないんだよね?」
「んなっ!?」
確かにこの服は胸元に窓がある。
…ちょっとセクシーかも知れないけど、違うから!!!
頭の中でぐるぐると、この後の展開どうなるんや!、とか、ええええなんて言うべきだったんだ、とか考えてあわあわしていると、
「そんなに慌てるってことは、肯定と受け取ってもいいのかな?」
と顎を持ち上げながら言われた。いわゆる顎クイというやつだろうか。
…こんの悪い男め!!!
「否定と受け取っていただけると」
「おや残念だ」
私が否定すると、クリスは残念そうな顔をした。
「そんな顔で言われても説得力無いけどね」
「っ〜!」
恥ずかしくて何も言えない私を横目に、クリスはマティア達の方へ行ってしまった。
後ろからトントン、と肩を叩かれ振り向くと、
めっちゃ生暖かい目でニヤニヤしたランプルがいた。
「養母様も少女ですねぇ〜」
とだけ言って、足早に逃げられてしまった。
その怒りと羞恥心をクラーケンの解体にぶつけながら、
楽しい休日は終わった。




