あの方
みんなの顔が一気に固まり、あたりを見渡し始める。
...うん。みんな慌ててるね。
そりゃ慌てないわけないよなー、と思いつつ、私はリティスのお茶を鑑定にかける。
...闇の粉末だね。それもとても濃度が高い。
おそらく闇のものたちが、リティスを闇にもう一度引き込もうと思ったんだろうね。
...まったく、飽きないもんだね。
ある程度犯人には目星がついている。
過去に私を暗殺しようとしたメイド、ウスタの同期であり親友だった、
「リエイ、あなたなのでしょう?」
リエイはそういうと今まで見せていたメイドの顔とは程遠い、闇深い笑みを浮かべた。
「残念だわ!せっかく元の場所に返してあげようと思ったのに!」
元の場所は光の国だわ。
「まあでも」
そういうとリエイは胸元から闇のペンダントを出す。
「『あの方』がこれから来てくださるし、どうせ未来は変わらないわよ!」
...『あの方』?
私は頭をよぎる嫌な予感を振り切って、リエイに問う。
「リエイ、あなたの言うあの方とは、暗黒王のことではないのかしら?」
私がそういうと、リエイはにやりと笑い、
「そうだったらいいわね」
とだけ残して、闇の靄となった。
リエイが置いていった闇のペンダントを見て、私にしては珍しく、すぐに異変に気付いた。
「「盾!!!」」
そう唱えた瞬間、闇のペンダントに亀裂が入る。
ピシッ...
その小さな音の後に私たちの視界は、闇とその爆風によって遮られた。
...シールド維持の魔力消費量エグ過ぎでしょ!!!!魔力があっという間に消えてくんだけど!?!?
シールドと爆風がぶつかり合いバリバリと轟音を響かせている。
...マジヤバイって!!!さすがにこの部屋なくなるって!!!
シールドは闇のペンダントを囲うようにしたシールドと、私たちを守るように張られたシールドがある。
隣で補助をしてくれているクリスも辛そうだ。
...と、とりあえず増援呼ぼう!!!
「フォレスト!スリエス!ウェルア!」
それぞれ、グラス家、イリオス家、クマーラ家から一人ずつ増援を呼んだ。
...あ、やっぱ人いるだけで少し楽になるね。
少し魔力消費量が減ったのを喜びながら、私は別の術式を編み上げる。
「光の裂け目!」
ゴォォォォォ...
何とか落ち着き、私は闇のペンダントを破壊する。
「月光」
そう唱えれば、あたりには平穏が戻っていた。




