22-5 街を護る良いヤクザ⑤
仙熊の説明は続く。
「ただ、マフィアに対する市民の印象はすこぶる悪い。だからイメチェンをするつもりだ。その第一歩として、これまでのマフィアと一線を画すものとしてヤクザと称することにした。それで組織にも新しい名前を付けたいのだが……ボスであるお前らとしては何か良い案はあるか?」
又四郎、ノリノリで手を挙げる。
「はい、『黒の騎士団』ってのはどう?」
「ダッサ……。センス中学生かよ」
「中学生だよ! いいじゃん、黒の騎士団。隊員は皆、お揃いの黒の制服を着てさ。格好良いだろ?」
又四郎、次兄の批判も何のその。片や、長兄の方は肯定してくれる。
「お前、本当、黒が好きだよなー。その衣装を統一させるって案は良いぞ」
「でしょう?」
「でも、黒は駄目だ」
「何で!?」
「暗いんだよ。黒は死を連想させたり、不安を駆り立たせたりする。それに視認性も悪い。犯罪の抑止力のためにも目立たないと」
ならばと、次は神太郎の番。
「じゃあ、『赤シャツ隊』なんてのはどう?」
「お前はガリバルディか!? (※赤シャツ隊 十九世紀、イタリア統一に貢献した軍事家ジュゼッペ・ガリバルディが率いた義勇軍)」
「赤なら派手だし、安く揃えられそうだし、返り血を浴びても目立たないし。名前も分かり易いだろう?」
「そうだなー」
仙熊も悪くはないと思った。されど、又四郎は大反対。
「待ってよ。それはないよ、赤シャツ隊って……。格好悪いって。せめて名前を変えてよ。レッド・ガーディアンズとかさ!」
「ダッサ……」
相変わらずのセンスに、神太郎はガッカリだった。
それが癇に障った末弟。次兄に対抗すべく、赤の反対として青を思い浮かべる。
青……。
青……。
青……。
すると、その対抗心のお陰かふと最高に閃いた。
「あ、そうだ。なら、浅葱色は?」
「お? 新撰組か? センスが高校生にまで上がったな」
幕末に活躍した新撰組は薄い藍である浅葱色の羽織を着ていることで有名だった。
「京の街を護る町人・農民出身の浪人たち。正にヤクザに相応しい名前だろう?」
「浅葱色なら爽やかで良いな。赤の方は血の色で物騒とも言えるし」
これには仙熊も好感触。
ただ、今度は神太郎が気に食わなかった。
「俺、新撰組嫌いなんだよねー」
「神太郎は薩長派?」
「いや、薩長の方がもっと嫌い。長州は攘夷、攘夷と言っていたのに、気づけば真逆の開国を選ぶ。薩摩に至っては裏切り者だ。江戸幕府ももう消費期限切れで終わり時だったけど、コイツらは全く信用ならん連中だ。新撰組も押し借り、粛清……。武士とは言えない野良犬ばかり。ミーハー共に人気があるだけだろう。何より敗北者だ。敗北者の名前なんか縁起が悪いだろう」
言いたい放題である。但し、又四郎にしては良い案だとも思っていた。
「ただまぁ、たまには弟を立ててやってもいいかな。『組』って付いているとヤクザっぽいし、本来の新撰組もヤクザみたいなものだし」
結局、神太郎も承諾。
「よし、決まりだ。だけどお前ら、元が元だからな。組員たちが真面目に働くようちゃんと指導しろよ」
「まかせてよ仙兄。野良犬は叩いて躾けるに限る。なに、マフィアなんてやっている奴は死んでも惜しまれない命だからな」
神太郎は胸元で手のひらに拳を打ちつけて言った。
従わなければ暴力。暴力こそが全てを解決するのだ。そういうところは実にヤクザらしい。
こうして北区のマフィアはヤクザ『新撰組』として生まれ変わり、キダイ王国に新たな風を吹かせていくことになるのであった。
―街を護る良いヤクザ・完―
いつもお読み頂きありがとうございます。
申し訳ございませんが書き溜めのために一旦完結扱いにします。また、その執筆の参考のためによろしければブックマーク、☆、感想などの評価を頂ければ幸いです。
数週間のうちに再開したいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。




