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ブラッディ・モスキート  作者: Mr.ゴエモン
作戦開始2
98/205

前夜2

 華やかな女子会から一転して、修羅場となりかけた時と同時刻、ところ代わり、


 「フン!フン!フン!」

 「76・77・78…」

 「おいっちにさんしー…」


 この男達、大石・近松・剣持の3人はというと、ここでもトレーニングをして、汗水垂らしていたのだった。 


 ここは署内の留置場に併設されている運動場。運動場といっても署内の一角に設けられ、四方を壁で囲まれており、ガラスや鉄格子張りの天上でそれ越しに見える大空と、室内と何ら変わりない代物だ。勾留中の被疑者の運動不足解消のため、運動時間が設けられている。この時間は比較的自由に行動でき、本数に制限はあるものの、喫煙も可能(本人持ちのものに限る)。

 本来、勾留中の被疑者の運動用の場所だが、今は剣持・大石・近松の3人がトレーニングに利用している。

 因みに、警察官は犯人逮捕のため、逮捕術を学ぶことが義務付けられている。その為、警察官は柔道や剣道が必修科目となっており、本業の職務とは別に、署内の道場等で稽古を行う。当然、今彼らが居る警察署内にも、道場はある。学校にある体育館ほどは広くはないが、稽古を行う分には十分な広さがある。

 となれば、彼等のトレーニングもそこですればいいじゃないか!と、思うかもしれない。当然ながら、留置場の運動場よりも広くてトレーニングしやすい。

 しかし、署内の道場は使えない。何故なら、多くの人が地下から移ってきた。同時に食糧等も持って。その人達が今夜を過ごすため、道場は丸々使われた。明日に備えて、もう休んでいる人もいる。とてもじゃないが、そこでトレーニング等行えない。なので、3人は留置場の運動場を利用しているのだ。


 「ふ~、トレーニングはこれくらいにしておかないか⁉」

 「そうですね、疲れすぎて明日動けなかったら意味ありませんしね!」

 「あぁ、明日早いから俺等も休むか!」


 トレーニングを切り上げて、引き上げる3人。寝床に戻る途中、必然的に留置場を通過する。

 

 「しかし、留置場って所は、見てても余り気分のいいものじゃないな…」

 「えぇ、暗いと何だか不気味に感じますよ。」

 「一生入りたくないな…」

 「全くだ…おや?コレは…」


 等と話していると、剣持が留置場係の警察官が使用している机よ上にあるものに気が付いた。勾留中の被疑者の様子を逐一観察出来る位置にある机。そこには、薄い冊子が置いてあった。


 「「おしながき」って、書いてあるな。出前のメニューか⁉」

 「ここの警官達が出前頼む時用か⁉」

 「いやおそらく、自弁(じべん)用じゃないか?前にテレビで見たことがあります。」

 「自弁??」

 「それって、奈良にある野球の上手い高校か、大石?」

 「それは智○だ…」


 大石と近松が漫才の様なやり取りを見せた。


 「自弁だ、じ・べ・ん!勾留中の被疑者が頼む出前の事だ!」

 「留置場で出前なんか頼めるのか⁉」

 「ああ、署によってメニューは異なるけど、被疑者本人の自腹で店屋物とかを注文出来るシステムになってるんだ。ラーメンやカレーとかな…」

 「ほ~」


 剣持が冊子を眺めながら呟いた。


 「あっ!」

 「どうしました?」

 「いや何、メニューの中にカツ丼があるんだ。カツ丼も頼めるんだな…」

 「カツ丼…刑事ドラマを思い出すな…」


 と、かつて走達が話していたのと同じ様な事を話し出す3人。似たりよったりの内容なので、その下りは省略…


 「実は俺、トンカツが好物なんだ!そういや試合前にアイツとゲン担ぎてよく食ったな…」

 「アイツって…袴崎さんですか!?」

 「…あぁ…」

 「あっ、すみません、嫌なことを思い出させて…」

 「気にするな本当の事だ…」

 「剣持さん…」

 

 暫し沈黙か続いた。


 「なぁお前ら…」

 「はい…」

 「全てが終わったら、トンカツ食いに行こうぜ!俺、美味い店知ってっから!!」

 「剣持さん…えぇ勿論です!いいよな修一!」

 「ああ!ゴチになります!」

 「何言ってんだ、割り勘だよ、割り勘!!」

 「えー!!誘っといて…」

 「奢れるほど俺は裕福じゃない!学生だぞ俺は!」

 「僕等も学生ですけど…」

 「ん!それもそうか!」

 「「ハハハハハ!!」」


 揃って笑う3人。


 「その為にも…生き抜こうぜ!生きて脱出するんだ、いいな!」

 「ハイ!」

 「うっす!」


 2人の返事を聞き、剣持は手に持っていた出前の冊子を元の場所に戻し、3人はその場を後にした。


自弁は平日の昼食時限定ですが、土日はジュースやお菓子くらいなら購入可(場所によって異なります)。

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