前夜3
「包帯と湿布それから…」
ここは警察署内の医務室。御子柴が装備品の整理をしている。
そこへ、
「チエちゃん!薬箱を整理してんのか?」
「あら高倉さん!えぇ、イザというときに備えてね!」
「そうか、医療関係者はチエちゃん1人しかいないからな…もしもの時は、頼りにしてるよ!」
「えぇ、もっとも、出来ることなら1日中暇である事を祈ってるよ、祭のときみたいに…」
「だな…」
地域の祭で、怪我人が出た時等に備え、医療関係者が指定の場所でスタンバイしている。かくいう御子柴も、地域の祭の時、スタッフとして待機していた経験がある。最も、これまで出番があったことはなく、大概手持ち無沙汰を感じていたが…
「しかし今回はそんなふうにも言ってられんだろな…」
「えぇ、もしもの時はベストを尽くすは!」
御子柴は力強く宣言した。
「頼りにしてるよチエちゃん!」
「えぇ、ところで三船さんは?」
「あぁ、ヤツなら例の戦車をいじっとるよ!」
「まだやってたの…本当好きね…」
「全くだが…もしかしたら、今回は大いに役に立つかもしれないぞ!あの戦車、結構強力だしな!」
「そうね、映画とかでも意外な人物が予想外の強さを見せるパターンもあるからね!」
「あぁ、まあ兎も角、どうなるか分からんが、生きて帰って、また飲みに行こう、3人で!」
「えぇ、そしていつもみたいに、酔いつぶれた2人を介抱するのご、お決まりのパターンだからね!!」
「ハハハ…何時も迷惑かけてたな…」
「でも、大変だったけど、今はとても懐かしく感じるわよ…」
「チエちゃん…」
「帰りましょうね、平凡だけど平和な日常に!」
「ああ‼」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
同時刻、所代わりここは見張り場。最後まで気は抜けないと、見張りは続けられている。
因みに今は、警察署に身を寄せていたメンバーの中で、辰馬に次ぐリーダー格の者達数名が見張りをしている。明日の備えて、多くのメンバーに体力を温存させるため休ませているのだ。
最初は辰馬が
「俺が夜通し番をする、皆は明日に備えて寝といてくれ!」
と、言い出した。が、
「お前1人にさせられるか!」
「1人で背負い込むな!」
「寝不足で、大将のアンタに何かあったらどうするか⁉」
と、皆が反対した。
というわけで、数名が交代交代で最後の見守りをする事となったのだ。
その中に、1人だけ、辰馬達のグループとは違う人物がいた。
「……」
双眼鏡を手に、無言で外を真剣に眺めている女性。
齋木紫苑である。
夜間の蚊様子を見たいと、見張りに加わりたいと申し出たのだ。
大阪の夜空を飛び交う蚊を観察している。時折、片手で側のメモ紙にメモをとっている。
そんな彼女の横で!
「おい、交代の時間だぞ!」
「ああ、もうそんな時間か…」
「それじゃあ、後は頼んだわよ!」
「おう、お疲れ!」
時間通り、見張りを交代に入っていた。
「ねぇ、あの人はどうするの?」
「あの人…あぁ、地下から来たあのネーちゃんか…そうだな一応、声かけとくか…」
そう言って、休憩に入る内の1人が、紫苑に話しかける。が、観察に全神経を集中させているのか、彼女の耳には聞こえなかった。
「聞こえてねーみたいだな…」
「どんだけ集中してんのよ…」
「はぁ…しゃあないから、ほっとこうぜ。トイレ休憩位、自分で勝手にするだろしな!」
「だな…」
そう言って彼等は交代し、休憩に入った。
それと同事に、
「!!」
紫苑は何かに反応した。そして、双眼鏡のツマミを回しレンズを動かして、倍率を上げた。
倍率の上がった双眼鏡であるものを食い入るように見た。そして、
「あれは…」
と、彼女は小声で呟いた。
しかし、余りにも小さな声だった為、近くにいた者達に聞こえる事はなかったのであった。




