児童室
護送車の見学を終えた一同は、地下から上がってきた。
そして、
「そんじゃ、明日まで各自ゆっくりしてくれ。部屋は割り当てたとおりだ!」
桜島がその場で解散させようとした。そこへ、
「お兄ちゃ〜ん‼」
女の子が辰馬を呼びながら駆け足でやって来た。
「巳兎どうしたんだ、そんなに慌てて⁉」
「みう…あぁ、確か桜島さんの…」
「ああ、俺の妹だ!」
桜島辰馬の妹、桜島巳兎だった。
地下にいたメンバーで、彼女と面識があるのは、走・正一・剣持の3人くらいだ。
「おう巳兎ちゃん、しばらくだな!」
「あっ、どうもお久し振りです!」
と、巳兎は走達に気付くと丁寧に挨拶をした。
そして直ぐ辰馬の方を向き直し、
「それは兎も角、お兄ちゃん聞いてよ〜!」
と、兄辰馬に甘えだした。親がいないので、家事全般を受け持っており、それもあってから、なかなかのしっかり者の彼女だが、兄の前になると、人が変わったかと思うくらい、急に甘えたりベタベタしだすのだった。
本人は兄妹何だからこれぐらい普通だの、兄妹愛だのと言っているが、他からはブラコンと思われている始末である。
因みに兄辰馬はというと、そこまでではないが、たった一人の肉親である巳兎を大切に思っており、かわいがっている。
「少し落ち着けって、で何かあったのか?」
「それが、児童室の子達がケンカしはじめたの‼」
「ケンカだと⁉」
「そうなの、私止めようとはしたんだけど、言うこと聞いてくれなくて、手に負えないの…」
「そうか分かった、俺が行こう!」
「うんお願いねお兄ちゃん!」
そんな兄妹の会話を聞いている走達。
「児童室?」
「警察署に?」
警察署に児童室という言葉に不思議感を抱いていた。それを察したかのように、鹿川が答えた。
「児童室ってのは、俺等が勝手にそう呼んでいるだけだ。元々は捜査会議が行われてた部屋だ。」
「そうなんですか⁉」
「ああ、中の物を他所に動かしたりしてな!」
「そもそも、ここに子供が居たんですね。」
「そりゃそうだ、お前らのいた地下にもいるだろ?」
「えぇ、親子で住んで避難していた人もいましたし。」
「ここも似てようなもんだ。俺等の仲間の兄弟姉妹に、保護した子供もいる。」
「保護した子供⁉」
「そうだ、食糧とかを調達のため近くに出向いた際、見つけた子供達をな!」
「ここの人達って、そんなこともしてたんだ!」
「当たり前だ!」
巳兎と話してた辰馬が会話に加わった。
「蚊に怯えているのは同じだ。ましてや力の弱い子供だ。ほっといたら蚊の餌食か、飢えて死んじまうだろが!それなのに、放っておける分けないだろ!俺等はな、困ってる子供を見殺しにするような人間なんかじゃないぜ!」
と、辰馬は自信たっぷりた宣言した。
その姿に走達は、ますます桜島辰馬という男の、カリスマ性を確認した。
「よし、行くぞ!」
辰馬は児童室に向かって、走り出した。
妹巳兎と鹿川も後に続いた。
更にその後ろから、走達も付いてきた。それに気付いた辰馬は、
「ン⁉あんた達も来るきか?」
「えっ、あっいや、なんとな~く…」
「ついつられて…」
歯切れ悪く答える走達だったが、それは建前であって、実際のところは辰馬の勇姿を見てみていというのが本心だ。
なんてことやっている内に、児童室(と、辰馬等が呼んでいるが、本当は捜査会議室)の前まで来た。
「ン!おい巳兎、ホントにケンカしてるのか?」
「えっ、ホントだよ!」
「それにしちゃ、静かだぞ!?」
「あっ、ホントだ…」
児童室からは、ケンカご行われてるような物音は一切してこない。その代わり、子供達の和気あいあいとした声が聞こえてくる。
少し不思議がりながら戸を開け中を覗くと、
「みんな〜喧嘩はダメ!仲良くしようね!!」
「「は~い!!」」
と、元気かつ明るい少女が子供達の中心にいた。
そして子供達も、今の大阪の現状がウソであるかのように、笑顔を見せていれた。