お姉さん
「それじゃあみんな、そろそろお片付けしようね!」
「えー、もっと遊びたい‼」
不満を口にする子供達。それに対して少女は、笑顔を崩さずに対応した。
「だーめ、明日は朝早いし、5時までの約束でしょ⁉約束は守らないとダメだよ!」
「はーい!」
少々不満はあるようだが、子供達は遊んだ遊び道具を片付け始めた。
それを笑みを浮かべながら見る少女。
その姿はさしずめ、教育テレビの歌のお姉さんといった感じだった。
が、辰馬に気付くと、入口の方へとやって来た。
「あっ、辰馬さーん!!」
「よっメグ、子供達が喧嘩してるって巳兎から聞いたんで来たんだが…お前が仲裁してくれたのか?」
「うん、そうだよ!騒がしいから来てみたら、喧嘩してたんで仲直りさせてたの!」
「そうか、そりゃご苦労さん!」
「このくらいノープロだよ、辰馬さん!」
見るからに年上の辰馬に対して、随分と砕けた話し方をする少女であった。
それを見ていた走達は、鹿川に聞いた。
「鹿川さん、あの子は?」
「あぁ、あの子はメグこと、神門 恵美。俺等の仲間の1人の妹だ。」
「妹!」
「ああ!」
簡単に説明すると、例の事件のあの日、辰馬を始め、嵐子や鹿川・宇島といったメンバーで町に出る予定だったが、辰馬の妹の巳兎等、メンバーの弟・妹等が一緒に行きたいと言い出した。アレコレと考えた末、一緒に行くこととなった。
そして、例の事件が起きた…
と、いった感じだ。
「あん時はしゃーないな、って感じるだったが今は良かったと思ってるよ。でなきゃ、この大阪で生き別れになってたからな。一緒にいたおかげで、守ってやれてるからな!」
「はぁ、なるほど…」
等と話していると、子供達の片づけも終わっていた。
「みんな良くできました!えらかったね!それじゃあみんな、お部屋に戻りましょう!!」
「は~い!」
元気よく返事をし、部屋へと帰っていく子供達。それを見届けたあと、
「辰馬さーん、それじゃワタシもこのへんで!」
「ああ、明日に備えてゆっくり休んどいてくれ!」
「オッケー!」
明るく元気にそう言って彼女は、児童室を後にした。
そんな彼女を姿を辰馬は、真剣な面持ちで見守っていた。
「随分と元気な娘ですね、辰馬さん!」
「あぁ…」
走が話しかけるが、辰馬は何処か暗い感じだ。
「辰馬さん?」
「⁉ああ、悪い悪い、ちと考え込んじまってな…」
「辰馬さん、あの娘がどうしてんてすか?」
走にそう聞かれ、辰馬は少し考え込んだ。
「なぁ山口。いや、他の皆もだ。アイツの…メグのことどう思う?」
「えっ、あの娘のことを…」
「どうって、元気な娘だと思いますよ!」
「そうそう、明るいし!」
各自の意見を聞く辰馬。
「そうか、そう思うか…」
と、ため息交じりに言う。鹿川達も何処か浮かない顔だ。
「メグのやつ、無理して明るく振る舞っているが、本当はそんな心境でないはずなんだよ…」
「どういうことですか?」
「彼女は俺のダチの妹何だが…そのダチはもう、いないんだよ、この世に…」
「‼いない、この世に…」
「あっ!まさかさっき食堂で言ってた、辰馬さんが助けられなかった人の…」
「そうだ、命を落とした奴らの1人だ‼」
辰馬は震えるような声で言った。見ると両手は力一杯握られていた。
「俺がアイツを助けられなかったせいで、あの娘は…」
奇しくもその親友と恵美は、辰馬・巳兎と同じく早くに親を亡くしており、唯一の肉親だった。しかし、その肉親を恵美は、蚊に奪われたのだった…
「そんな辰馬さんなのせいじゃ…」
「あぁ…メグもそう言ってくれたよ…」
「えっ…」
この警察署に逃げ込み、一先ず落ち着いた頃、辰馬は包み隠さず、恵美に話したのだ。
蚊に襲われた彼女の兄を自分は、助けることができず、見殺しにしてしまったことを…
そして精一杯謝った。何もできなかった無力な自分の事を。嘘偽りなく、全てを話した。
それに対して恵美は、一切辰馬を攻めなかった。
「あの状況じゃ仕方がないから…」と言って逆に辰馬を元気付けてくれた。
その言葉で、少し救われた気になった辰馬。
しかしその夜、彼女が1人、泣いているのを目撃した。泣く彼女を見て辰馬は、身が張り裂けそうな思いになった…
翌朝、彼女は何事もなかったかのように笑顔で皆と共にしていた。が、目元に残る涙の跡が、昨夜の事を静かに物語っていたのだった…




