倉庫
鹿川が村雲に感服した。
その光景を見ながら、
「全く、こんな事にマジになって仕方ないやつ…」
「男って生き物は、何歳になっても子供ってことですかね…」
と、女性陣は愚痴っている。
「でも三船さん、よくあんな物騒な物、何処から出したのかしら?」
カエデが疑問を口にした。それに答えるように、
「三船さんのお店の奥の倉庫からですよ!」
有希子が言った。
「倉庫!」
「ええ、あの辺りに三船さんのお店のがあって、そこの特殊な倉庫に保管してあったんです。」
「特殊な倉庫⁉」
「ハイ、話すと少し長くなりますが…」
有希子が説明に入った。
ここに来る途中、蚊に遭遇し、散り散りに近くの店に身を隠した。その時の事である。三船・新堂姉妹・大石・近松・ブライアン達が隠れた場所が、偶然三船の経営する電気店の近くだった。その時、三船は釘戦車の存在を思い出したのだ。
時間はその時に遡る!
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「三船さん、本当に強力な武器になるものがあるんですか?」
「そうだ!この奥にある!」
一同は、店の奥にやって来た。
そこには鉄の扉のある倉庫だった。
「この中にあるぞ!」
「それじゃあ早く開けてください!」
「いやそれが、簡単には開けられんのだ…」
「簡単に開けられないってどういうことです?」
「それはな…」
そう言うと三船は2本の鍵を出した。
「コレが倉庫の鍵だ!」
「2本ありますけど、1本はスペアキーですか?」
「いやスペアではない。2本共、本物の鍵なのだよ!」
「2本共…って、どういうことですか、ミスター三船。」
ブライアンが当然の疑問を聞いて来た。
「見てくれ、扉の横の両側の壁を!」
「鍵穴がありますね!」
「コッチにもあるぞ!」
そのとおり、両側の壁には同じ鍵穴があった。
「何を隠そう、鍵は同時に穴に刺して回さないとならないのだ!」
「同時に!」
「そう、2本それぞれを同時に鍵穴に刺し回さないと、倉庫の扉は開かない仕組みになっているのだ!」
力のこもった声で力説する三船だった。
「何でそんな仕組みに…」
「危ない兵器の起動スイッチみたいだな…」
と呆れ声の大石と近松。
三船がこのような倉庫を作ったのは、盗まれて悪用されるのを防ぐ為と銘打ってはいるが、実際のところは、半分は面白がってである。
それはさて置き、鍵を刺して回す役目を三船は、新堂姉妹に頼んだ。
「私達がですか⁉」
「そうだ、鍵は同時に刺して回さないといかん。タイミングがずれると失敗となり、次の日まで開けなくなるのだ!」
「ネットのログイン画面かよ…」
「まぁそんなわけでだ、タイミングが重要なんだ!となれば、双子の君達が適任なんだ!共に地下で生活し見てきたが、君等はとても息がピッタリだ!この鍵を開けるのにうってつけだ!!」
「適任って…」
そんなこんなで、少々強引ではあるが、鍵を刺す役目を引受けた2人。責任重大だが、失敗しても責めないと、その場の全員が約束した上での事だ。
「それじゃあ、いくわよ登紀子!」
「オッケー有希子!」
「「せーの!!」」
ガチャ!
特有の金属音を立てて扉は開いた。成功だ。ここだけの話、鍵はレイコンマ○秒の差と言える位のレベルで、同時に回された。
その扉の向こうには、例の釘戦車が鎮座していた。
「コレが言っていた強力な武器ですか!」
「さよう!」
その場で簡単には説明が行われた。
「はぁ…よくもまあ、こんなの作れましたね…」
「なぁに、元はコッペパンマン号だ!」
「コッペパンマン号⁉」
「ホレ遊園地にあるじゃろ、子供用の百円入れると動きだす、車や動物の型をした乗り物!」
「あぁ、あれですか…」
「そう、それのコッペパンマン号の廃品になったのを、知り合いのツテで手に入れてな、それをベースに作ったんだ!」
「あれをですか…」
「あんなのが、どうやったらベースになるのよ…」
と、少し困惑する新堂姉妹だった。
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時は戻り、
「と、いう事があったんです。」
「なるほどね…」
本当に長めの話になった。話が終わり、
「それにしても、その倉庫入れる際はどうするんだい?」
「あぁ、何でも入れるのは簡単だそうです。専用の入れ口から入れられるんです。入れるだけで、そこから出すことは出来ないそうです!」
「銀行の夜間金庫みたいだな…」
嵐子の質問に、有希子が答えた。
「ホント…それにしても、今回はあなた達がいたから良かったけど、それ以外で、中の物が必要になったらどうするつもりなのかしらあの人…」
「さぁ…」
そんな事を話しながら、村雲に指摘された、釘戦車の不備の部分の改良をアレコレと考えている三船を若干冷ややかな目で見ながら、話す女性陣だった。
100円入れて動かす乗り物、正式には電動力応用機械器具屋内用電動式電気乗物と呼ぶらしいです。
また、夜間金庫は、近年多くの銀行で廃止されてるそうです。