作戦開始前
作戦会議後、各自思い思いに過ごした。
腹ごしらえする者は、走達。
ガツガツ食べる走と静かに食べる正一・カエデ
「走!もうちょっとゆっくり食べなさいよ!誰も取ったりしないんだから…」
「それ位分かってる!しかしだ、生き死にがかかってると思うと、ついもの食う口にも力が入っちまうんだ!それに、皆の命がかかってるんだ、エネルギーを蓄えとかないと!」
「気持ちは分かるが走、食べ過ぎるといざって時に動けないぞ!」
カエデと正一がたしなめる。
「それもそうか…腹八分目って言うし、これ位しとくか…」
「何処が八分目よ…」
「俺にとっちゃ八分目だ!残りは大阪を脱出してからだ!」
「そうだな。生きて帰ったら、皆で美味いもの食べに行こうな!」
「いいわね!あたしケーキバイキングに行きたいな!」
「俺は…寿司だな!」
「目的地は兵庫だろ。だったら神戸の南京町の、中華街で中華の食べ歩きもいいな!」
「それもいいな!って、大阪がこの有り様な時に、やってるかどうかわかんねーけど…」
「確かに…」
「まぁまぁ、何処に行くかは脱出した後でゆっくり決めましょう。」
「そうだな!その為にも、生きて帰るぞ!」
「おう!って、このくだり、何度目だよ…」
「確かに、何かデジャブみたいだな…」
「何個目でもいいでしょ!こういうモチベーションを維持するのも大事よ!」
「そりゃそうだ!何度だって言うぞ!生きて帰っぞ!!」
走が高らかに宣言した。が、その直後、
「でも走、アンタお金大丈夫なの⁉」
「ウッ!」
走は自分の財布事情を思い出した。ただでさえ少ない中身を、金物屋で置いて来てしまったので、今の走の財布はシャレにならないほど軽かった。
「カエデ…急に現実に戻すなよ…」
「ハハハハハ!!」
ところ代わり、無事大阪から脱出出来る事を祈る者、新堂姉妹。
姉有希子が両手を合わせて祈りを込めている。
「……」
「有希子、まだ祈ってるの?」
「登紀子!ええ、成功しますようにって、どれだけ祈っても祈り足りない気分よ…」
「確かにね…」
そう言うと登紀子はポケットからお守りを取り出した。
有希子も同じ物を持っている。2人が小学生の時、近所の神社に初詣に行った際、お揃いで買ってものだ。表面に「御守」と書かれている。
買う際、「交通安全」や「回復祈願」・「家内安全」等、種類は色々あった。少し悩んだ末、どんな事にも効きそうと2人の意見が一致し、コレを選んだのだ。両親も流石双子と言っていたとか。
「これ買った時はまさか、こんなシチュエーションで使う事になるなんて思っても見なかったわ…」
「そうね。でも、今だったら、「交通安全」とかの方が良かったかな、って気になるわ…」
「あぁ、高速道路使って逃げるからね…有希子アンタ意外とのんきね!」
「そうかな?…」
「そうよ!」
「う~んでも登紀子、あなたの場合は…」
「??」
「今昔を問わず、「学業成就」にしといた方が良かったわよ。」
「なっ!ちょっと有希子!今学校の成績は関係ないでしょ!!」
「ふふふ!」
「そう言う有希子こそ、「恋愛成就」の方が良かったんじゃないの?」
「!!恋愛って…何言ってるのよ登紀子!」
「だって有希子、 顔の割に今だ彼氏いない歴更新中じゃない!」
有希子は生まれてこの方彼氏ができたことは無い。登紀子は、長続きこそしなかったが、何人か出来た経験があるのだ。
「私は出ないんじゃないの!そういう気が無いだけよ!学生の今は、学業優先なの!」
「ふーん、どうだか…」
「もー!こんな時にからかわないでよ登紀子!」
「先に学業成就だのなんだの言って来たのは、有希子でしょう!」
「それは…」
言葉を詰まらせる有希子。
「まあ兎に角、2人一緒に、何方も欠ける事なく家に帰りましょう。」
「登紀子…ええ、勿論よ。」
「それから…あたしの友達のツテで、いい男紹介してあげるからね!」
「だから、それはいいの!」
そんな姉妹の光景を見て御子柴は、
「あらあら、相変わらず仲がいいわね、あの娘達!!」
と、ある限りの医療道具の確認をしながら、顔を微笑ませた。
そして、さらなるウォーミングアップをする者並びに、武器の手入れをする者等、剣持・大石・近松。
「フンフン!」
「71.72.73…」
「……」
本場に備えて、体力を温存しときたい所だが、彼等はじっとしてるのが性に合わないのか、大石と近松は控えめにだがトレーニングしている。剣持も、刀のメンテナンスを黙って黙々としているのだった。
そんなこんなで、時間は過ぎて行き、いよいよ大阪脱出作戦開始の時刻を迎えたのだった。