表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブラッディ・モスキート  作者: Mr.ゴエモン
犯人と追う者
68/205

動く影

 机の上の写真を眺めながら更に男は呟いた。


 「ここまで長かった…果てしない失敗の末、巨大な蚊を生み出すことに成功し、そして…決行した!」


 男の脳内で、例の事件の光景がビデオの様に、鮮明に再生された。

 

 老若男女問わず、次々と命が消えていく光景。

 それを見て、高らかに笑う自分自身!

 

 凄惨な光景だが、それこそが、男が待ち望んだ光景だった。しかし、それで満足では無い。


 「だが、まだだ!まだ復讐は終わってはいない。この大阪の地のアチラコチラに、しぶとく生き残り、ゴキブリの様にコソコソとしている連中は、沢山いる。」


 男は視線を複数台のパソコンのモニターに戻した。

 そこには監視用の蚊から送られて来た、映像が映し出されている。彼の言う通り、今も大阪の各地で蚊の脅威から命からがら逃れ、隠れている人達の姿がそこにあった。

 ただただ生き残るのに必死な者達…助けが来る事を信じて耐え忍ぶ者達…そして大阪からの脱出を目指す者達!

 命を諦めずに生きている目的様々だが、生き残りが大勢いる事は事実だった。

 男の目的は、それらの人間達を1人残らず全滅させる事にあった。


 「フン!まぁ、せいぜい頑張ることだな…」


 それだけ言うと男は作業に戻った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 時は再び戻り、難波の地下の隠れ家。

 紫苑の研究結果を聞き、一同はまだ、言葉を失ったままでいる。そんな中、走が口を開いた。


 「しかしあれだ…コレで蚊が人の手で生み出された存在である事はハッキリしたな!」

 「えぇ、そう言えばここに来た時、よっちゃんも同じ事を言ったわよね?」

 「えっ、あぁ、そうだったな…正直当たったからといって、喜ぶような事じゃ無いけど…」

 「いいえ、なかなか良い着眼点よ。よかったら私の研究の手伝いをしてくれないかしら?」

 「え!紫苑さんの?」

 「そうよ!私は生物学の研究畑に入り浸りで、他の事に疎い所があるの…だから、貴方みたいな人が手伝ってくれたら、私じゃ気づかない点に気付く可能性はあるからね!どうかしら⁉」

 「………」


 正一は言葉を詰まらせた。実を言うと、あの時のセリフは、その場の雰囲気と、半ば思い付きで発した言葉だった。それが的中してしまった。


 「(まさか本当になるなんて…少し前に見たSF映画に影響されて言っただけなのに…でも、そんな事言える空気じゃ無いよな…)」


 正一は心の中で、自分の言ったことを後悔していた。

 それから、適当に理由を付けて紫苑の誘いを断った。


 「そう…残念ね…でも、気が変わったら何時でも言ってね!」

 「えぇ、考えときます…」


 何とか話を切り上げた。そして紫苑は、話を変えた。


 「それは兎も角、三船さん。ノートパソコンのバッテリーが無くなりそうなので、充電させてもらいたんですけど…」

 「何だもう無くなったのか?君に提供しノートパソコン、バッテリーの持ち良いやつなのに…」

 「長時間、蚊の研究をしていると、すぐに無くなるんですよ。」

 「そういう事情じゃあ、しょうがないけど、データは大丈夫なんだろうね⁉」

 「えぇ勿論。」


 そう言うと紫苑はスカートのポケットからの何かを引っ張り出した。それは細いアクセサリーのチェーンだ。そしてその先に、指程の大きさの物が繋がっている。


 「何ですかそれは?」


 有希子が聞いた。


 「フラッシュメモリーよ!この中に、私がこれまで、ここで行った蚊の研究に関するデータが全て、入ってるのよ!」

 「へー、その中にね…」


 登紀子が少々興味ありげに見ている。


 「実はね、今皆に話したこと以外にも、気付いたりした事が入っているは!」

 「気付いた事⁉何です?」

 「今はまだ言えないは!私もまだ、確証が得られていない状態だから!」

 「何だ、もったいぶるんだな…」

 「時期が来たら言うわよ!約束する!」


 そう言うと、紫苑はフラッシュメモリーを持って研究室に戻って行った。

 それで一旦、その場は解散となった。それぞれ、自身のスペースに戻り休む事とした。

 そんな彼等を、近くの影から盗み見る様に除いていた者は、人が居なくなった後にその地点に現れ、研究室を見つめていた。

 その日の夜。


 「齋木さん、お風呂空きましたよ!」

 「ありがとう有希子ちゃん、すぐに行くは!」


 紫苑は入浴具を持って、研究室を後にした。地下では数日に一度、風呂に入れるのだ。廃材で作った大きめの風呂釜に湯を溜めて、かわりばんこに入るのだ。勿論、男女別に!これも三船の仕事だ。女性がそれなりにいるので、たいへん喜ばれた。

 研究室の主が居なくなった後に先程の影が忍び込んで来た。そして机の上のフラッシュメモリーを見つけると、素早く、隠し持っていた自身の端末に繫げ、データを移そうと試みた。しかし、


 「!!何だ、何1つとして、データが入ってないじゃないか!ダミーか!」


 そう呟いた途端、研究室内の灯りが光った。


 「‼」

 「お目当ての物はあったかしら?、ドロボウさん!」


 そこには、風呂に行ったはずの紫苑が立っていた。近くには走等もいる。


 「私の事に、気づいていたんですか⁉()()()()!」

 「ええ!」

 

 そんな会話を交わす2人を他所に、走が口を開いた。

  

 「オイオイ、あっ、アンタは!」


 侵入者の正体。それは、日本好きな外国人だと多くの人に印象付けていた外国人、ブライアン・カーターだった。


 やっと、予定通り、ブライアンの正体の手前のところまでこれました…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ