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ブラッディ・モスキート  作者: Mr.ゴエモン
新たなる出会い
62/205

警察署4

 辰馬の力説を聞き、走達は息を呑んだ。

 が、その直後、


 「キャー!」


 悲鳴がした。


 「お兄ちゃーん!!」


 女の子の声が聞こえてきた。声の主は、直前の悲鳴と同じ様だ。

 それを聞いた辰馬は、


 「今のは、巳兎みうの声!!」


 そう言うと辰馬は、壁のスコップを掴み血相を変え、部屋から出て行った。後ろにいた2人も後に続いた。


 「辰馬さん!行っちゃた…」

 「ランさん、みうって誰ですか?」

 「悪いが説明は後だ!」


 それだけ言って彼女も出て行った。

 取り残された3人は、


 「皆行っちゃったな…どうする?」

 「どうって…」

 「蚊が侵入したのかもしれん。俺も行く!」


 剣持も刀を強く握りながら、辰馬達の後を追った。それに習い、走と正一も続いた。

 向かった先は、給湯室だった。既に辰馬達は、到着している。中から辰馬の声が聞こえてきた。


 「巳兎!どうしたんだ?大丈夫か?」

 「おっ、お兄ちゃん…」


 中学生位の女の子が、辰馬の胸元ににしがみついていた。

 その様子に、ただ事じゃない雰囲気が漂った。


 「あっ…アレ!」


 少女が給湯室の壁を指差す。皆の視線がそこに集まった。

 そして、そこには…


 「ご、ご、ゴキブリ〜!」


 ゴキブリが壁に止まっていた。

 その瞬間、辰馬以外のその場にいた全員が脱力した。


 「何かと思えば、ゴキブリかよ!」

 「慌てて損した…」

 「人騒がせな…」


 皆が口々に文句を言う。が辰馬はというと


 「よしよし、もう大丈夫だ。兄ちゃんに任せとけ!」


 文句の一つも言わず、受け入れていた。そして、近くにあったスリッパを片手に取ると、


 「おりゃ!」


 と、ゴキブリめがけ振り下ろした。一発でゴキブリを仕留めた。その後、近くのティッシュで潰れたゴキブリを包んでゴミ入れに捨てた。


 「これでよし。ほらもう大丈夫だ。ゴキは、兄ちゃんが退治したぞ、巳兎!」

 「ありがとう、お兄ちゃん!」


 少々大げさな気がしたが、この一件は、片付いた。

 それを傍観していた一同は、


 「桜島さん、さっきまでとキャラが違うよーな…」

 「ランさん、あの子は?」

 

 正一が嵐子に訪ねた。


 「あの子は巳兎ちゃんだよ。桜島さくらじま 巳兎みうちゃん。辰馬の少し歳の離れた妹だよ。」

 「妹…」


 そお言うや否や、彼女も給湯室に入っていた。


 「全く、本当に仲いいねあんた等は…」

 「あっ、ランお姉ちゃん!」

 「しかし巳兎ちゃん、給湯室こんなとこで何してたんだい?飯の時間じゃあないだろ?」

 「お兄ちゃんとこにお客さんが来たみたいだから、お茶でも入れてあげようと思って…」

 「そうだったのか、ありがとな巳兎!」


 そう言って辰馬は妹の頭をなでた。なでられて彼女も満足気だ。

 

 「それはそれは、わざわざありがとう。でもお気遣いなく。いきなり訪ねて来たんだから…」


 正一が、代表して礼を言った。

 巳兎は走達の顔を見て、


 「おじさん達がお客さん!」


 と言った。おじさん呼ばわりされ走達は、


 「おじ…さん…って!」

 「いや俺等二十代だぞ。しかも、君の兄より年下だぞ…」


 地味にショックを受けた。

 それを察したのか辰馬は、


 「悪いな、巳兎は思った事をすぐ口にする質なんだ。正直者っと言おうか、嘘つけないんだ。」


 と、フォローになって無いフォローをした。

 それから改めて、彼女とも挨拶を交わした。桜島辰馬・桜島巳兎兄妹。2人は数年前に両親を事故で亡くし、以降、辰馬が親代わりで彼女の面倒を見ているという。

 辰馬自身、唯一の肉親の妹を大切に思っている。かく言う妹の方も、兄辰馬を何よりも信頼している。因みに、嵐子曰く、ブラコン気味らしい。


 「それはそれは、ご苦労なさったんですね、桜島さん。」

 「いや何、小さめだが、親が遺してくれたマンションがあるからな。家賃収入で金には困ってないんだよ。」

 「てことはマンションの管理人か。スゲーな!」

 「たまたまだ。たまたま親がマンションを持ってたってだけだ。それを相続しただけだ。俺は何にも偉くない。」

 「でも、妹さんの事をしっかり面倒見てるんだから、大したものだ。現にさっきも、悲鳴を聞いた途端、いの一番に駆けつけたしな。」

 「そっ、そうか…」

 「そうだよ、辰馬。アタイも同感だよ!」


 剣持も彼を称え、嵐子も続いた。そう言われ、辰馬も満足気でもない顔をした。そうやって彼等は、会話に花を咲かせ盛り上がっていた。

 そんな彼らを尻目に、入部いるべ早良(さわら)は会話に入れず、給湯室に前で蚊帳の外状態だった。

 が、その状態である事にさえも、走達は愚か、辰馬達にさえも気付かれる事はなかった…


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