警察署5
それから走達3人は、辰馬等に署内を案内された。
巳兎は、近くにいた彼等の仲間の女性に預けた。
「ついさっきまで話聞いてた場所は、読んで字の如く取調室だ。狭いからな、俺達はあんまり使ってないんだ。因みに、あの鏡、マジックミラーになってるぞ。」
「へー、ドラマの相○とかで見たことあるけど、本当にあるんだな!」
「普段の生活じゃ、マジックミラーなんて、殆ど見る機会ないからな。」
走等は物珍しそうに、マジックミラーを観察した。
「そういや取調室って言ってらカツ丼だよな。何処かに残ってたりして…」
走が辺りを見渡した。が、直様正一が口を開いた。
「走…実際の取調室じゃ、カツ丼の類は出ないんだぞ…」
「エッ⁉マジ、出ないのか?でもドラマとかじゃ定番だろ?」
走は意外そうに叫んだ。後ろの方にいる剣持も、「そうなのか⁉」と思っていそうな顔をしている。
「本当だ。それは本当にドラマでの話だ。昔のドラマでそんな感じのシーンが流れたせいで、取調室=カツ丼、ってイメージが世間に広まってしまったらしいぞ。現実では、取調室で出るのはせいぜい暖かくないお茶か水が限度だ。食べ物を出すと、供述を物で釣って聞き出しものと扱われる可能性があるんだ。本当に出して処罰された警官がいるらしいぞ。」
「へー、そうなのか…」
「因みに食事は、留置所の独房内で、官弁と呼ばれる弁当が出されるんだ。どうしても、カツ丼とかが食べたかったら、自弁っと言って、自腹で店屋物とかを買う事になるんだ。」
「自腹かよ…」
「しかも、平日の昼食限定だ。しかも、週に2回程、風呂に入れてもらえるが、その時使う石鹸代とかも本人の所持金から引かれるらしいぞ!」
「かー、捕まった上、金取られるのかよ…罪を犯したとはいえ、厳しいな…」
「金が物を言うとはこの事か…」
近くにいた剣持がつぶやいた。
「随分と詳しいな?」
辰馬が口を挟んできた。
「よっちゃんは物知りだからな。」
「いや、ただ見聞きした知識ですよ。」
そう実の所、正一が時折出す知識をは、本やテレビから得た物が大半である。
「よし話に出た事だし、次は留置所を案内しよう。」
それから、場所を留置所に移した。
そこには普段見ることの無い牢屋が、並んでいた。
「ここは留置所だ。俗に言う豚箱だな!あっ、奥の方は見ない方がいいぞ。かなり凄惨な事になってたからな…」
「本物の牢屋か。警察に捕まると、こんなとこに入れられんのか…」
「出来れば、一生入りたくないな…」
走と正一が手前の房を見ながら言った。
「確かに、俺等も出来れば世話になりたくないな…」
「因みにこの上は、女性用の豚箱で、近くに泥酔者を保護する専用の所もあるのよ。通称、トラ箱よ!」
嵐子が付け加える様に説明した。
「トラ箱ね…」
「まっ、おかけで布団の類は沢山あっから、寝るのには困んないってわけよ。」
そんな感じで一通りが署内を案内された。
「とまあ、こんな感じだ。最初は、息苦しい気持ちだったが、慣れれば悪くないぞ。」
ど、その時ピーピーと音が鳴った。
同時に辰馬は懐に手を入れ、トランシーバーを取り出し、耳に当てた。
「どうした、何かあったか⁉」
「トランシーバーだ!!」
「ああ、なんか知んないけど、今の大阪じゃスマホが使えないからね。うち等の中に、こういった機械に詳しい奴がいてさ、どっかから調達して来てくれて、連絡を取るのに使ってんのさ。」
嵐子が説明した。
「しかし、ここは警察署だ。警察官が使う無線があるんじゃないか?」
と、剣持が質問した。
「生憎、蚊との戦闘で殆ど壊れちまったみたいなんだよ。まあ、無事なのもあるけど、血で汚れててさ、とてもじゃないけど使う気になれないんだ。」
「なんと…」
あのロビーの有り様では仕方ないなと、走達は納得した。
それを余所に、辰馬はトランシーバーからの声に耳を傾けている。そして、
「直ぐに向かう、待っててくれ!」
辰馬はトランシーバーを切り、懐にしまった。
「どうしたんだい、辰馬?」
「上の監視所の奴からだ。近くにいる蚊の様子がおかしいらしい。」
「おかしいって、どんな風にだい?」
「俺も詳しくは分からん。兎に角、行くぞ!」
辰馬達は、上へ駆け上がって行った。
それ見て走達も、
「今度はさっきのゴキブリとは、わけが違うみたいだ!」
「俺等も行こう!」
剣持が我先にと、走り出した。それに続いて、走と正一も上の監視所へ向かった。
カツ丼の件は、実話だそうです。




