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ブラッディ・モスキート  作者: Mr.ゴエモン
新たなる出会い
59/206

警察署1

 警察署へ足を踏み入れた走達3人。踏み入れるや否や、3人の鼻を強い刺激が襲った。


 「うぇー、何だよこの匂いは?」

 「何って…血のようだな…」


 正一の言う通り、それは血の匂いだ。

 かつては、様々な理由で署を訪れた市民を受け付ける警察署の1階ロビー。受付、指名手配犯のポスター、自販機、観葉植物等で清潔感あった場所も今や見る影もなく、人々の血で汚れていた。壁や床の至る所に血しぶきが飛んで付着している。それも時間が経ち、黒く変色している。

 

 「スゴイ血の量だな…」


 剣持も顔をしかめた。


 「ここでもかなりの人が犠牲になったようだな。しかし、妙だな…」

 「どうしたんだよ、何が妙なんだ、よっちゃん?」

 「死体だ!死体が全然ないぞ!」


 正一の言うとおり、血まみれでありながらも、死体が一体もいないのだ。


 「確かに、無いな…」

 「しかしだ…蚊が片付けたとは考えられないし…まさか、食われたんじゃないか?」

 「それは考えられない。蚊は生き物の血は吸うけど、食べたりはしないんだよ。」


 そう蚊は基本的に、生き物の血を吸いこそすれど、肉は食べたりしない。蚊は血を吸って生きていると思っている人もいるかもしれないが、蚊は血だけで生きている訳ではない。そもそも血を吸う蚊は、メスだけである。それも繁殖期等に繁殖の為の栄養を補給する為、吸血行為を行うのだ。それ以外、蚊は、オスメスを問わず蝶等と同じく草花の蜜や汁・樹液を吸って生きている。蚊もまた、虫なのである。


 「しかしだ、この血の量からして、死体があったのは間違い無いだろう…少し前まではな…」

 「じゃあ何で…」

 「考えられるとすれば…誰かが片付けたという事になるぞ!」

 「誰かって、誰だよ?」

 「それは俺にも分からないが…」


 正一も言葉を詰まらせた。それと変わるように剣持が、


 「少なくとも、ここに誰かいるのは間違いないみたいだ!」

 「剣持さん!」

  

 剣持が刀の柄を握って、構えている。


 「誰かいるみたいだ、気配を感じる…」

 「気配!」

 「ああ、それも一人二人じゃない。」


 柄を握る手に力が入る。何時でも抜刀可能だ。

 すると奥から「ガタン」と物音が聞こえた。


 「ここで待っててくれ、様子を見てくる。」


 そう言うと、剣持は先には進んだ。それを走と正一は静かに見ていた。が、次の瞬間、何本かの腕が近くの部屋から飛び出てきた。


 「うわっ!」

 「!よっちゃん!」


 腕は正一を捕まえると、部屋の中へと引きずり込んだ。


 「吉元!しまった、こっちは囮か!」


 剣持が慌てた引き返して来た。最中に刀を鞘から抜いた。走の所まで戻ると、正一が引きずり込まれた部屋に飛び込んだ。


 「吉元!」

 「よっちゃん!」


 続いて走も入ってきた。が、直ぐに2人は動きを止めた。

 そこでは、正一が複数の男に取り押さえられているのを目の当たりにした。しかも、1人の男が正一のこめかみにライフルの銃口を向けている。

 男達はその辺にいる、普通の若者達といった感じだった。が、手にしている銃火器が不釣り合いに見えた。


 「何もんだ、お前等は?」


 1人が聞いてきた。それに対し、


 「それはこっちのセリフだ。何なんだお前等は?」


 剣持が聞き返した。


 「俺等が誰なのかはどうでもいい。それよりも、その刀をしまって貰おうか!そうすりゃ、こっちも撃ったりはしないし、こいつは返すと約束するぞ。」

 「…分かった。」


 剣持は男の言葉に従い、刀を鞘に収めた。

 それを確認し、彼等は約束通り、正一を開放した。


 「大丈夫かよっちゃん!」

 「あっ、あぁ…」


 正一は蚊とは違った恐怖で震えていた。


 「改めて聞くぞ。お前等は何者だ?」


 再び男達が聞いてきた。


 「どうする?」

 「どうって…正直に言うしかなさそうだな…」


 走達は、ここに来た経緯を説明した。それを信用したかは分からないが、男達は、一応納得した風な顔をした。


 「なる程な…とりあえず信用するとしよう。お前等の目当ての物も確かにある。今、俺等が持っているブツがそれだ。」


 男達が所持している銃火器を見せた。それ等は警官の備品だったらしく、警察のマークが入っている。まるで自慢するかの様に、見せつける男達。が、直ぐに顔を強張らせ、


 「だが、生憎で悪いが、ここにあった銃火器は、全部俺等の物だ。弾丸1つ渡すつもりはねーよ!」


 とキッパリと言い放った。


 「そんな…同じ生き残りなんだ、何とか協力を…」


 正一が何とか説得しようとするも、相手は聞く耳を持たない様子で、


 「聞こえなかったのか⁉渡すつもりは無いと行ったろが!」


 1人がニューナンブを走達に向けた。

 走達3人はそれ以上何も言えなくなった。


 「……」

 「分かったら、とっととココから出て行きな。ここは今や俺らの根城みたいな物なんだよ!」


 説得は無理のようだ。走達は諦めて退散しようとした。が、そこに


 「ちょっと待なよアンタ等!」


 と、今いる部屋の正面の階段の上から誰かの声が聞こえて来た。


 「その声は!」

 「姐さん!」

 「「「姐さん!」」」


 走達は声を揃えて叫んだ。すると階段の上からボーイッシュ風な若い女性が降りてきた。


 

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