召集
ここから第4章です。
走達が地下に来て2日目の朝。高倉等リーダー格の人間達が地下中の人間達を召集した。走達3人を始め、新堂姉妹、剣持、大石・近松の2人組、御子柴、齋木、謎の外国人ブライアン、ついでに船森達もいる。
「何なんだ、全員集めるなんて?」
「次の食糧調達に行く人間を選ぶんじゃないのか?」
「あり得るな、そうしたら俺等が選ばれっかもな。」
などと、走と正一が話していると、高倉が切り出した。
「皆に集まってもらったのは他でもない。単刀直入に言おう。我々はここ、大阪からの脱出を考えている!」
場の空気が固まったのを、皆が感じた。
「脱出⁉」
「そうだ。大阪から外に出るんだ。」
「何でまた急に…」
「いや、実を言うと少し前からが我々の間で考えられていたんだ。」
聞けば、この辺りで調達出来る食糧もそろそろ無くなって来ている。そうなると、今までよりもリスクを侵して、遠くへと調達に行く必要がある。そのリスクはどんどん上がり、犠牲者も多かれ少なかれ出るのは必至。それならば、比較的体力と食糧のある今の内に、大阪から脱出を試みてはどうかと言う話になったのだという。
「しかし、危険すぎるぞ。外には蚊の化け物がうじゃうじゃいるんだ。」
「そうだ、無理に脱出を計らなくとも、助けが来るのを待てば…」
「その助けは、何時来るんだ?外に通じる通気口からは、それらしいヘリ等の音は聞こえない。聞こえてくるのはせいぜい、蚊の羽音ばかりだ。」
「正直言ってだ、政府は宛にならん。それならば皆で力を合わせ、この地獄から脱出しないか⁉」
初めは否定的だった地下の人間達だったが、次第にその気になって、賛成する者が出てきた。
「俺、やるぜ。何時までもこんな辛気臭いとこにいられっかよ。」
「確かに、こんな地下でドブネズミみたいな生活は、いい加減ウンザリしてたんだ。」
「あぁ、いっそ人思いにやってみっか。」
「おうよ、蚊にビクビクしてられっか。でっかくても所詮、蚊だ。蹴散らしてやれ。」
どんどんと、ボルテージが高まって来る。その中、走達は
「よっちゃん、カエデ。俺、この作戦に乗ろうと思う。」
「!!えっ、ちょっと走、本気なの⁉」
カエデが聞き返した。
「本気だ。どうせここにいても近い将来、食糧無くなってミイラになるのが落ちだ。なら、この作戦にかけようじゃねーか!お前等はどうする?」
走の目は不思議と生き生きして見えた。少し前までうだつの上がらない青年の姿はそこに無かった。それを見て正一は、
「分かった。いいだろう。俺もやるよ。」
「えっ、よっちゃんまで…」
「止めても無駄だぜカエデ。俺等は、腹くくったんだ。」
カエデは2人の顔をみた。2人とも、参加を取り消す気は微塵も感じさせなかった。長い付き合いのカエデには良く分かった。それに感化されてか、カエデも覚悟を決めた。
「全くアンタ達は…良いわ。アンタ達とは長い付き合いだもん。こうなりゃ何処までも一緒よ。」
こうして3人は大阪脱出作戦に参加を決めたのだった。