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ブラッディ・モスキート  作者: Mr.ゴエモン
脱出作戦
46/233

金物屋

 2021/09/24、一部に加筆しました。

 「よし、蚊は居ないみたいだ。今の内に…」

 「気を抜くなよ、皆。」


 そう言う走達は、息を潜め、お笑い事務所の劇場近くに居た。

 大阪脱出作戦が決まり、脱出に必要な物を集める為に、それぞれ役割分担し、班に別れ、それぞれ行動に移ることとなった。一つの班は今までと同じく食糧調達だ。新堂姉妹達が調達した食糧は既に底を尽きかけており、大阪を出るまで保ちそうにない。脱出にどれ位かかるか分からないが、兎に角、食糧は余分に手に入れておこうという事になった。そしてもう1班の役目、それは武器・防具を手に入れる事だ。

 蚊に対して何時までも隠れてばかりいられない。いざという時に戦える準備を、という意見が出た。今のところ武器と呼べる物は剣持の刀位だ。その為、武器になる物を探しに、走達はこの場所に来ているのだった。

 無論、アメリカと違い日本に銃を扱っている店など無い。が、何も武器は銃火器と決まってなどいない。包丁やフライパンに金槌、そういった日用品だって、使い方次第で十分武器になる。ましてや相手は巨大とはいえ蚊だ、通用するだろう。

 某劇場の近くには、東京のアメ横同様、各種専門店が鎮座している。工事現場で使う道具を扱う金物屋に、飲食店で使う様なたこ焼き機やのれん・鉄板等と本格的な機材を扱っている店もある。無論、武器になる物も。そこで、武器を調達する事とした。


 「あるある、選り取り見取りだ。」

 「この箒やブラシも使えるな。先に包丁やナイフを取り付ければ、即席の槍みたいに使えるぞ。リーチもある。」

 「この鍋も頭を保護するのに良いかも。この鉄板も、盾代わりになるぞ。」

 「これもいいな。後、これも…」


 等と、皆が色々と持って行く物を吟味している。そして各自選んだ物を運び出した。そして、近くのマンホールの入口から地下へと持ち込んだ。そこは普段、出入りに使っている入口ではない。たまたま地下に、この辺りの下水道に詳しい人間がいたので、その人物から最寄りのマンホールの入口を聞き、そこを武器を運び入れる箇所としたのだ。なお、「詳しい人間がたまたま地下に居たなんて、随分と都合がいい話だな」と多くの人が思っていたが、口には出さなかったとか…

 そして、最後を品を中に入れた後、走が武器調達をした店を見ると、正一が、店のレジの近くで何かしている。


 「何してんだよ、よっちゃん?」

 「走。何、ちょっとな…」


 と言うやいなや、正一は財布から紙幣を取り出し、店のレジに置いたのだ。仕方ないとは言え、自分達のやってる事は泥棒と変わりない。やはり、タダで品を持っていくのに抵抗があったらしく、せめてもの免罪符とばかりに、自身の有り金だけでは足りないだろうが、置いて行く事にしたのだと、説明した。それを聞き走は、


 「そうだな、なら俺も…」


 と、自身の財布からなけなしの金を正一の置いた紙幣の上に重ねる様に置いた。皆が生き抜く為だと割り切ってはいたが、走自身も先程から罪悪感を感じていたのだ。


 「無理しなくていいぞ走!」

 「よっちゃんが置いていって、俺はしないって訳にいくかよ!」

 「そういうとこ律儀だな…しかし、小銭ばかりだな!」

 

 走の財布を除きながら、正一がつぶやいた。


 「大きなお世話だ!こちとら明日もどうなるか分からない、フリーター様だぞ!」

 「様って…」


 そうやってレジに置いた金の上から更に、レジ横にあった招き猫を置いた。風等で飛ばされたりしないようにだ。

 そして店を出る時、2人は店を向いて頭を下げた。そして、

 

 「事件が収束したら、必ず代金払いに来ます。」

 

 と言い、その場を後にした。それは罪悪感から来るものだけでは無い。必ず生き抜いてみせるという、2人の決意の現れでもあった。

 


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