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ブラッディ・モスキート  作者: Mr.ゴエモン
大阪 難波
26/205

食糧調達

 大阪の町が突如現れた蚊の大群に覆い尽くされた。この事件はたちまち日本いや、世界中に報じられたのだった。


 政府は直ちに大阪一帯を封鎖し、周りに避難勧告を出した。大阪は丸々一帯が立入禁止地区となった。立入禁止地区は京都・奈良・和歌山等の大阪に接している地域にまで設けられて。未曾有の事態に政府の対応も遅れ、ようやく大阪に取り残された人々への救助ヘリが出されたが、10機近くのヘリは、1機足りとも帰ってこず、その日の内に救助は失敗したと報じられた。

 大阪へはネットも電話も繋がらず、大阪に知人がいる人々は安否不明の人達へ対して、無事を祈るしか出来なかった…


 大阪が蚊に支配されてから、10日が経とうとしていた。町のあちこちに蚊の犠牲となった人々の遺体が散乱している。その犠牲者達は供養も埋葬もされることない状態だ。大阪の空は蚊が飛び回っている。

 そんな最中、町を歩いている人間を見かけることさえ無かった。しかし、人気の無かった町外れの路地裏に動く人影があった。


 「大丈夫、この辺りに蚊はいないわよ、登紀子。」

 「OK!そんじゃそこの居酒屋から貰いましょう。」


 それは、新堂有希子と新堂登紀子、双子の姉妹だった。数日前、蚊が大阪の町を覆い尽くした日、2人も蚊の餌食になりかけたが、ある人に助けられ、難を逃れたのだった。そして、同じく蚊から逃れた人達と合流し、隠れ家に身を寄せているのだ。そんな2人がこんな所で何をしているかというと、食糧を調達に来ていたのだ。

 二人が居る隠れ家には、沢山の人が身を寄せているが、その数に反し食糧は殆ど無かった。突然の事態なので持っている物も限られ、僅かな食糧は直ぐに底をついた。そこで数名の代表者を選び、その者達が町に食糧をかき集めに出るということが、これまでに何度か行われた。何とか戻って来た者もいれば、帰ってくることが無かった者も少なくは無かった…

 そして、今日の代表者が選ばれた。その中にこの姉妹が含まれていた。若い2人が行くのに反対する者も多かれ少なかれいたが、この隠れ家には子供・年寄り・怪我人も多くいた事もあり、登紀子は行くと言い、有希子も志願した。登紀子は例の日の件もあるので有希子には残るように言ったが、有希子は聞かなかった。妹が行くのに姉が行かない訳にはいかないと、有希子の決意は変わらなかったのだ。


 「どう、有希子?」

 「えぇ、飲食店だから沢山あるわよ。」


 2人は食糧をかき集めた。その殆どが、缶詰やレトルト食品だった。電気が通っていないため、冷蔵庫の中の肉や魚等の食品は殆ど腐っていた。生野菜・果物等もしなびていたがまだ食べれそうだ。まだ食べれそうな物をいくつか袋に入れ、後は残しておいた。


 「これで数日は持ちそうね。」

 「えぇ、でも…こんな泥棒みたいな事気が引けるわ…」


 有希子は罪悪感を感じていた。


 「しょうがないでしょ、非常事態なんだから、背に腹は変えられないって言うでしょ?」

 「非常事態だからこそよ。非常時の盗みは重罪らしいのよ登紀子⁉」

 「皆が生きる為よ有希子。生きて帰れたらあたしは、留置場でも鑑別所でも喜んで行くわよ。それ位の覚悟がないとこの町で生き残れないわよ。」

 「分かったわよ登紀子。とりあえず、これ位にしましょう。あんまり多いと、いざって時に、逃げにくくなるわ。」

 「そうね、欲張って死んだら元も子もないわ。取りあえずこれ位あればいいでしょ。」


 2人が引き上げようもすると、入り口の方から人の声がした。


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