表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
柴犬パンの熱帯生活  作者: 外村パン
6/11

私のお城 その2

私のお城は、ベランダの監獄。だった。

外村家に来て半年ぐらいは、ここにいるのが一番安心だと思っていたんだ。ここでおしっこやうんちすれば、お母さんもめちゃ褒めてくれるしね。そう、私の肉球が床の針金に食い込むのさえ無視すれば、ここは安心安全、そんな私のお城だった。

でも私はやっぱり気づいてしまった。何に?

青空トイレの清々しさに。

青空の下でするおしっこは、サイコー。青空の下でするうんちも、これまたサイコー。

お母さんは、初めは複雑な顔してたよ。だって、朝起きてまず一発、「ピーピー」の呪文のもと、監獄のトイレシートにおしっこするのがだんだん身についてきていたからね。

でもね、この青空トイレの楽しさを知ってしまってから、自分のお城でおしっこするのがまったく嫌になっちゃったんだ。ほら、もともと私清潔なたちだし。トイレとベッドは別々?な物件を希望していたわけだし。だからそれ以来、お城でおしっこするのは断固拒否!運動始めちゃった。


それからはね、お母さんは雨の日も風の日も、灼熱の太陽の日も、私の青空トイレに付き合う羽目になっちゃった。

「はあー、今日も暑そう」

ため息つくお母さんを、私は散歩を兼ねたトイレタイムに連れ出すのだ。おお、この芝がふかふかの木陰、ベストスポットじゃありません?早速始めようかしら。ぐるぐる。お母さんはそこで待機!私、用をすませますんで。お母さんは、水と新聞紙と袋を持って、大人しく待機してるよ。ふふ。


私もだんだん大人になって、粗相もしなくなってきて、監獄が最早トイレ兼ベッドじゃなくて、完全にベッドだけになってしまった頃、その事件は起こったんだ。

今まで青空と星空が広がっていた私のベランダ。ある日突然、真っ黒黒のガスが立ち込める悪魔の空間になっちゃったんだ。何?このもくもくした変な空気?

目が痛いよー。

のどが痛いよー。お尻の穴もついでに痛いよー。

「ヘイズや!パンちゃん、入って」

お母さんが私を中に入れると、ぴっちりと窓を閉めた。今日は洗濯物も干さないんだね。いっつも

「アチい〜」

って言いながら私のそばでブツブツ言って干すくせに。お母さんが言った。

「パンちゃん、ヘイズが来たよー。インドネシアの畑を焼いた煙がここまで流れてきたんだって。人間の健康に悪いんなら、パンちゃんにも悪いに決まってるよー」

ええ?この煙、危ないんですね?私のお尻、大丈夫?

「お尻は大丈夫や。危ないのはのど!パンちゃん余計にワンワン言ったらダメだよー」

それは保証できませんが、でも努力します。

「だから、パンも当分中にいな」

丸美がやってきた。

「じゃあ、パンちゃんは今日から私と寝ようね。いいよね、お母さん?」

「いいよ」

そこは私に承認をとってほしかった。なんでお母さんが答えるの。

丸美と寝るのははっきり言ってやだけど、あのフカフカの丸美のベッドで寝るのは、はっきり言って嬉しい!あの監獄から一転、人間のベッドで寝られるなんて、私の人生上がってきたよ。

これもヘイズとやらのおかげだね。


そしてヘイズの日から今日まで、私のお城は、丸美のベッドになったのだ。あのベランダの監獄のお城は、その時以来完全にお払い箱。

丸美のベッドは、快適だよ。丸美がいなければもっと快適。丸美は時々寝ぼけて私を蹴るんだ。ぐっすり寝てる時に限ってやるんだ、丸美は。

「はあ」

そんな時はベッドを降りて、床に行く。フカフカをとるか、安眠をとるか。これは眠たい頭には難しすぎる選択だよね。

「…」

寝るか。

そしてお母さんはいつの間にか

「ハウス!」

って言わなくなってしまったんだ。そう、今日のあの瞬間まで。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ