二日目 午後
十二時
「ただいまー!」
きなは元気よく自宅の扉を開けた。
もちろん、その前に鍵を開けたのは僕だ。……どうでもいいことだが。
そうして、きなはとてとてと家の中に入って行った。
「しかし家の中も寒い。これは早急にストーブを付けなくては」
そう思って家の中に入った時、既にストーブは点いていた。おかげで部屋の中はそれなりの温度を保ってくれている。少なくとも外よりはマシであろう。
そして僕は、ストーブを付けてくれた本人の元に向かう。当の本人は、ストーブのそばで体を温めていた。
「ありがとう、きな。きなのおかげでリビングが暖かいよ」
「えへへ。とうやにほめられたっ」
きなはストーブで温まりながら、にっこりと無邪気な笑顔をこちらに向けていた。
人生の中で女性との関係を持たなかった冬也にとっては、その笑顔だけでドキッとしてしまう。決してロリコンな訳ではない。
「と、とりあえず、お昼にしようか。きなは何が食べたい?」
「わふぅ。えっと、何が良いかな?」
きなは何かを思い浮かべるように空中を見ていた。
おそらく、昨日貸した絵本の中の食べ物でも思いだしているのだろうか。 なぜか僕の家にはそう言う食べ物を題材とした絵本が多いのだ。母親の趣味……だったのだろうか?買ってきた母本人しか知らないのである。
「やきそばがいいな」
「やきそば……。確かにおいしいものだけど、材料があるかだよな。ごめん、少し冷蔵庫の中覗いてくる」
「うん、分かった」
キッチンまで来た僕は、冷蔵庫をのぞく。
昨日使った分以外はそのままだが、焼きそば用の麺は家に買っておいたっけ?
冬也は冷蔵庫の中を探す。キャベツや豚肉、人参などの材料はあるのだが、どこを探しても麺だけは入っていなかった。
どうやら買い出しに行かなくてはいけないようだ。
そう思い、冬也はストーブの側に居るきなに、焼きそばを買いに行くことを伝える。
「きなも買いもの行く!」
「いや、今日は僕一人で買ってくるよ。時間も遅いから」
そういうと、きなはしゅんとしてしまった。
きなには家に待っていてほしいのだが、それでも連れていくべきなんだろうか。家で待っていてほしいのは、僕のわがままなのだろうか?
「すぐ帰ってくるから」
「うん……いってらっしゃい」
こうして僕は一人、きなを家においてスーパー。
いや、もっと早く買い出しできる場所――コンビニに向かうのだった。
十二分後
「たーーーーだいまっっ!!!」
全速力でコンビニまで向かい、焼きそば麺を買った後、全速力で家に帰ってきた冬夜は、全速力(?)で家の扉を開けた。
片手には、コンビニ袋をぶら下げながら。
田舎と言うこともあり、コンビニが遠くて少し遅くなってしまった。
「きなー、帰ってきた……よ」
冬夜が言葉に詰まった理由。
それは、きながこたつで寝ていたからである。
「まぁ、あれだけ散歩した後にお昼ご飯も食べなかったら、眠くもなるよね」
そうして、冬夜はきなが起きないようにそっと昼食の支度にとりかかるのであった。
自分の料理を食べて欲しい人のために。
「にゅむ…………冬夜ぁ」
きなが涙を流していたことを知らないまま。
一時
「きな、きな」
冬夜は、きなの体をゆすって起こそうとしていた。
「ふぇ? とうや?」
「そうだよ。きな、ご飯出来たよ」
そういう冬夜の片手には、焼きそばが盛り付けられたお皿が乗っていた。
それを見たきなの口に、唾液が溜まってきた。
それはもうあふれだすほどに。
「うわっ!? きな、よだれ」
「えっ? ほんとだ」
「その様子だと・・・・相当待たせちゃったみたいだね。ごめんよ」
「ううん、あやまらなくて大丈夫だよ。だって、とうやはわたしのために走って買ってきてくれたんだから」
全てを許す女神のような笑顔
その笑顔は……僕の目の前にあった。
「それよりとうや?わたしおなかすいたよ」
きなはお腹押さえて、お腹がすいていることを冬夜に伝える。
そういえば、もう一時なのか。
「そうだね。それじゃ一緒に食べようか、きな」
「うんっ」
こたつの上に焼きそばと箸をおいて、僕たちは手を合わせ、昼食の時間を過ごすのであった。
二時
「うー、暇になってきたな」
食事が終わり、食べ終わった後の処理を終えた冬夜はすることがなくなってしまったので、リビングの長いソファーに寝転がりながらこれから何かしようかと考えていた。
一方のきなの方はと言うと、昨日から貸している絵本や、少し難易度が上がった書籍などを渡してお勉強をしている。
「ゲームでもするかな」
そう思い、僕は引き出しに入れておいた現代の有名な某ゲーム機を取り出す。
電源を入れると、ゲームらしい音とともにスタート画面に映った。
やっているゲームは、音に合わせて太鼓をたたく有名なゲームである。
「よし難易度は最凶で、っと」
曲を選択した僕は、その鬼のような譜面をたたき始めるのであった。
「にゃふっ? とうやがなにかしてる」
音の方を向いたきなが見た物は……何かに奮闘している冬夜だった。
そしてその方向からは、綺麗な音楽が聞こえてきた。
同時に、その音楽の中には、言葉で表すならば『ドン』と『カッ』と言う別の音も聞こえてきた。
「とうや? なにしてるの?」
「これは音楽に合わせて太鼓をたたく有名なゲームだよ」
「太鼓? 昨日読んだ絵本にも書いてあったよ! 棒で太鼓をたたくとドンドンって音がするんでしょ? そっかぁ、さっきの『ドン』と『カッ』っていう音は太鼓の音だったんだね」
さすがと言うべきだろう。やはりきなの記憶力と理解力は普通の人間ではなかった。天才のレベルである。
もしかしてきなは人間ではないのか?
いや、ケモ耳がついている時点で人間ではないか。
きなは一体何者なんだろうか。
「ねぇねぇとうや! さっきのおんがくきれいだったね」
「うん? さっきの曲はね『久遠の夜』って言う曲だよ」
「わふぅー。いいきょくだったね」
「なんなら、きなもやってみる?」
そう言って、僕はきなにゲームを差し向けるが、きなは首を横に振ってゲームを取ろうとはしなかった。
なんで?と理由を言う前にきなは答えた。
「わたしは、とうやがやっているのを聞いているからだいじょうぶ」
「そうか。きながそれでいいなら良いんだけどさ」
そうして冬夜は再び同じ曲でゲームを始める。
きなは冬夜の横に座り、曲を楽しむようにまた勉強を始めるのだった。
四時
今までゲームをしていた冬夜は、そのゲームを適当にほっぽって寝転がり始めた。
さすがに二時間もゲームをすれば飽きてくるものもある。
「う~ん、ゲームも飽きてきたな。他にやる事……あっ!?」
いきなり冬也は、悲鳴に近い叫びをあげた。
そのいきなりの悲鳴に、勉強をしていたきなも驚いてこちらを向いた。
「ど、どうしたのとうや!?」
「いや、きなのことで頭いっぱいで冬休みの宿題のことを完全に忘れていた」
まぁ、冬休み二日目なのでまだ時間はたくさんあるのだが。
うちの高校は、そんなにレベルが高いとは言えない中堅クラスなので、中学校の時に比べて宿題は減った気がする。しかし、嫌なことはすぐに終わらせるべきだろう。
そのことに気付いた冬也は、さっそく実行に移す。
まず、終業式以来開けていなかったスクールバッグに手を伸ばし、中に入っている宿題表に目を通した。
ふむ、これくらいならすぐ終わるだろう。
そうして、課題をテーブルの上に広げてさっそく取り掛かるのであった。
すると、さっきまであっちで勉強していたきながこちらに来た。
何も知らない彼女にはやはり珍しいものなのか、彼女は興味深そうにこちらを覗いてた。
「とうや、なにしてるの?」
「これは宿題。学校と言う勉強をする施設で出される課題だよ」
簡単に宿題についてのことを説明した途端、きなの目の色が変わった。
瞬足と言うのだろうか?それぐらいの速さできなは傍に向かって来た。もちろん興味津々に。
「うおっ!?」
「ねぇ! とうやはなにを勉強しているの!?」
あぁ。今回の宿題は骨が折れそうだ。
六時
「あぁ~、お勉強した!」
「…………………………あべしっ」
あれから二時間、自分の宿題をする傍らで、きなに宿題の中の数式やら漢字を片っ端から教えた。
何も知らない彼女には『一+一は二』と言う概念から教えたため、かなりの体力を消費した。まぁ、きな本人が満足そうなのでそれでいいのだが。
しかし、きなの学習能力は予想をしていたより遥かに上のようだった。
何しろ、何も知らない子供が高校生並みの問題を二時間で理解するには相当な才能がないとできないことだ。どこのハジメちゃんだ!?
そんなことはさておき、現在の時間は午後六時。
そろそろ夕食の時間である。さて何を作ろうか。
まだ途中の宿題をスクールバッグに入れようとした時、一つ思いだした。 それは高校で行った家庭科の時間のことである。
思うが先か、冬也は買い物の準備をし始める。
「とうや? どこか行くの?」
「うん。冷蔵庫の中の食材とかも切れてきたしこれか」
続きを言おうとしたのだが、言葉に詰まった。
きなは今日のお昼のようにしゅんとしてしまった。
昨日今日で気付いたことだが、どうやらきなは僕と離れることが嫌らしい。
「……一緒に行こうか」
「……うん!」
こうして二人は仲好くスーパーに向かうのであった。
「ふんふふ~ん♪」
きなは綺麗な白髪を楽しそうに揺らしながらスーパーに入店した。
そして、今更気付いたことだが彼女の耳がほかの人に奇異な目で見られるのではないのかと、ここにきていきなり不安になった。
「冬夜兄ちゃんなにしてんの?」
「おぉ、カズキ君じゃないか」
僕に話しかけてきた少年カズキ君は、僕の家の近所に住んでいる子だ。
一人でスーパーに来る子ではない(居たら珍しいが)ので、たぶんお母さんと一緒に来ているのであろう。
「冬夜兄ちゃん、誰その子?」
カズキ君が僕にそう聞いた瞬間、きなは後ろに隠れてしまった。警戒しているのかな?
「えっと、この子はきなって言うんだ。ほら、きなも挨拶しなきゃ。」
「わたしはきなです」
「うん、ボクはカズキ! よろしくきなちゃん!」
「……よろしくっ!」
カズキ君の元気な挨拶に、どうやらきなの警戒も解けたようだ。
カズキ君が良い子でよかった。
「ところできなちゃん、その犬のお耳見たいの何?」
――なっ!一番答えずらい物を!?子供は鋭いと改めて知らされた瞬間であった。
「わふ? これは本物のおみみだよ」
「へぇ~。そういうお耳している子もいるんだ。かわいいねっ!」
「えへへ。ありがとう」
どうやら危機は回避できたようだ。すると、カズキ君はレジの方を見て、
「あっ、お母さんもう会計してる! もう行くね!!」
そう言ったが早いか、カズキ君はレジの方に走って行った。
走っていく後ろ姿をみて、今日きなが転んだのを思い出した。
「大丈夫かな……」
カズキ君の後ろ姿を見送ったあと、僕たちは食材を見に行くことにした。
「今日は……おっ、お肉安っ」
なんだろう、こうお店に行ったりしてほしいものが安いと声をあげちゃう気持ち。皆さんにもお分かりであろう。えっ、わからない?
「とうや……」
「どうしたの? きな」
自分のけもみみを触りながらきなは、喋り難そうに僕に問う。
「わたしのみみって、へんかなぁ?」
うぐっ!?と心の音が口に出てしまった。どう答えた方がいいのだろうか?
「さっきカズキ君もわたしのお耳気にしてたし」
「でも可愛いって言ってくれたよ?」
さっきカズキ君が言ってくれていた『褒め言葉』をなんとか返してみるが、何とかなるか?
不安そうに僕はきなの返答を待つ。泣いたりしないといいな。
すると、予想より斜めな返答が帰ってきた。
「とうやはかわいいと思う?」
「……はい?」
「だから、とうやはかわいいと思うかにゃっ?」
きなは怒っているように少し声を荒げながら言った。
あまりにも斜めすぎて、僕の耳がおかしいことを確認するために再度聞いてみたが間違いではなかったようだ。
僕の返答は、もちろん決まっている。
「きなにはその耳似合っていて可愛いと思うけど?」
「そっか」
僕の正直な返答をしたら、きなはよくわからない顔(喜んでいるんだろうか?怒っているんだろうか?)をしながら黙り込んでしまった。
もしかして、嫌われた!?
と一人ショックに陥っているとき、自分の腕時計に目がいった。長話していたわけではないがかなり遅い時間になっていた。
「き、きな!もう遅いから早めに買い物済ませよう!!」
「わっ! はやいよとうやーーー!!」
きなの手をとって、僕は店の中を少し早めに回るのであった。
七時
「ごちそうさま!」
買い物を済ませたはよかったのだが、帰ってきたときには夜遅くになってしまったので、なるべく簡単なもので食事をした。
作ったものは簡単な野菜炒めだった。もちろんきなは好き嫌いをせず全部食べてくれた。どうやら嫌いなものはないようだ。
食べ終わった僕たちは現在、暇なのでテレビを見ていた。ジャンルはおそらくバラエティーの類だろう。
きなは興味深そうに見ているのだが、僕はあまり興味がないのだ。
でも、テレビを見ているきなは幸せそうなので、その顔を見るのも悪くはないかもしれない。
冬夜は、きなのそんな様子をじっと観察する。
「とうや、どうしたの?」
さすがに視線に気づいたのか、きなは不思議そうにこちらを覗いてきた。テレビよりも僕の方を気にしてくれるのは少し嬉しい気もする。
「いや、暇だなぁって」
「テレビおもしろいよ?」
「う~ん、僕はもう見慣れちゃったからなぁ」
今は正月前と言うこともあって、テレビでも様々な特別企画なども放送しているのだけれど、さすがに数十年生きているとこう言うのにも慣れと言う物が来る。
「そうだよね。わたしには、『きおく』も『おもいで』もないから『なれ』の意味はわかんないや」
きなは自嘲気味に笑う。とても悲しく虚しい笑顔だった。
そうだ。彼女には『きおく』や『おもいで』がない。今ある言葉や知識だって昨日今日で覚えたばかりのものだ。
それを考えると彼女にとって『慣れ』という言葉は、近距離の相手に全速力で投げたボールをぶつけるくらいに威力があるのだろう。
そんな自分が情けなかった。きなの気持ちも知らずに無感情に、無意識に彼女にそんなボールをぶつけていたことを。僕は彼女に酷いことをしてしまったんだ。
それでも、代わりにはならないし、代わるものなんてないのだろうけど、彼女に勇気を与えられそうな言葉を僕は返すことができる。
それが僕の唯一の救いだった。
「そうだね。確かに僕ときなを比べたら、『きおく』を無くしちゃったきなのほうが少ないし、『おもいで』の量だって僕と比べたら一目瞭然だ」
だけど、
『きおく』や『おもいで』の量は別に関係無い。
だって、『きおく』と『おもいで』はこれから作っていけるから。
それに、今こうしているのもきなにとってはもう『きおく』と『おもいで』になっているんじゃないかな?
「とうや、恥ずかしい」
渾身の慰めを恥ずかしいの一言で返されるのは正直つらい。と言うか今すぐ泣きたい。
ラノベから持ってきた言葉は現実ではあまり効果がないことを改めて知らされた。
「でもね、きなはうれしい」
「そ、そっか」
前の言葉のダメージが大きくて今は立ち直れそうにないけど、今ここにきなのこの輝かしい笑顔があれば、それでも良いかなと。
心の底から僕は思えたのだ。
九時
「きなー、タオル巻いたー?」
「まいたよー!」
昨日に引き続き、きなが一緒にお風呂に入りたいというので、再び条件付きで一緒に入る事にした。こんな自分は彼女に対して甘いのだろうか?
「おふろだーー!!」
「そんなにはしゃぐの!?」
確かに今日はきなの手がかり探しのために外出したり、体から溢れんばかりのエネルギーを放出するようにして遊んで汗もかいたけれど、そこまではしゃぐものだろうか?
女の子はムズカシイ。
こうして僕達二人は湯船に浸かる。
僕の家族の人数は大体普通の家族の人数と同じなので、大人二人が入るので精一杯の広さの浴槽しかない。と言うことで、小柄なきなは普通に座り、僕は体を縮こめるように若干体育座りのような姿勢で風呂に浸かるのであった。
「とうや、きのうみたいに頭あらってくれる?」
「なんで?」
「とうやにあらってもらったほうがきもちいいから」
「OK。しかし体は自分で洗いなよユー」
恥ずかしそうにつぶやいたきなを見て、おもわずいつもと違う喋り方で即答してしまったが、心底自分の心が弱いことを知る。悲しきかな男の性。
「それじゃ、いくよ!」
泡だてた大量のシャンプーを手につけて、きなの頭の上に優しく乗せるように洗い始める。一方、現れているきなはと言うと、
「にゃふぅー!」
洗っているこっちも嬉しくなるような声をあげていた。人に洗ってもらうと言うのは、そんなに気持ち良いことなのだろうか?今更になってくだらないことに興味がわいてきた。
それはさておき、昨日は髪の毛しか洗わなかったが、この誰もが興味を持ちそうになるけもみみと尻尾は洗った方が良いのだろうか?
「ちょっと失礼」
え?なに?ときなが言う前に僕は洗っている手できなの耳に触れる。その瞬間、きなの体がビクッと震えた。相当敏感なところだったのか!?
「だ、大丈夫!?」
「いきなりは……びっくりするよぉ」
触れられた本人はと言うと、顔を真っ赤にして涙目になっていた。これはたぶん、いや絶対に僕が悪い。自分でもいきなり耳に触れられたら驚くだろうし、怒るかもしれない。
「ごめん。痛かった?」
「ううん。いたくはなかったよ。ただ少しおどろいただけだよ」
「そっか」
とりあえず機嫌は直してくれたみたいなので、少しホッとした。しかし耳を触るだけで普通涙目になるのだろうか?やはりきなは不思議である。
「ところで、お詫びと言ってはなんだけど、きなの尻尾の方も洗おうか?」
「うん。あらって」
こうして、僕はきなの尻尾を洗った後、簡単に体を拭いて僕達はお風呂場を後にするのであった。
十一時
一通りのことを済ませた後、することも無くなったので僕達はベッドで就寝することにした。夜ももう遅い。ちなみに今日も僕の隣できなはすやすやと眠っていた。
隣に男が居るのに、危険だとは思わないのかと少し不安になる。
そこらへんも明日以降に上手に教えていければいいと思う。眠っているきなの頭を軽く撫でながらそんな考え事をしていた。
さて、両親+弟が帰ってくるまで一週間あるけれど、一週間たったその時にきなの正体が判らなかったとき、僕は一体どのように行動すればいいのだろうか?
今の生活のように彼女と仲良く生活するのも有りなんだろうけど、たぶん家族が何か言いだしそうだ・・・。と言うか、傍から見て正体不明(表面だけなら何とか誤魔化せるだろうけど)の子供?を家に置いておくのはやはり世間体的には良くないことだろうか?
そうしたら、きなは。
いや、悪いことを考えるのはやめよう。それに時間だってまだある。
彼女と生活しながらその答えを探すのも悪くないだろう。
それにきなの意見を聞き入れないのはもっと最悪だ。きながたとえ得体のしれない化物だったとしても、僕の目にはちゃんと『人間』に見えるのだ。
だから、きなの意見が一番だと僕は思うし、きなの意見をきちんと聞き入れようと思う。
だからその答えが出るまで、今日はおやすみだ。
ベッドが狭くて、きなの顔が近いのを我慢しながら僕は就寝するのであった。
今日もいい夢が見れるといいな。
冬夜はきなと一緒に眠りにつくのであった。
(二日目 終了)