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忘却の英雄とその常世神様  作者: はまちゃん


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MD児

森の拠点。


悪石平の言葉に従い、報告は淡々と続いていた。


「悪石様、伝達事項は以上です。」


「……わかった。」


平の声は短い。


空気は静かだが、張り詰めている。


宝と天音は周囲の“跪く者たち”を警戒していた。


皆、敵ではないはずだ。


だが、味方とも言い切れない。


その時だった。


再び報告が入る。


「それと。」


一瞬の間。


空気が変わる。


「MD児が、悪石様の手配に加わるようです。」


宝の表情が固まる。


「MD児……?」


天音も顔を上げる。


「なにそれ……?」


報告役の男は一瞬だけ言い淀む。


だが続ける。


「MD児(Multi-Design Child)。」


「複数種族のDNAを組み合わせて作られた人間です。」


森の空気がわずかに重くなる。


「通常の人間・亞人・天使族・魔族系統の特性を人工的に統合した戦闘個体。」


宝が息を呑む。


「そんなの……人間なの?」


誰もすぐに答えない。


天音の指先が震える。


平は表情を変えないまま言う。


「戦争兵器だ。」


短く、切り捨てるような言葉。


報告は続く。


「現在、東都および天聖院が共同で投入準備中。」


「悪石様の捕縛優先度は最高ランクに更新されています。」


沈黙。


風が森を揺らす音だけが響く。


宝が小さく呟く。


「どこまで……本気なの。」


天音は平を見る。


不安と信頼が混ざった目だった。


「平お兄さん……これって……」


平は少しだけ目を細める。


「来る。」


即答。


「普通の兵では止まらない。」


森の奥で誰かが剣を抜く音がする。


カチャリ。


見えない場所で、戦闘準備が進んでいる。


報告役の男が頭を下げる。


「悪石様。」


「迎撃準備は整っております。」


平は一度だけ周囲を見渡す。


崇拝。


恐怖。


忠誠。


そして歪んだ期待。


「……いや。」


平は静かに言った。


「これは迎撃ではない。」


一瞬の間。


「戦争の準備だ。」


その言葉で、森の空気が完全に変わった。


宝が息を呑む。


天音が一歩後ろに下がる。


そして。


遠くで何かが動き始める気配がした。


MD児。


それはまだ名前しか知られていない“異質な兵器”。


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