19話 永遠の始まり
次話は21時10分投稿予定です。
僕はまず、左手をタッチしグラマトンを展開、アパートの自室を時空間転移に登録する。これで好きな時に目立つことなく部屋に帰れる。
「ソレジャ、シオン、ダンジョンに向かおうか……」
「ああ、ダンジョンの7層へ転移する。行こう!」
僕はイルミと共に時空間転移でダンジョン7層へと移動する。
──微睡む意識が覚醒し、ダンジョン内の景色がハッキリしてゆく。白い大理石で建造された西洋風の迷宮が目に入ってくる。
「この場所に、また戻ってきたんだな……」
忘れもしない……裏切られ、生贄にされて殺されかけた場所だ。でも、そのおかげでイルミと出会い、今がある……。複雑な心境だな。
「シオン、サッソクきたみたいだよ、迎え撃とう……!」
入り口に目をやると、ガーゴイル、ミノタウロス、動く石像がゾロゾロとこの部屋へ入ってくるのが見えた。
「ああ!」
僕は返事と同時にモンスターの群に突撃し、戦闘を始める。僕の拳と蹴りが命中するごとにモンスターは破裂し、ちぎれ飛び、無惨な残骸と化してゆく。
「シオン、うしろだよ!」
イルミはモンスターを殴り飛ばし、壁に叩きつけながら僕に向かって叫んだ。ミノタウロスの斧と動く甲冑の槍が僕に直撃する……が……。
「力と速度も狂ってるけど、やっぱり、常軌を逸脱してるのは、この肉体の頑丈さだよな……」
僕の肉体は傷一つ付くことはなかった。僕は気を高ぶらせ、甲冑の腕を掴んで振り回し、ミノタウロスに叩きつけ両者を破裂させた。僕とイルミによって、次々とモンスターの残骸の山が形成される。
「倒した敵が、ドンドン消えてく……ナニカ残ってるね……」
「うん、あれを集めて売れば、またたくさんのお金が入るはずだ」
そう、倒したモンスターは体の一部を残して霧散し消滅する。いったんモンスターが全滅したため、僕はグラマトンを開き、モナドを検索する。
「あった、アイテムを無限に収納出来るモナドが」
僕はさっそくモナドを習得し、ジーベン・ゲバウト7個目の項目にセットする。
『グレート・アトラクター──自分専用の高次元空間を創り出し、無限に物質を出し入れすることの出来る超常の力。空間内に入れた物質は時の流れが止まり、劣化、変化が発生することがない』
僕は残された素材を拾い、収納空間を開き、入れていく。いくらでも入れられるのは本当に便利だ。
ガルドたちもストレージっていう物を収納するモナドを持っていたけど、収納数に限界があると言っていたから。
「ヨシ、シオン、先に進む……?」
「あ、少し待った」
僕は先に進むのを躊躇する。
「オ……ドシタノ……?」
「聞いた話では、現時点で最強のSランクオブリオンのステータスは1万前後だという話らしいんだ」
「フムフム……」
イルミは髪をいじりながら興味深そうに聞いている。
「そして、ダンジョンの踏破は40層まで進んで、現在そこでストップしてるらしい」
「ナンデダロ……?」
イルミは首を傾げている。
「41層から急にモンスターが強くなり、ステータスもこれ以上は上げ辛く、割りが全く合わないからって耳にはさんだんだ」
「ナルホド〜……」
イルミは相づちを打ち、僕はさらに続ける。
「僕たちのステータス10万は、とんでもない力だ。でも、試してみたところ、同じモナドは付けられず、下位互換のモナドも付けられなかったから、現時点ではステータスはこれ以上、上げられないってことで……つまり……」
「ツマリ……?」
「今の内に最強の武器と防具を検索し入手して、戦闘力を底上げしたいなと思ってね」
「ア、ソレ、良いかも……」
僕はさっそく武器と防具の検索をかけてみる。
……ふと、頭をよぎってしまった……。僕だけこんな恩恵を貰ってしまって本当に良いのだろうか……?
何の努力もしなかったし、頑張りも耐えもしなかった……。そんな僕に、この恩恵を貰う資格なんて……。
「ナニカ、悩んでるね、シオン……」
イルミは僕の顔を覗き込んで微笑んでる。
「はは……完全に見透かされてるな。僕だけこんな恩恵もらって良いのかと、ふと頭をよぎっちゃってね」
僕は少しだけうつむき頭をかく。
「ワタシが許す……ダカラ、悩まなくて良いんだよ……」
イルミは僕の背中をポンッと叩いて励ましてくれた。
「……! ありがとう……もう二度と、この事では悩まないよ」
僕は検索を再開し、最強の武器と防具のモナドを入手する。
……見つけよう、本当の意味で、自由を与えられるモナドを……。
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