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茜の空 第一話

以前、石猫様からリクエストいただいた短編を登場させました。

個人的にすごく好きなので。

他にもいただいたリクエストの中から登場させたいと思うものもあるので、それも込みでよろしくお願いします。

3.茜の空


今日の手伝いを終えて部屋に戻った。引っ越してきたばかりとはいえ、女子高生としては少し可愛さのない部屋。テレビはあるがほとんど使わないし、年頃の人が見るものは一切ない。あるのは、大量の本と机、ベッドだけ。大量にある本も、まだほとんど片付けられておらず、段ボールの中に綺麗に並べてある。片付けないといけないのはわかっているのだが、今日はめんどくさい。なれないことをしたし、たくさん人と関わって疲れた。こんなに、1人の時間で安堵したのは初めてだった。着替えもせず、潔癖の人が嫌がるであろう、そのままの姿でベッドに倒れ込んだ。

おもむろに、私はベッド横にある、まだ整理されていない段ボールから、一冊適当にとった。


『引きこもりの彼女はチーズの匂いで顔を見せる。』


自分には付き合っている彼女がいる。その彼女は今絶賛引きこもり中。仕事で大きなミスをして、クビになってしまったらしい。一応同棲している身としては、自分の部屋に籠られるのは少し寂しい。


そんな彼女はチーズが好きで、よく山盛りの解けるチーズを乗せてトースターでパンを焼いている。


「そんなにかけて大丈夫?」


と自分が聞くと、


「美味しいものが体に悪いわけない。」


と、わけわかめな理由を言って、幸せそうな顔をしてそれを頬張っていた。


ちなみに自分はチーズが苦手だ。あの独特のツンとくる香りが苦手。食べてみてと言われるが、いまだに魅力がわからない。


「美味しいのに・・・。」


と、残念そうに、自分の分まで彼女は美味しそうに食べる。


そんな自分は、彼女の顔が見たくて部屋にチーズの匂いを充満させる。お菓子を出された犬のようにまずは鼻だけを部屋の外に出す彼女。匂いが確認できたら、パジャマで、髪はボサボサの状態で部屋から出てくる。


「服装整えてから。」


彼女に自分は告げる。そんな自分に口を尖らせて、渋々洗面台で、着替え、髪を整える。


綺麗な姿で、彼女はいつもの席に自分と向かい合って座る。彼女の目の前にチーズを使った料理を置くと、わかりやすく目を輝かせてくれる。手を合わせてしっかりいただきます。彼女はわかりやすくご機嫌だ。この顔が見たくて、匂いを我慢している部分しか自分にはない。


「そうだ」


自分は思い出したように、彼女に一言。


「結婚しよっか。」




何度も読んだからか、本はくたびれていた。好きで何度も読んだからかな。今の自分と少し重なる部分があって、最初読んだ頃とはちょっと違った感じだった。


お風呂が沸いたみたいで、お母さんが私を呼んでくれた。


「疲れてるでしょ?」


そういうお母さんの顔は少し赤みがかっていた。


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