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第49話 二人の決意

前話のあらすじ!!


・アリスとイリスの魔法発動??

・春樹たちの連携発動!!

・何か来る!

 不気味な気配が辺りを覆う。それは雰囲気というだけには留まらず、可視化され、オーラのようなものがスライムの周辺に漂う。



 ―――なんだ?



 ―――なんなんだ?これは??



 現象としては黒竜やゴーレムと同じだ。だけど、黒竜やゴーレムの時とは違う。




 似ているけど違う。




 そのオーラは魔力のような、そうでないような……。だけど、普通の魔力とは明らかに違う物。それがスライムに吸収される。すると……



「なっ!?」



 その場からスライムが消えた。



 直後。



 ―――ドンッ!



 という衝撃が俺を襲う。



 なんだ!?



 その衝撃に大きく後退する。



 《感知》のスキルを持っているから攻撃が来ればそれを感じ取れるけど、今回は《感知》のスキルが発動しなかった。



 どういうことだ?なんの攻撃だ?



 辺りを見回すがスライムの姿が見えない。



 これは……透明化、か?



 どうする?どんなスキルを再現する?



「くっ!」



「きゃっ!」



 再現する暇もなくスライムからの攻撃がやってくる。その攻撃は俺だけでなくルナにも飛んできていた。




 同時!?



 くっそ!



「ルナ!!あのスライムの位置を感知出来るか!?」



「分からない!感知できない!」



 ルナもこの状況に困惑しているようだ。



(なに?この感じ……この感じ、前もどこかで)



 今まで感知出来ていたスライムからの攻撃や存在が感知できない。何も感じない。まるでそこに居ないような、そんな感じがルナを襲う。



「とにかくこの状況をどうにかしないと……」



 必死にこの状況を打開しようとはするものの、なにせ相手の居場所が全く分からないのだ。スキルを放とうにも不発に終わるし、不発に終わってしまった分だけスライムからの攻撃に対応できずに逆にこちらが攻撃を受けてしまう。




 それは誰がどう見てもモンスターに蹂躙されているような場面だった。






「春樹くん!?ルナ!?」



 唯香が咄嗟に春樹の名前を口にするぐらい二人は追い込まれていた。唯香のすぐ近くにはアリスとイリスもいるのだが、この二人は唯香の「春樹くん」呼びに反応することなく目の前の光景をただ見ていた。



 いや、目の前の光景が衝撃的で唯香の発言が耳に入らなかったんだろう。



 なにせさっきまではあのスライムを完璧な連携で追いつめていたのに今は敗色濃厚な戦いになっている。



 唯香もサポートをしているが見えない相手にどうすることも出来ていない。



 ―――やばい……このままじゃ、負ける。



 そう思ったとき、



((え?))



 アリスとイリスの二人が同時にある違和感を感じた。



 違和感。というにはあまりにも小さいもの。でも、確実に感じた。



(今のは……)



(魔力の流れ……?)



 ほんの少し。本当に少しだが、魔力が不自然に流れている場所がある。



 それを感じたのは本当に偶然。幼い頃から二人で魔法を使う練習をし、お互いの魔力の流れを感じていたからこそ、その小さな変化に気が付いたのだ。



「イリス……今のは」



「アリスも気が付いた?」



 恐らく。



 いや、きっとそうなんだろう。



 不自然に魔力が流れている場所。そこにあのスライムがいる。



 思えばあのスライムが透明化した時に感じたのも魔力に似たものだった。



 だったら……。



「ねぇ、イリス。私たちならあのスライムの居場所を探り当てることができるかもしれない」



「それはそうだけど。でも……あんな小さな魔力、少しでも集中を切らしたら」



 イリスが言っていることはアリスも分かっている。二人が感じたのはあまりにも小さな魔力の流れ。普通にしていればまず気が付くことのないほどのものだからだ。



「分かってる。だけど……やらないと!やらないといけないじゃない!じゃないと私たちは何のためにここに来たの!?今のままじゃ、ただ足を引っ張っているだけ!!それじゃ、いけないの!!分かるでしょ!!」



「それは……分かるけど」



「じゃあ、やる!!絶対にやり遂げる!!私たちは勝つ!!勝って今以上に強くなる!!」



 アリスが立ち上がり高々とそう宣言する。こういう場面で気合を入れ、奮い立たせてくれるのはいつだってアリスだ。だからこそイリスは「そうね」と微笑みながらアリスと同じように立ち上がる。



「やるよ!アリス!」



「うん!いくよ!イリス!」



 二人は再び手を取り合う。









「くっ!!」



 あのスライムが透明化の能力を使用してから俺とルナは防戦一方だ。今は《盾術》のスキルで防御できているけど、いつ防御を突破されるか分からない。



 ―――くっそ!!



【スキル《感知》を解除します】


【妄想再現の条件が達成しました】


【スキル《索敵》を再現します】



 ダメだ。スライムの気配が感じられない。



【スキル《索敵》を解除します】


【妄想再現の条件が達成しました】


【スキル《看破》を再現します】



 これもダメだ。全くスライムの存在を確認できない。




【スキル《魔法剣術》を解除します】


【妄想再現の条件が達成しました】


【スキル《感知》を再現します】



 《感知》と《看破》二つのスキルではどうだ??




 ……ダメだ。



 スライムの居場所が分からない。



 どうする?どうやってスライムの居場所を特定する?どんなスキルを使う?



 思考を巡らせるが、答えが見つからない。



 ―――どうする?―――どうする?―――どうする?



 俺が焦り始めた時、背後で再び大きな魔力を感じた。



(アリスとイリス?何をする気だ?)



 二人の足元に再び現れる魔法陣。だが、途中で魔法陣が止まる。一回目の時の半分ほどの大きさだ。



「…………っ!!ハル!斜め前45度の角度。太い大きな木の手前にあのスライムがいる!!」



「っ!?」



 突然アリスからそんな声が上がった。



 なんだ?アリスはあのスライムを感知することが出来るのか!?



 アリスの顔を見ると真剣そのもの。嘘をついているようには見えない。俺はアリスの言葉を信じてその場所に《剣王術》スキルの《絶空》を放つ。



 ―――ゴンッ!!



 という確かな手ごたえを黒竜の剣を通じて手に感じた。



(攻撃が当たった!?)



 そう思ったとき、俺の体を衝撃が襲う。



「ぐっ!!」



 スライムからの攻撃だ。思わず後ろに後退。だけどすぐに唯香が回復してくれたから痛みは一瞬だった。



「アリスとイリスはあのスライムの居場所が分かるのか?」



「うん。ほんの少しだけどあのスライムから魔力が流れてるの」



「それを感じ取れてはいるんだけど、本当に少しだから100%分かるっていうわけじゃない」



 だとしてもだ。それでもかなり大きい。あのスライムへの突破口が見えた。



「よし!あのスライムの位置を特定出来たら俺とルナに報告してくれ!分からない場合は分からないって言ってくれればいいよ」



「うん!」



「分かった!」



 後はあのスライムに有効な攻撃手段を見つけることが出来れば。



 俺は再び妄想に耽る。




 イメージするのは聖なる魔法。



 聖なる技。



 光りの属性に分類され、ゾンビなどのアンデッド系や悪魔などに絶大な効力を発揮する魔法。



 聖属性の魔法だ。



 その中でも最上位に位置するスキル。



【スキル《看破》を解除します】


【妄想再現の条件が達成しました】


【スキル《神聖》を再現します】



 さらに少しでも威力を底上げするために補助系のスキルも再現。



【スキル《剣術攻撃威力増加》を解除します】


【妄想再現の条件が達成しました】


【スキル《悪魔特化》を再現します】



 《悪魔特化》がこのスライムに効くかどうかは分からないけど試してみる価値はある。



「ルナ!正面10m先にスライムがいるわ!」



「了解です!!」



 イリスからの報告を聞き、ルナが動く。《鉤爪》スキルの《激突》で攻撃。それが当たったのかその余波で後ろにあった草木が揺れる。



「後ろ、5mほど後退!……あっ!待って!右に移動した!ハルの左、12m先のところ!」



「了解」!!」



 今度はアリスから報告が来る。その報告を俺は受け左に向き直り、《神聖》の上位魔法である《極聖》を12mほど先に目掛けて放つ。



 地面に魔法陣が形成。さらに上空にも。



 次の瞬間―――



 上空の魔法陣から強い光が地面の魔法陣目掛けて放たれる。



 聖なる光を以て魔を滅ぼす《極聖》。



 始めは弱い魔法を使う……なんてことはしない。最初から上位の魔法を使って一気に倒す!



 スライムにこの攻撃が効いてくれ!



 と心の中で願う。



 その結果が現れたのは魔法が発動してからしばらくしてだった。



「っ!?」



「透明化が……」



「解けた……?」



 そう。イリスが言ったように今まで姿形が完全に消えていたスライムが現れたのだ。



 だが、《極聖》の攻撃が終了するのと同時にまたしても透明化を使いスライムが姿を消した。



「アリス!イリス!どこに行ったか分かるか?」



「…………ごめん。今は分からない」



「了解。居場所が分かったらすぐに報告してくれ!」



 よし!いける!



 これであのスライムに《聖属性魔法》が有効なことが分かった。



 勝てる!!



 確かな確信をもって俺は次の攻撃に備えた。
















「アリス!集中して!」



「分かってるわよ!!」



 少しでも油断すると一気に崩れてしまう。それほどに緻密な魔力制御を行わなければならない。



「大丈夫!集中して今の状態を維持すれば大丈夫だよ!!」



「うん!」



 焦りや戸惑いを覚えた時、冷静に判断して伝えるのはイリスの役割だ。それを理解しているからこそアリスも素直にその指示に従う。



 それにしても、今の状態を維持するのにこれだけ苦労しているんだ。これを()()()()()にはどれほど大変なのか。アリスとイリスはそれを改めて思い知った。



 だけど今はそのことを頭から外し、自分たちの役目に全力で挑む。



 透明化したスライムを見つけ出し、伝える。そのために全神経を集中し、魔力をコントロールする。



 二人の魔力が合わさったことにより魔力の流れに敏感になった感覚に微かな違和感を感じる。



 その違和感を感じた場所に流れる不穏な魔力。それをアリスとイリスは感じ取った。



「いた!!ハルの真後ろ!!15m先!」



 イリスが春樹にスライムの居場所を伝える。それを聞き春樹が《神聖》スキルで攻撃。アリスとイリスから見てもかなりのダメージがスライムに蓄積されているように感じる。



 ―――いける!!!



 そう思った。




 その時、





 不穏な魔力がアリスとイリス二人のいるところに急激に近づいてきているのを二人が感じ取る。



「っ!?」



 二人はそれを感じ取ったが、あまりにも不気味なその魔力に声を出すことが出来ない。



 アリスとイリスの前に来た瞬間、その姿が実体化する。恐らく、春樹の攻撃を受けて透明化の限界が来たんだろう。



 だけど、それが逆に二人の少女に恐怖を抱かせる。



 漆黒……とは違う、不気味でどす黒い体。赤く光る気味の悪い大量の目。そして大きく裂けた口に鋭い牙。



 あまりに気味の悪く、冒涜的なその姿。さらに口の奥にはなにやら悍ましい光る丸いものが見えた。



 二人はその姿を間近で見て、足がすくみ動けない。逃げることが出来ない。



「アリス!イリス!逃げて!!」



 唯香が叫ぶが二人は動けない。



「いや……」



 そのスライムの攻撃の矛先はアリスに向いており、それを理解したのかアリスが弱々しい声を上げ、崩れ落ちる。



 すぐそばまで迫る――――死。



 だが、その時。



「間に合え!!!」



 春樹が叫ぶ。そして《神聖》の最上位魔法《天照(あまてらす)》を使用。スライムを包み込むように上下左右に巨大な魔法陣が生成される。



 そしてスライムの周囲には聖なる光が漂う。



 その光を見た瞬間、スライムが後ずさりするような動きを見せた。




 ―――逃がさない!!ここで仕留める!!




「《エクストラダメージ》!!!」



 唯香の《エクストラダメージ》も加わり、とんでもない光が周囲に充ち溢れる。



 いけ!



【……………………】



 いけ!!



【……………………】



 いけ!!!




【………………妄想再現の条件が達成しました………………】



【ユニークスキル《英雄昇華》を再現します】




 スライムを十字を(かたど)った聖なる光が貫く。



 その後、その光は天に帰るが如く、空に消えてなくなった。



 《天照》を喰らったスライムは、その後、その場に崩れ去る……ことはなく、消えていった。

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