96
「むぅ」
ロジ・マジの目の前にいたのは、一羽のカラスであった。
突然、外から飛び込んできた黒い侵入者は、弾丸のような勢いで、ロジ・マジ目指してまっしぐらに進み、彼のの結界にくちばしを突き立てた。
カラスは、全身に結界破りの呪符が貼られていたため、この様な芸当が可能だったのだ。
呪符が光を発すると同時に、結界の光はどんどん弱まっていった。
「……どうやら余計な邪魔が入ったね」
上空を見あげながら、アリッサが舌打ちをする。
「ああっ!!」
空を見ながらブランが、悲鳴をあげる。
雪妖のつららの攻撃が止んだと思った途端に、ロジ・マジが、力なく落下してきたのだ。
そのまま地面に激突するかと思われたが、アリッサが両手の指をならすと、すんでのところで老魔導師の体はピタリと止まり、そのままゆっくりと下に降りていった。
「ロジ・マジさん!!」
あわててかけよったブランであったが、彼の目から見ても、もはやロジ・マジは手の施しようがなかった。
肩、脇腹、太腿はつららによって串刺されており、他にもあちこち鋭い切り傷がつき、とめどなく血が流れていた。
「アリッサさん!!ロジ・マジさんが……」
ブランが、後ろからのしのしと歩いて来たアリッサに悲痛な叫びをあげる。
アリッサは、懐から布袋を取り出すと、中に入っていた粉を荒っぽくロジ・マジにぶちまけた。
「アリッサさん??」
「血止めの薬だよ。だが、はっきり言って気休めだ。もう、あたしらにできることはないね」
「そんな……ブンさん!!」
『……………』
ドクロの瞳は軽くまたたいたたけで、何も語らない。
その時である。
「いやいやいや。意表をつかれてしもうた」
驚くべきことに、瀕死のはずのロジ・マジが杖につかまりながら、立ち上がったのだ!!




