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ガチャリ…
ミミによって、扉に差し込まれた鍵が、重厚な響きとともに横に回される。
少女は、ガンダルガの肩で目覚めて以降、ほとんど表情を変える事なく、一行に付き従っている。
相手が老人達ならいざ知らず、親子の愛憎などに縁がないまま育ってきたブランには、今のミミに一体どのような言葉をかければよいのか、思いつかなかった。
「さあ、すまんがそのまま中に入っとくれ」
そんなミミの様子にはお構いなしに、アリッサが彼女を促す。
ギィィィ………
ミミが、金属製の扉を少しずつ開いたその時!!
「うわぁぁぁ!!!」
扉の隙間から、ものすごい勢いで白い煙の様なものが吹き出してきたため、ブランが悲鳴をあげる。
「おのれ、罠かぁ!!」
いきり立って剣を抜こうとするガンダルガへ、アリッサの声が飛ぶ。
「あわてんじゃないよクソジジイ。こいつはただの湯気さ」
「湯気??」
言われてみれば、もうもうとこちら側に流れ込んでくるものの正体は、確かにあたたかな湯気のようであった。
「また温泉……??」
ミミ達に続き、メガネを拭きながら扉の中に入ったブランの目に飛び込んできたのは「これぞ温泉」と言うべきベタな光景であった。
広い室内には、まるで露天風呂のような岩風呂がいくも点在しており、特に中央にあるものは、ちょっとしたプールほどの大きさであった。
どの温泉も、緑色の湯で満たされており、湯気にまじりほのかなよい香りが鼻に飛び込んでくる。
「おっ、あれは何じゃ??」
ガンダルガが、何か見つけた様子で中央の湯船の方へと駆け出した。




