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「なんじゃ、この扉は」
ガンダルガがいぶかしげな声をあげる。
ブラン達が入った部屋には、合わせて3つの扉があった。
ひとつは言わずと知れた、彼らが入ってきた湯〜ゲルンへと続く扉であり、もうひとつは、部屋の突き当たりに見える緑色の、おそらくは3つ目の鍵を使い開けるべき扉である。
ガンダルガが注視したのは、いまひとつ、部屋の右手側の壁にある木製の扉であった。
それ自体は、それこそどこにでもあるような、幾分古めかしいつくりの扉であったが、一行の目を引いたのは、そこにほどこされていた呪的な印の数々であった。
扉とその周辺には、これでもかというくらいに護符らしきものがびっしりと貼りつけられており、さらにその上には、大小さまざま魔法陣が重なり合いながら、ところせましと描かれていた。
「こいつは…」
アリッサが、彼女にしては珍しく、扉の方へと早足で近づく。
「また随分と強力な結界をこしらえたもんだ。上級魔族でもここを抜けるのは無理だろうねぇ」
「なんと!!」
アリッサの言葉に、ガンダルガとフェルナンドが驚きの表情を見せる。
「今の時代にこんな芸当ができるやつぁはほとんどいない。こいつをつくったのは、おそらくー」
「温泉魔導師のロジ・マジ!!」
思わず口をはさんだブランに、アリッサが軽くうなづいた。
「………あの、確か元々の伝承だと、ヴィシュメイガが封じられたのは、この迷宮の奥だったんですよね??」
老魔法使いが素直にうなづいた事に勇気を得たブランは、ここに来るまでの道々、疑問に感じていたことをアリッサにぶつけてみることにした。
「でも、あの魔物が復活したのは、街の中心のロジ・マジ像の下からだった……これって、長い年月の間に、言い伝えが歪んでしまったと言う事なんでしょうか」
「ふっ」
アリッサは、ブランの問いに軽く鼻を鳴らすとニヤリと笑ってみせた。
「そこは、あたしもずっと腑に落ちてなかったとこさ」
そう言うと彼女は、クルリと向きを変え、突き当たりにある緑色の扉をじっと見つめた。
「まあ、おそらく答えは、あの扉の向こうにあるんだろうよ」




