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「狂霊を鎮めしは、かのロジ・マジ……ユガルタ深く沈む闇……地上に祀られしは光……すべてはミズル版画の如く……」
「何だい、ミズル版画ってのは??」
ブランが驚いた事に、芸術におよそ関心などないであろうアリッサが、意外な部分に質問をぶつけた。
「ああ、紙版画の技法のひとつだな、白と黒のシンプルなやつでね。以前は、ロクスやスラトニアの土産物屋でよく見かけたが、最近は廃れてしまったようだ」
ポッテヌが元行商人らしい博識ぶりを披露した。
「なるほどね…」
「当時、ヴィシュメイガ退治にまつわる紙版画が出回っていた……と、いったとこかな??」
ポッテヌの問いかけに、フェルナンドは、今度は軽く首をかしげただけであった。
「おいっ、お主ら!!話題がそれとるぞ!!とっとと作戦会議に戻らんか!!」
業を煮やしたガンダルガがいきなり大声を上げたため、近くのソファーにすわる人々が、驚いてこちらを振り向く。
「ガンダルガさん、わかりましたから落ち着いてください」
「なんじゃ小僧、わしに説教たれるつもりか!!」
「ちょっ!!そんなつもりは全然―」
「いいよブラン。説教ついでに、このクソジジイに一発食らわしてやんな」
「ああっ!!アリッサさん、余計な事を言わないでください」
「なんじゃと、アリババ〜!!」
老戦士と老魔法使いのおなじみのケンカは、しかし、意外な人物の声によって中断された。
「あのっ……すみません」
振り返った一同の目に入ったのは、ガロン村長の娘、ミミであった。
必死で大きい声を出したらしく、息を切らせていた少女は、皆からの視線が一気に集まったことに動揺し、顔を赤らめた。
「あの……おじいちゃんから、みなさんに……お願いしたいことがあるそうなので……すみませんが、こちらへ来ていただけますか??」




