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「今日中に森の北側の伐採がすべて終わるので、今後は皆さんが歩いてきた南側に作業を移すんです。明日は手始めに、そこのほこらを打ち壊します。つまり、ほこらを見学できるのは今日が最後!!いや、実に運がいい」
ガロン村長は、ブラン達に「最後にほこらを見た観光客」という付加価値をアピールする事によって、この殺風景に変わり果てた史跡を見せられた事を帳消しにする作戦のようだ。
「そうですね……まあ、ここに立ちっぱなしもなんですし、そろそろほこらの見学に移りましょうか」
ネルガがそのように皆に促した時、不意に一行の後ろからしわがれた声が響いた。
「ガロン!!これは一体どういうことじゃ!!」
驚いたブランが振り返ると、そこには四人の老人と一人の少女が立っていた。
「ガロンよ、この森の有り様について説明してもらおうではないか」
先頭にいた老人が、少女に体を支えられながら一歩前へと進み出た。どうやら、どこか体を悪くしているようだ。
薄い紫色の長衣をはおり、手に杖を持ったそのリーダー格らしき老人の後ろには、同じ様に腰の曲がった三人の老人がガロン村長の方を睨みすえていた。
年は四人とも七十過ぎであろうか。
同じ老人の集まりであっても、彼らは『太陽の家』の元冒険者達に比べると、ずいぶんと落ち着いた雰囲気を漂わせていた。
もっともそれは、「枯れている」と言いかえることもできたのだが。
「お義父さん!!このような所までこられるとは。ご無理はなさらないでください」
言葉とは裏腹に、ガロンの顔には冷笑が浮かんでいた。
そして、それまで後ろに控えていた二人の傭兵が、威圧するかように一歩前に進み出て、村長の両脇に立ったことにブランは気づいた。
「長老会の意向はあらかじめ伝えてあったはずじゃ!!それをよもやここまで無視しようとは!!」
紫の長衣の老人は、興奮したようすでガロンに言葉をぶつけた。
老人にとっては、ここまで来ること自体が相当難儀だったようで、ゼイゼイと肩で息をするたびに、かたわらの少女が心配そうに背中をさすっている。
しかし、ガロン村長は、余裕の笑みを浮かべ、目の前で必死な姿をさらす老人に穏やかに話しかけた。
「確かに村議会の規定には『長老会の意向を尊重すること』という一文がありますが、それは議会が老人方に絶対服従するという意味ではありませんよ。今時、それはあまりにも時代錯誤というものでしょう」
ロクス王国では、国王と貴族達による王制がしかれていたが、地方都市や村々には議会を置くことが許されており、ある程度の権限を与えられていた。
「何をぬけぬけと!!村議会を牛耳り、私物化しておきながら、よくもそのようなことが!!」
老人はさらに声を張り上げて、ガロンを非難した。その、はげ上がった額には汗が浮かび、後頭部から肩まで伸びた白髪は乱れて、さながら老いた落ち武者のような様相を呈していた。




