グランベルヘイムへ
そうして過ごすうちに、やがて卒業の時を迎えました。
修道院に行く私は、これで皆さまともお別れです。
もうお会いすることもないのでしょう。
ルパート様が私にお話ししたいことがあるとおっしゃいます。
大変お世話になったルパート様を、私は慕うようになりました。
これが最後の会話になるのでしょう。大切な思い出です。
「母国の家族の承諾を取るのに時間がかかってしまった。こんな卒業間際で申し訳ない。修道院には行かずに、私と一緒にグランベルヘイム国へ来てくれないだろうか。私の伴侶として」
「え? 私でいいのですか? 私は『死神令嬢』と呼ばれる女ですよ」
悪評のある私で良いのでしょうか。ルパート様のご迷惑にならないでしょうか。
「あなたがいいんだ。心ないうわさにも毅然としている。そういうあなたの凛とした姿が好きだ」
私は嬉しさと驚きで頭が真っ白になってしまいました。
でもじわじわと嬉しさが増してきます。
「一つ隠していたことがある。事情があるとはいえ、申し訳なく思う。
実は、私はグランベルへイム国の王子なんだ。身分を隠して留学していた。
でもあなたなら問題なく王子妃も務まると思う。私はあなたを見てきて、その誠実さや忍耐強さ、判断力に信頼を置いている。あなたなら良い王子妃になれる。どうか一緒に来てもらえないだろうか」
「嬉しいです! 私のような者でよければ、どうぞ連れて行ってください。グランベルへイムに」
この後の両親の説得は大変でした。
修道院に送ろうとしていた娘が、隣国の王子妃になるのです。
母は驚きのあまり卒倒し、父は何度も間違いではないかと確認する始末。
ルパート様が我が家へ来てくださり、説明してやっと承諾を得ました。
私がグランベルへイムに嫁ぐ前に、襲撃の黒幕が判明しました。
シュタイン侯爵家だったのです。
実行役は皆死んでおりましたが、依頼のやりとりが残されていて判明したそうです。
エリザベス様がけがをして、足に後遺症が出たことへの意趣返しでした。
ギフトによるものだとは知らず、私がエリザベス様に危害を加えたと思い込んでの犯行でした。
父があの家は執念深いと言っていたのは、あながち杞憂ではなかったのです。
こうして私は、グランベルへイムにやって来ました。
いろいろありましたが、無事王子妃としてグランベルへイムで過ごしています。
暗殺未遂事件もありましたが、ギフトのおかげで無傷です。
王家としては、暗殺される恐れのない王子妃はありがたいようです。
ルパート様の愛情に包まれ、王子妃としての責務を果たし、認められるようになってきました。
ただ『死神王子妃』と呼ばれるのは、もう勘弁してほしいのです。




