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3-2

ミハイルにある疑問は、おそらく用兵家としてすでに戦闘シュミレーションをしたからこそ発せられているのだろう。

「ないなって、俺に言われても」

「いや、ないんだ」


 計算間違いをしているはずがないのに、答えが違っていると指摘されたような表情で、ミハイルはアスターを見た。

 ミハイルの琥珀の瞳が疑問と不審でゆれている。


 余裕ある表情に、怜悧な琥珀色の目にゆれる自信を垣間見て、部下たちは安心する。


 存在だけで、安心感をもたらす人物となっている。しかし、ミハイルは、部下たちから思われているような余裕で大人な、ゆったりとした優しい人柄ではない。繊細でいて、怜悧な機知に富んだ人物だ。余裕があるのではなく、自然体でいるとそう見えるらしい。


アスターの後方で勝つための軌道修正をする役目を持っている。


 綿密な計画性を持ちながら柔軟に対処するため、常に対策を練っているミハイルは、余裕とはかけ離れたところにいる。その集中力と計算力は、ブッケル国の盤上の騎兵ゲームで出場以来、五年連続で優勝しているほどのものだ。本人いわく、娯楽は気楽にやれるから楽しいんだそうだ。


 アスターは金髪に碧眼で、外見は優雅だが、毅然とした態度を常にしている。

 冷静な表情やぴしりとした姿勢で誤解されがちだが、気さくで大らかな性格を持ち大将閣下と親しまれている。人格者と言っていいだろう。


 全軍を指揮をするアスターは、ミハイルの戦略を把握して描いた後、戦術を駆使して戦場を展開させる。その姿は勇猛果敢、敵を寄付けない無敵の大将だ。


 陸軍上級大将として、あらゆる人間とかかわることになる位置にして、誰からも好かれている。自分で希望して手に入れたのではなく、知らないうちに上級大将になっていたというエピソードがあるほどだ。

 アスターは近づきがたい印象だが、人柄はいたって素朴で優しい。


 ふたりとも外見とは正反対な性格だ。


「戦のパターンを何度か分析してみた。我らは、対『軍』との戦などはしたことがない。せいぜい大規模な山賊どもの侵略を防ぎ、討伐してきただけだ。しかも民間人を手に掛けるなどできん」

「うむ」


 ミハイルの難しそうな顔に、アスターも徐々に混乱が戻ってきた。

「なぜ、侵略戦争などやらなければならないのだ?」


 国王からの指令で、閣下の言うことは絶対だが、しかし、ブッケル国は三州からなっている。国王が間違っているならば、正した方がいいのではないだろうか。


飢餓になっているわけでもない。


 シンサー国が攻め入ってきているわけでもない。


 領地をふやさねばならないほど、狭い国でもないのだ。


 しかも、シンサー国を手に入れたとして、行き来には大変な努力が必要になる。山が国と国を分けてでもいるようにそびえ、山のないところは海が大陸を分けてしまっている。


「それが一番不明だ。元帥閣下は、少なくとも納得して私たちに伝えているようには見えなかった。何かあるな」

 見えないものを見るようにミハイルが虚空の一点を見つめている。おそらく集中して考えているのだ。


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