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星命回帰〜星が紡ぐ未来〜  作者: ゆき太郎
第一章〜星が紡ぐ未来〜
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【第17話】星が紡ぐ未来

ノクトはテーブルの上で料理を頬張り、イヴはベッドに腰掛けたまま静かに皿をつつく。


しばらくは料理を味わう時間だけが流れていた。


やがて、ノクトが口を開く。


「ねえ、せっかく一緒にご飯を食べてるんだからさ。もっとこう、和気あいあいと……」


「十分和やかだと思うけど。」


光瑠が答える。


「どこが?」


「誰も死にそうになってない。」


「基準が低すぎるよ!」


光瑠は、初めて三人で食卓を囲んだ夜を思い出す。


あの夜と変わらないやり取りが、たまらなく嬉しかった。


自然と笑みがこぼれる。


「でもヒカル、これ全部本当に美味しいよ!」


「これは誇ってもいい特技だね。」


「イヴもそう思うでしょ?」


イヴはもう一口、料理を口へ運ぶ。


ゆっくりと味わうように飲み込むと、小さく頷いた。


「ええ。」


「……美味しい。」


光瑠の表情がぱっと明るくなる。


「そっか。」


「良かった! 口に合って!」


ノクトは食べる手を止めずに続ける。


「特にこれ! この甘くて黄色いヤツ!」


「こんな美味しいもの食べたの初めてだよ。」


光瑠は少し照れくさそうに笑った。


「それ、スイートポテトっていうんだ。」


「すいーとぽてと?」


ノクトは首を傾げる。


「ああ。俺がいた世界のお菓子なんだ。」


「本当は『旅人の隠れ家』の看板メニューを再現したかったんだけど、どうしても同じ味にならなくて。」


「だから代わりに、昔から得意だったこれを作ってみた。


「妹の有理栖が……大好きだったんだ。」


ノクトはすぐには返事をしなかった。


どこか考え込むように目を伏せる。


やがて静かに顔を上げた。


「……そうだったんだ。」


ふっと笑みを浮かべ、イヴへ視線を向ける。


「イヴはこれ食べた?」


「すごく美味しいよ!」


イヴは首を横に振り、ノクトの差し出したスイートポテトを手に取った。


そして、小さく一口頬張った。


ほくほくとした食感。


優しい甘さが口いっぱいに広がる。


「……!」


イヴは思わず動きを止めた。


フォークを咥えたまま、その目だけがきらきらと輝いている。


「その顔。」


ノクトはくすっと笑う。


「気に入ったみたいだね。」


光瑠は少しだけ言い淀む。


「……美味しかった?」


イヴは小さく頷く。


「……すごく。」


そう言うと、イヴはもう一口、スイートポテトを口へ運んだ。


――


食事を終え、三人は穏やかな時間を過ごしていた。


窓の外では、星夜祭の賑わいが今も街を包んでいる。


光瑠はどこか嬉しそうに食器を片付けていた。


ノクトは窓の外を静かに見つめている。


やがて洗い物を終えた光瑠が、二人のもとへ戻ってきた。


ノクトは窓の外から目を離し、光瑠へ向き直った。


「ヒカル。」


「一つ、話したいことがある。」


光瑠は首を傾げる。


「君の、妹についてだ。」


その一言に、光瑠の表情が強張った。


ゆっくりと椅子へ腰を下ろし、ノクトを真っ直ぐ見つめる。


「……聞かせてくれ。」


ノクトは小さく頷く。


「昨日、君の魔力を借りた時なんだけど。」


「最初は驚いたよ。」


「君の魔力に直接触れて分かった。」


「君の魔力量は、決して多くない。」


光瑠は苦笑する。


「……やっぱりそうなのか。」


ノクトは静かに首を横へ振った。


「問題はそこじゃない。」


「君の中には、魔力とは別の力が流れていた。」


「別の……力?」


光瑠は首を傾げる。


「僕は星命魔法を使う。」


「星命魔法は、自分の魔力を媒介にして、この星を巡る『星命力』を借りる魔法なんだ。」


「だからこそ分かる。」


ノクトは真っ直ぐ光瑠を見つめた。


「君の中を流れていたのは、魔力だけじゃない。」


「星命力が、君の中にも流れていた。」


イヴは光瑠をじっと見つめる。


ノクトは静かに続ける。


「本来、星命力は人の中に宿るものじゃない。」


「星を巡る力だからね。」


一度言葉を切る。


「でも。」


「君の中には、それが確かにあった。」


「だから、その力を借りて星命魔法を使ったわけさ。」


ノクトは苦笑する。


「まさか、あそこまでの威力になるとは思わなかったけどね。」


「制御するだけで、僕の残っていた魔力をほとんど使い切ってしまったくらいだ。」


「そして、魔法を放った、その瞬間だった。」


「君の星命力と深く繋がった時、もう一つの気配を感じた。」


「その気配を辿っていくと――」


ノクトは光瑠の胸元へ視線を向ける。


「君のそのネックレスに行き着いたんだ。」


光瑠は無意識に首元の星のネックレスを握りしめる。


「そのネックレス、妹さんとお揃いだって言ってたよね。」


「ここからは僕の推測なんだけど。」


「君の星命力は、そのネックレスを通してどこかと繋がっていた。」


「そして僕が感じたもう一つの気配も、その繋がりの先にあった。」


ノクトは光瑠を真っ直ぐ見つめる。


「その気配は、今も確かにこの星のどこかに存在している。」


「もし、その相手も君と同じように星命力を宿しているとしたら――」


一拍置いて、静かに続ける。


「その気配は、君の妹だ。」


光瑠は震える手でネックレスを握り締めた。


「有理栖……」


本当は、有理栖はこの世界のどこにも存在しないのではないか。


この世界へ来てしまったのは、自分だけなのではないか。


そんな不安が、ずっと胸の奥にあった。


でも――。


ノクトの言葉が、その不安を静かに打ち消していく。


星命力。


星を巡るその力が、自分と有理栖を繋いでいるのかもしれない。


いや。


有理栖は、この世界のどこかにいる。


必ず。


光瑠は窓辺へと歩み寄り、窓の外を見上げる。


外では、星夜祭が今も続いていた。


祭りの灯りが街を彩り、人々の笑い声が夜風に乗って届いてくる。


それでも。


街の灯りにも負けず、夜空の星々は変わらぬ輝きを放っていた。


光瑠はそっと星のネックレスを握りしめた。


――必ず。


必ず、有理栖を見つけ出す。


そう、夜空に輝く星々へ誓った。


イヴとノクトは、何も言わなかった。


ただ静かに、その背中を見つめていた。


夜空の星々は、その誓いを見届けるように、静かに輝き続けていた。


──第一章 完──

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