“空母ダンジョン”も2層から敵の数が増えて来る件
目潰しを喰らったオーク兵を、ルルンバちゃんの魔銃が順に始末して行く。その後方からも、いつになく手厚い支援が振る舞われこちらのペースは揺るぎない。
ただし、例のバルーンが観覧車の方向から半ダースほど漂って来て少し不気味。それからジェットコースターからは、コウモリ型の獣人が同じく半ダースほど。
ハスキー達は、銃持ちの兵士達に不用意に近付かず、遠隔スキルで残ったオーク兵を始末する。護人は後方の岩国チームに声を掛け、空中の敵の処理に力を注ぐ。
それを軟体幼児がお手伝い、ご機嫌に魔法を放ってバルーンを撃ち落とす。すると、派手に爆破する風船に混じって、怪しげな色の粉末を放つバルーンが幾つか。
「うわっ、あれって見るからに毒っぽいねぇ……爆発したり毒が詰まってたり、風船はなるべくこっちに近付けない方がいいね、叔父さんっ。
雰囲気はファンタジーなのに、意外と殺意が高いよねこのダンジョン」
「そうだな、今の所は対処出来ているから焦る必要はないけど。ワイバーンはともかく、竜も出て来るとなると深い層には注意が必要だな。
おっと、コウモリ型の獣人も始末は終わったかな?」
「姫香ちゃん達も、無事に地上部隊の制圧が終わったみたいですね。ハスキー達にも怪我はないみたい、でもMPは結構消耗してる感じですね。
2層に渡る前に、ペット達にはMP休憩が必要かな?」
そんな長女の言葉に、銃や爆弾相手に接近戦はダメだよねと末妹も同意する。護人の肩の上のムームーちゃんも、遠隔なら任せるデシといつになく張り切っている。
どうやら昨日と違って、保護者が近くにいるので自然とヤル気も上昇しているっぽい。まだまだお子ちゃまな軟体幼児なので、それもまぁ仕方がない。
程々にねと、張り切り過ぎを心配する護人に背後の『ヘブンズドア』も生暖かい視線。何と言うか、風変わり過ぎる同伴チームに調子が狂っているのかも。
それでもこのダンジョン、銃持ちの敵や飛行タイプも多いので、岩国チームも活躍出来そう。そう思ってリーダーの鈴木が、2層以降も同伴しようかと護人に提案を持ち掛ける。
ところが末妹は、2チームだと分け前が減るじゃんと生意気盛りな反論を述べて来た。それを軽く諫める護人は、何となく疲れた表情。
それから結局、自分達のチームだけで頑張るよとの返答。それじゃあ次の層のゲートまでと、鈴木も自分の意見を強制はしない構え。
何しろ岩国チームの強さは、銃あってのモノで弾丸には当然限りがある。魔法や体力なら、エーテルを飲めば回復するが物資は有限なのだ。
こんな時代だし、弾丸の補給ルートもか細いし困ったモノである。仕舞いには、弾丸を補充するために“岩国基地ダンジョン”に潜ると言う本末転倒な顛末。
いや、地元のダンジョンの間引きはいつだって歓迎で、その点については問題はない。ただし岩国チームの稼働には、どうしても銃弾と言うコストが掛かってしまう。
リーダーの鈴木は、“氷の射手”と呼ばれる程の氷魔法の使い手なので関係は無いのだが。他のメンバーは、割と近代兵器に頼る戦い方をするので経費がかさむのだ。
そんな訳で、来栖家チームに問題が無いのならと『ヘブンズドア』は予定通りの行動に。それから通信を密にして、空母の制圧に参加すると言って戻って行った。
それを見送る子供達は、頑張ってねと愛嬌良く彼らを送り出す。米軍の残兵が残っている、空母の制圧も厄介だと分かっている模様だ。
それならば、慣れ親しんだ探索を家族で行った方が百倍楽には違いない。護人も同行チームが去って行くのを眺めながら、改めてチームに喝入れを行なう。
何しろここは、普通に竜種がオーバフローを起こす推定A級ランクなのだ。
「さて、次の層からは恐らく敵の密度は通常通りに戻るだろうから、みんな気を付けて行こう。このダンジョンは普通に竜種が出るから、攻略も大変になるだろうね。
敷地も広いし、遊具施設も多くて移動も大変そうだし」
「でも2層のゲート、もう見えてるからゲート捜しはそれ程に大変でも無いかもね、叔父さん。まぁ進んで行けば、遊具関係の仕掛けとかも出て来そうではあるよね。
どんなのが出て来るかな、楽しみだなぁ」
「さっきのバルーンとか、まだ序の口だろうねぇ……それでも楽しみってのは違うでしょ、香多奈。ルルンバちゃんも、怪しい仕掛けが出て来たらお願いね。
ツグミの方は、言わなくても分かってくれるとは思うけど」
そう口にする姫香は、同じ中衛位置のAIロボに期待してるよと声を掛ける。今回もチームの陣形は変わらずで、ハスキー達の前衛で探索に勤しむ予定。
そんな中、2号ちゃんの影に隠れていたエルヴィスが、ひょっこり顔を出してヤレヤレと言った表情を見せた。どうやら同伴していた岩国チームを、警戒して気配を消していたみたい。
意外と表情豊か(?)な知性を持つ剣の操るパペットだが、今の所は積極的な探索の手伝いはナシ。ってか、必死に気配を消して目立たないように振る舞っている。
それに気付いた香多奈が、アンタも間引きを手伝いなさいよと無茶振りな発言。そんな末妹の指示出しに、異界のお坊ちゃまは肩を竦める素振り。
本当に人間味あふれるパペットだが、果たして戦闘能力は高いのだろうか。護人としては、一応はお客様として扱ってるので無茶な事は止めて欲しい。
そもそも探索に同行させてるのも、考えて見れは変な話だ。来栖家チームはある意味何でもアリなので、今更魔剣持ちパペットが混じっても違和感のない不思議。
そんな良く分からない議論をしながら、一行はハスキー達を先頭に次の層へのゲートを潜って行く。お次は第2層で、ここからは敵の密度も上がって来る筈。
要するに、この新造ダンジョンの探索はここからが本番とも。
「あっ、やっぱり海上の遊園地って雰囲気は変わらないんだ……色んな施設がコンパクトに纏まってて、何と言うか遊ぶには持って来いな感じだよね。
まぁ、間違っても楽しくは遊べないだろうけど」
「そうだねぇ、係員の代わりにいるのはモンスターだし……えっと、こっちのルートにはゴーレム兵が多いみたい。逆のルートには、これはゾンビかなぁ?
ああっ、奥にある施設はホラーハウスみたい」
「空にも相変わらず、飛行型のモンスターと派手なバルーンが飛んでるねっ。紗良お姉ちゃん、ひょっとして遠見のスキル使ってるの?
私も何か使いたいな……ああっ、青い鳥を使うの忘れてたっ!」
香多奈の場違いな大声に、騒ぐんじゃないわよ的な視線が家族から飛んで来た。それから紗良の発言を聞いた姫香は、ゴーレムから始末しようと前衛陣にルートの指示出しをする。
一方の末妹は、前回の探索で思い切り失念していた『青い鳥』を取り出し、何層で使おうかと真剣に思案中。これはエリアの魔素を吸い上げて、1日に1度だけ“宝箱化”を果たす超レアな魔法アイテムなのだ。
とは言え、こんなフィールド型エリアで解き放って、回収不可能な方向に飛んで行かれたら目も当てられない。ついでに深い層で使った方が、中身も良い品が出て来てくれそう。
そんな感じで悩む少女だが、前衛陣は真面目に戦闘をこなしていた。ハスキー達&茶々萌コンビは、敵に銃持ちが混じろうとも怯む様子を見せない。
この層も、アーミー装備の銃持ちオーク兵が、重歩兵のゴーレムを盾に何体か配置されていた。それらを、コロ助の《防御の陣》で防ぎながら駆逐して行く前衛陣。
もちろん、中衛陣の姫香とルルンバちゃんもそれをお手伝い。特にルルンバちゃんの遠隔攻撃は、時に盾役のゴーレムすら一撃で屠る剛腕振り。
それを眺める後衛陣は、それを応援しながら周囲の警護を怠らない。何しろ遊園地タイプのエリアなのだ、死角は多いしどこから敵が出現しても不思議ではない。
そして案の定、銃撃音だか戦闘音に反応した敵が上空から参戦を決め込んで来た。そいつ等が近付く前に倒すぞと、護人の号令で動き出す後衛陣。
遠距離攻撃でその敵に対するのは、護人とその肩の上の軟体幼児だった。ところが今回は、それに混じって飛ぶ斬撃で飛行モンスターを撃墜するパペットの姿が。
どうやら末妹の檄が効いたようで、敵の駆逐に協力を始める異界の迷子。それを見た香多奈は、凄いよとエルヴィスをヨイショする。
それを受け、明らかに気を良くしている“知性を持つ剣”は意外とチョロいのかも。とにかくそんなやり取りを交えて、2層の最初の大掛かりな戦闘は約10分後に終了の運びに。
時間が掛かったのは、やはり敵の所持する近代兵器に慎重になったせい。ドロップにもそれらが混じっており、紗良は末妹にそれには触らぬよう忠告している。
代わりにそれらの回収は、護人や長女や2号ちゃんが行なう事に。ちなみに魔石に関しても、微小と小サイズの割合が拮抗し始めている始末。
それから戦闘に参加してくれた、エルヴィスをひとしきり褒めそやす紗良と香多奈の姉妹であった。そのコンビプレーによって、異界のお坊ちゃんもヤル気急上昇。
護人も手強いダンジョン攻略に、斜め方向からの救世主の出現を得て嬉しい誤算。どうも御しやすい性格のようだし、このまま使い倒すのも悪くないかも?
そんなブラックな事を考えるのも、ここが銃弾の飛び交うエリアだからに他ならない。事故が起きない内に、前回と同様に自分と魔導ゴーレムの2トップに陣形を変更すべきかなと考えていたのだ。
そこに遠隔攻撃を備えた、強力な助っ人の登場である……地元のプロ野球球団に例えると、ライトルかランスかエルドレッドかって感じだろうか。
とにかく、これで護人も前衛へと出張しやすくなったのは確か。その辺を姫香と相談するのだが、姫香も同じ事を考えていたみたい。
話し合った結果、護人と姫香のポジションを交代する事となった。
「私も遠隔攻撃は、使い勝手の悪い風魔法しか持ってないからね。護人さんが中衛に回って、前と後ろをフォローしてくれるのが一番いいかも?
いざとなれば、ルルンバちゃんと前線にも加勢出来るもんね」
「そうだな、それじゃあしばらくこの陣形で進もうか……ハスキー達も、今回の探索に限っては本隊と離れ過ぎないようにな。
それから後衛陣の仕切りも、客人を含めて大変だろうがしっかりな」
「任せておいて、叔父さんっ……エルヴィスちゃんは素直ないい子だし、意思疎通に関してもほぼ完璧だよっ。
茶々丸の3倍くらい、ちゃんと言うこと聞いてくれそうっ!」
香多奈のそんな物言いに、元の例えが微妙だわねと後衛に合流した姫香の呟き。まぁ何とかなるでしょと、紗良はそれに関してはあまり触れない事に。
そんな感じで陣形を組み直した来栖家チームは、休憩とドロップ品の回収を終えて再び進み始める。ちなみに飛行型モンスターは、1層と違って色々とドロップ品を落としてくれた。
例えばバルーンタイプの敵は、風船や風船ガムやポーション瓶を。ワイバーンはスキル書を1冊に、それから待望のお肉もドロップしてくれた。
コウモリ獣人からは、被膜やゲームで使うコインを数枚回収出来た。それを使う場所がこの先にあるかは、全く不明な難関指定の“空母ダンジョン”である。
或いは“ナタリーダンジョン”のように、売店で使用とかも考えられる。
――とは言え、それを回収した末妹は既に遊ぶ気満々だったり?
『ブックマークに追加』をしてくれたら、ムームーちゃんが肩に乗ってくれます♪
『リアクション』をポチッてくれれば、萌が巨大化して背中に乗っけてくれるかも!?
『☆ポイント』で応援しないと、ヒバリに嘴でつつかれちゃうぞ!w




