2階層目もそれぞれ個性的なエリアだった件
宝箱をモチベに進んでいるのは、香多奈も同じでこの層も当然狙っている。その点、1層の回収品はお菓子類ばかりでとんだ子供騙しだったと思う。
もっとこう、心の踊る魔法アイテムとかが出てくれないと探索の甲斐がない。そう隣の2号ちゃんに愚痴る香多奈は、やはりちょっと寂しいのかも。
それはまぁ、当然と言うかいつもは後衛陣ももっと賑やかで安心感がある。それが今や、後衛の末妹を守っているのは2号ちゃん1機のみ。
いや、2号ちゃんが頼り甲斐が無いって訳では決して無い。とは言え、やはり優しい長女や我が儘を嫌な顔一つせず(?)聞き入れてくれる、叔父の存在はいないと寂しい。
そんな感じで、やや意気消沈した末妹がリーダー役のチーム探索は続く。第2層エリアだが、どうも大きな食堂兼台所みたいな場所だった。
どちらかと言えば洋風寄りの建物は、テーブルや椅子がたくさん並んで天井は意外に高い。壁の彫刻や天井から吊り下がるシャンデリアは、割と高級そうな気配。
「また変なエリアに出たねぇ、今回も子供騙しの仕掛けじゃ無きゃいいけど。ってか、台所エリアなら回収品もまた食糧とか調味料関係かなぁ?
それならお高いアイテムは、ちょっと期待出来ないかも」
そう愚痴る末妹は、どっちに行こうと首を傾げてる茶々萌コンビに気付いて、慌てて魔法のコンパスを確認する。それから、あっちにゲートがあるねと部屋の右手を指し示す。
左の方にも扉はあって、そちらも一応は確認しておきたいかも。何かの収納庫かもだし、食糧品以外にもお宝が隠されているかも知れない。
そんな訳で、最初はあっちの扉を確認するよと末妹の号令に。ほい来たと、すかさず動き出すまだまだ元気なチビッ子チーム一同である。
その中に魔導ゴーレム2体が混じっているのは、違和感しかないがダンジョン判定なので仕方がない。異議を申し立てる程では無いし、香多奈からすれば有り難い同伴者である。
そして最初の接敵は、案の定の大ゴキや大ネズミの群れだった。これらの素早い敵の駆逐は、すっかり慣れている茶々丸(遼)や萌である。
茶々丸は華麗なステップで、萌はブレスでそれぞれ敵を倒して魔石へと変えて行く。それを手伝うヒバリやAIロボも、調子は良いようで安定感がある。
ヒバリも出番が多くて、このチームの構成に文句は無さげでまずは良かった。香多奈も仔グリフォンへの指示出しは、すっかり諦めて好きにさせている。
そうして安全を確保して、扉の向こうを確認すると。予想通りに食物倉庫だったようで、行き止まりの小部屋には芋類や穀物の入った袋が重ねて置かれていた。
他にもカボチャや豆類もあるようで、比較的に長持ちする食糧の倉庫みたい。それを確認した香多奈は、容赦なくルルンバちゃんに回収を命じる。
この手のモノは幾らあっても困らないし、青空市でも売れ筋である。今やダンジョン産とのタグ付きでも、買い手は多数出現するのだ。
香多奈も回収を手伝いながら、魔法の鞄の容量を心配する有り様。今回はチームが分断されているので、手持ちの鞄に回収品が入りきらない場合もあるかも?
何しろ茶々丸や萌は、着替えを入れる小容量の魔法の鞄しか持ってないのだ。今後はその点を、叔父さんや姉達にアピールして持たせて貰うように交渉したい。
2号ちゃんもそうで、護衛だけでは勿体ない性能を備えている。とは言え前衛もだぶつき気味で、姫香やルルンバちゃんが中衛に甘んじている現状。
チーム運営って大変なんだなと、分断して改めてそんな事を考える末妹。その代わり、チームの伸びしろもまだまだ余白があると思えば素敵かも。
香多奈自身も、課題の《精霊召喚》が最近はとても調子が良い。今回はMP枯渇でぶっ倒れると大変なので、敢えて使ってないけど家族がいれば使っていたかも。
そう言う意味では、人型を維持している茶々丸も今日はヤンチャを潜めて好調だ。案外と、変身しているその姿に行動がリンクしているのかも。
或いは、ヤンチャな妹のヒバリの面倒を見るのが大変なだけかも知れない。今も台所の奥へと進んで、仔グリフォンは出遭ったゾンビを相手に奮闘中。
それをフォローする茶々丸と萌は、妹が動きやすいように戦線を構築してくれている。AIロボも同じく、慌てて香多奈が用意した水鉄砲を使っての後衛支援。
ここも獣人とか蟲系が出て来ると思っていたら、一転して死霊系のお出ましである。これだから、3層構造のダンジョンは常識外れで油断ならない。
今の所、テーマ性があるとすれば台所とか食べ物とかそんな感じだろうか。幸いにもゾンビやスケルトンは、スタンダードな弱い奴でヒバリでも倒せている。
そして得意になって、謎の舞いを踊る仔グリフォンはちょっと可愛いかも。ただまぁ、舞うにしても全部の敵をやっつけてからにして欲しい。
今回は、茶々萌コンビが敵を寄せ付けずに倒し切って、2度目の戦闘も無事に終了。ドロップ品を全て拾って、さて後はエリア探索してゲートを探すだけ。
ついでに、このダンジョンのテーマを突き止めれば言う事は無い気もする。ただまぁ、それは絶対では無いしクリアすれば良いだけの話ではある。
まさか年齢制限のあるこのエリア、そのテーマが『子供が喜びそうなモノ』なんて薄っぺらい訳はない筈。そう思った途端、アレッと香多奈は思考を中断させる。
これ以上考えると、何となく禁忌に触れるっぽい――?
「それにしても、2層目でこんなにエリア構成が変わるって思い切ったダンジョンだねぇ。香多奈ちゃんの方は、お菓子の家だったそうでそれもビックリだけど。
本当に、“鬼の報酬ダンジョン”は毎回良く分からないよねぇ?」
「護人さんの方は、アスレコースのタイムアタックだったみたいだね。そっちに割り振られなくて良かったよね、紗良姉さんっ。
今日の所は、若さに感謝だよねっ!」
そう言って笑う姫香は、アスレなんて朝飯前の脳筋少女である。毎朝のハスキー達とのマラソンも欠かさないし、夕方の特訓も人一倍熱心に取り組んでいる。
逆に運動が苦手な長女は、本当に良かったよと心から安堵の表情。紗良は頭脳明晰で、錬金術で小遣い稼ぎをする程の知力の持ち主だが運動はてんで駄目。
そして先行するハスキー達は、戦闘能力はピカ一でそれは家族の誰もが知る事実。今も出現したトランプ兵士を、まるで紙切れのように切り裂いている。
実際、素材は紙なのかレイジーの焔の魔剣の斬撃で良く燃える。このエリアの主力のトランプ兵は、カード中央の数字や絵柄がとってもチャーミング。
そんなカードに手足や頭が生えていて、何と言うか見た目はシュールである。それでも手には剣や斧を持って、戦闘手段は持ち合わせている模様。
今の所はやられ役だが、一緒に出て来たブリキのゴーレムも見せ場は無くて可哀想だった。赤いドレスを着たパペットも、コロ助のハンマーやツグミの鞭に簡単に倒されて行く。
お陰でお城の中を進むのに、ほぼ苦労も無くて助かっている姉妹である。もっとも、姫香は少し暴れ足りないなって表情が無きにしも非ず。
そんな中、紗良はドロップ品を拾いながらこのエリアのモチーフに関して推測を述べる。末妹の香多奈の方が『ヘンゼルとグレーテル』なら、こっちは『不思議の国のアリス』かなぁと。
なるほどと頷く姫香は、後は何が出て来るかなと先読みに忙しそう。意地悪な女王様がボスかなと、姫香はソイツと戦う気満々である。
何しろ道中の雑魚は、ハスキー達が全て美味しく平らげて行っているのだ。ボス戦くらいは出番が無いと、本当に何のために探索してるのって感じ。
そんな紗良と姫香の探索するエリアだが、城内なのは確かなよう。時折立派な部屋が窺えるが、中にあるのは豪華な調度品とシャドウ族の不意打ちくらい。
それを華麗に退けて行く姫香は、茶々丸には劣るが闇の気配を感じる能力も良好。最近は、相棒のツグミとそっち系の訓練も行なう特訓大好き少女なのだ。
「むうっ、待ち伏せはいたけど宝箱の設置はないねぇ。ハスキー達っ、勝手に遠くに行かないでねっ……全く、リーダーの護人さんがいないと、すぐ元に戻るんだから。
レイジーもお母さんなのに、やっぱまだ若い証拠だねっ」
「そうだねぇ、犬の年齢は確か8歳まではミドルじゃなかったけ? 老け込むには、まだまだ時間はあるよね……来栖家チームには、若返りの薬もあるし」
物騒な事を呟く長女だが、2人の確認でも特に室内に回収出来そうな物は見当たらず。仕方なく豪華なカーペット敷きの廊下を、ハスキー達に続いて進んで行く。
するとその奥に、広場と思しき大きな部屋が待ち構えていた。その前で待機するハスキー達は、その奥に敵がいっぱいるよと紗良と姫香に視線で知らせて来る。
そっと覗き込んだ限り、大広間は豪華でそこは舞踏会の途中のような華やかさ。実際にペアで踊っているパペット達と、その周囲を固めるトランプ騎士団の対比は何だか凄い。
そして姫香の予想通り、大広間の上段には女王の座る豪華な椅子が。
――広間に動く影はざっと50体、これはハードな戦いになりそう。
宝箱の中身は、案の定にトレーニング器具に偏っていた。ダンベルやアームバーや腹筋ローラー、ウエアやシューズ類もあるしプロテインも当然入っていた。
それに混じる形で、一応は鑑定の書や魔玉(水)や木の実も幾つか出て来る。魔結晶なんて中サイズが8個も入っていて、まるでアスレで魔石を回収出来なかったお詫びのよう。
スキル書も1枚入っていて、階層ボスいなくて盛り上げに欠けてゴメンって謝罪みたい。それはともかく、次の層も何だか嫌な予感の護人である。
そもそもシニアのこのエリアが、筋肉地獄なのにも納得のいかない思いが。とは言え、確かに老化の主な要因は筋肉の低下だと護人も知っている。
例えば鼾を掻くのも老眼になるのも、尿の切れが悪くなるのも腰痛も各所の筋肉の衰退である。肉体の内側の筋肉は、普段鍛えるのが難しいのだ。
その対策を怠らなければ、老化は意外と防げたりするのも事実。中高年の皆さんは、是非ともその対応に早い段階から取り込んで欲しいモノ。
護人に関しては、普段から農作業や家畜の世話で身体を動かして自然と筋肉は付いている。その上、探索者デビューして以降は、レベルの恩恵で更に逞しくなってたりして。
なので、こんなお節介は必要無いと声を大にして言いたい所。とは言え、果たしてそれがダンジョンの耳に入るかは、甚だ疑問の残る問題だ。
果たして、ゲートを潜った先も同じくアスレ仕様が広がっていた。
――そんな訳で、護人の苦悩はもうしばらく続きそう。
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