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真・恋姫†無双~三人の御使い~  作者: 泣き虫
独編
35/35

第一話「独立前線・・・恋知る呉の姫」

独編開幕!

【薫SIDE】


まだ、董卓討伐戦が最中の頃。

僕達は反董卓連合に参加せず、袁術に隠れて独立運動の準備を進めていた。

勿論、僕もそれに協力しようとしたのだが───


小蓮「かおる~! 遊ぼ~!」


薫「っとっと。シャオちゃん、急に背中に乗られたらビックリするから、やめようね~」


雪蓮さんと孫権さんの妹である、小蓮のお相手?をすることになった。

知り合ってそんなに経ってないのに、だいぶ懐かれちゃったみたいで毎日のように構ってくる。

僕としては、孫権さんのお手伝いに出たいのに、シャオちゃんの相手だけで一日が終わる。

今日も、屋敷の僕の部屋までやってきていた。


薫「シャオちゃん、確か宿題が出ていたよね? それやらないと」


小蓮「え~、明日やるよぉ~」


薫「そういう子は、明日になってもやらないの。僕も付き添うから、ほらやろ?」


小蓮「むぅ~」


渋々と机に向かったシャオちゃんの隣に座る。

穏さんとの"特訓"のおかげで、字を読めるようになったし、書けるようになった。

ただまぁ、シャオちゃんはやれば出来る子で、さくさくと課題を消化していく。


『ひゃわわ~!?』


と、部屋の外から悲鳴が。

悲鳴の段階で誰なのかは、すぐに分かった。


薫「ちょっと行ってくるね」


小蓮「えぇ~、行っちゃうの?」


薫「放っておけないから」


小蓮「お人好しだなぁ~。それが、薫の良いところだけどね」


薫「ありがと」


そうお礼を言って、部屋から出てみると、案の定と言うべきか女性が一人、ばら撒いてしまった資料をかき集めていた。


薫「(パオ)さん、お手伝いします」


包「あっ、薫さん。助かりました~」


フランクな彼女は、三国志の話では有名な人物である"魯粛"。

この世界でお決まりな女性の方で、真名は"(パオ)"ととても可愛らしい名前である。

しかし・・・何というか、容赦ない言葉がたまに痛いというか、失言が多い方です。


薫「ちなみに、これは何の資料なのですか?」


包「独立のための必要な武具の資料ですよ。雪蓮様たちが戻られた時に、すぐに動けないと意味ないですから」


薫「・・・」


そっか。僕は平和に生活できてるけど、こうしてる今も雪蓮さん達は戦っているんだよね。

まだ、この世界の常識を受け入れられていないけど、こうやって守られているだけの僕は情けなく見える。


包「薫さん?」


薫「ぁっ・・・すみません。これで全部拾えましたね」


包「ありがとうございます。あっ、さっき穏さんが薫さんを呼んでましたよ」


うん? 何だろう?

いつもの特訓は、夜にやってるからその事についてじゃないよね。


薫「分かりました。あっ、でも資料運んでからにしましょうか」


包「え? そんな悪いですよ~」


薫「また転んだら大変ですから。ささっ、行きましょう」


包「・・・薫さんは、変なところで強情ですね」


諦めた包さんから、半分より少し大目に資料を取って孫権さんの執務に持っていく。

今は外出しているため室内にいないから、机にどさっと資料を置いた。

確か、呂蒙さんという方と一緒というのは聞いたけど・・・。


包「はぁ、本当に助かりました」


薫「こんなので良ければ、いつでもお手伝いします。いつも、雪蓮さんや冥琳さんに振り回されてるの見てますから」


包「そうなんですよ! 新人使いが本当に荒くて!」


薫「ふふふっ。僕も何かと雪連さんに振り回されていますから、何かあったら言ってくださいね。それでは、シャオちゃんを待たせていますので」


包さんと少し距離が縮まったみたいで、足取りがとても軽かった。

シャオちゃんに事情を説明してから、穏さんの下へ向かうとしよう。


包「・・・はぁ~。やっぱり、薫さんは優しくていいなぁ~」











[コンコンッ]

薫「穏さん、薫です。包さんに言われて来たのですが・・・」


シャオちゃんに事情を説明して、穏さんの自室を訪れた。

ぶーぶーと文句を言われてしまったけど・・・。


薫「・・・? 穏さん? 入りますよ~」


ゆっくり扉を開けてみる。


薫「っ!? 穏さん!」


部屋の中を覗くと、穏さんが室内で倒れていた。

急いで駆け寄って抱き起こすと、穏さんの手元には───


穏「かおるさぁん・・・ごめんなさいぃ~」


薫「はぁ~、読んじゃったんですね」


穏「だって~・・・」


大事そうに兵法に関する本が抱えられていた。

どうも、仕事の疲れでどうしても我慢できなくなってしまったらしい。

僕がもっと早くに来ていれば、未遂で済んでいたかもしれなかった。


穏「薫さんの・・・せいじゃ、ないですよぉ。私が、我慢できずにぃ・・・」


薫「穏さん、いつもの呼吸法をしましょう。出来ますか?」


穏「はぁはぁはぁ、はぁい・・・すぅ~、はぁ~」


僕に抱き起こされた状態のまま、呼吸を整えていく。

最初の頃は、今の官能的な穏さんにドギマギしたものだが、だいぶ見慣れてきたというか、保護欲の方が高まってそんな気分も起きなくなった。


穏「すぅ~・・・はぁ~・・・はぁ」


薫「落ち着きましたか?」


穏「はぁい、だいぶ。本当に、薫さんにはお世話になってばかりですね」


薫「気にしないでください。さっ、とりあえず本を渡してもらえますか?」


穏「わかりましたぁ」


後生大事な本を預かる。

これは、後で書斎に返却をしておこう。


薫「もう大丈夫そうですか?」


穏「いつもありがとうございますぅ」


そのお礼に笑顔で応えて、僕は部屋を出た。

今日の特訓はしない方がいいかも。無理は身体に障るし。

でも、今日みたいな事が起きたら大変だから、そのカウンセリング方法も考えないと・・・


穏「今日も薫さんに触れられちゃいましたぁ・・・もう、本じゃなくて薫さんにドキドキしちゃいます」












小蓮「ぶー、今日はシャオと遊ぶはずだったのにぃ」


薫「ごめんね。代わりに、明日遊びに行こう」


小蓮「ほんと!? じゃあ、明日はシャオの言うことを何でも聞いてね!」


ははは・・・明日も孫権さんの手伝いに行けなさそうかな。

せめて今日だけでも様子を見に行ってみたい。


小蓮「・・・あーあ、シャオ眠くなっちゃった」


薫「え? でも宿題は?」


小蓮「もう終わったよ~ん。おやすみ~」


寝具を占領したシャオちゃん。

ここ、僕の部屋なんだけどなぁ・・・あはは。


小蓮「お姉ちゃんなら東の演習場にいるよ~」


薫「・・・ありがと、シャオちゃん」


シャオちゃんの気遣いに感謝して、僕は東の演習場に行くことにする。

一応、包さんに一言伝えておこう・・・。


小蓮「薫はシャオのものなんだから・・・今日は特別なんだから」












薫「すみません、包さん。こんな事を頼んでしまって」


包「さっき手伝ってもらいましたから、これぐらいお安い御用です」


僕は鎧と護身用の剣を腰に差し、東の演習場まで包さんに先導してもらっている。

馬には、だいぶ慣れてきたもので軽い移動なら余裕になっていた。


蓮華「───そこまでっ!!」


遠くの方から、孫権さんの号令が聞こえてきた。

よぉく目を凝らすと、大軍が一糸乱れない隊列を組んでいるのが見える。


包「丁度、休憩に入ったようですね。行きましょうか」


薫「は、はい」


僕たちはタイミングを見て、前方の部隊に近づいていく。

既に、包さんが早馬に手を回してくれていたようで、兵士の方がすぐに孫権さんのもとへ案内してくれた。


包「では、包は失礼致します」


蓮華「ええ。ここまで薫の護衛、ご苦労様」


薫「ありがとうございます、包さん」


包さんは馬に再び跨り、演習場から離れていった。

この場には休憩中の兵士達と、孫権さん、そしてその隣にいる呂蒙さんだ。

確か、呂蒙さんも僕が御使いだということを伝えられている。


薫「すみません、孫権さん。急に来てしまって」


蓮華「あまり、薫の立場からしたら良い事ではないけどね。でも謝ることじゃないから安心して。

それで、何でここに来たの?」


薫「少し、様子を見てみたいと思いまして・・・大丈夫でしょうか?」


本当は何か手伝えることがあれば、と思ったけど、あんな壮大な演習を見た後じゃ、そんな軽い気持ちも消えてしまった。

だけど、せめて勉強になることを一つでも持ち帰りたいと思った。


蓮華「構わないわ。ここにいる亞莎・・・呂蒙も、軍師としての教育のためにいるから、一人も二人も変わらないわ。亞莎もいい?」


亞莎「は、はひ・・・」


薫「ありがとうございます、呂蒙さん」


亞莎「───」←顔を隠す


蓮華「ごめんなさい。亞莎は、ちょっと人付き合いが苦手らしくて」


僕と目を合わせないようにする呂蒙さんのフォローに、孫権さんはすぐに入った。

しかし、僕の中で呂蒙さんへの距離感が少し近づいた気がした。


薫「大丈夫です。僕も面識のあまりない方とは、うまく話せないといいますか、たどたどしくなってしまいますから」


亞莎「す、すみません・・・」


薫「これから、宜しく御願いいたします、呂蒙さん」


亞莎「っ・・・は、はい!」


目つきは怖いけど、とても素直で良い人そうだ。

初めて会った方だけれど、これから仲良くしていきたいと思う程、僕の中では好印象だった。


蓮華「そろそろ演習を再開するわ。薫は私の隣に」


薫「分かりました」





【蓮華SIDE】


薫の急な訪問には戸惑いはしたけど、これは好機だ。

そう・・・明命がいない間、つまり薫の警護に就いてた時に何度も失敗した、"真名を預けることだ"。

───なのに!


薫「あれはどういった陣形なのですか?」


亞莎「あの陣形は───」


蓮華(話しかける隙がない・・・!)


演習後、さりげなく話しかけようと思ったけど、二人とも仲良くなるの早過ぎ。

私は亞莎と親しげに話せるようになるまで、それなりにかかったというのに・・・。


蓮華(二人とも、人付き合い苦手って絶対嘘でしょ)

  「ううぅ・・・!」


薫「孫権さん?」


蓮華「ひゃっ!? な、なによ・・・?」


薫「いえ、何か唸っていたので、亞莎さんと気になってまして」


蓮華「べ、別に大したことじゃ"亞莎"さぁん!?」


薫「うわっ!?」


亞莎「あっ、薫さん!」


身を乗り出して脅かしてしまったせいで、薫は馬上から落ちてしまった。

私と亞莎は馬を降りて、背中をさすっている薫に駆け寄る。


蓮華「ご、ごめんなさい!」


亞莎「お怪我はありませんか!?」


薫「だ、大丈夫だよ。孫権さんも気にしないで。僕は大丈夫だから、あはは」


蓮華「───」


薫の笑顔にズキっと胸が痛みが走る。

その痛みが何なのか分からないまま、夜まで痛みが引くことはなかった。












蓮華「・・・はぁ」


もう空には月が昇っているけど、全然寝付けず、私は寝間着のまま城壁に出ていた。

今日の薫と亞莎の様子を思い浮かべて、私は本日何度目かも分からないため息をつく。


蓮華「どうしちゃったんだろ、私・・・」


演習中は思いもしなかったのに、今は彼の事が頭から離れない。

彼がシャオやみんなと仲良くしてるのは良い事なのに、すごく胸が締め付けられてしまう。

もしかして、私───


蓮華「・・・薫」


薫「はい、何でしょう?」


蓮華「っ!?!?!? な、ななな、なんでここにゃ所に!?」


本日二度目の驚愕。

驚き過ぎて、明命っぽい口調になってしまった。


薫「あまり寝付けなくて。孫権さんこそ、どうされたんですか?」


蓮華「わ、私も寝付けなくて・・・」


薫「じゃあ、僕と一緒ですね。隣いいですか?」


蓮華「別に、いいわよ」


突然の二人っきり。

いや驚いてる場合じゃないわ蓮華! これは二度目の好機!

気丈に、自然に振舞うのよ・・・まずは、他愛な話題を───


薫「孫権さんは」


蓮華「は、はい!」


薫「何か僕に言いたい事があるんじゃないですか?」


蓮華「はい! あります!」


きゃあああぁ! 何、普通に答えちゃってるの私!

というか、何で薫にバレて・・・。


薫「やっぱり。最初の護衛の日から感じてて・・・」


しかも、それ以前からバレている。

はぁ・・・穴が入ったら入りたいよぉ。


蓮華「もしかして、私が何を言いたいのか、分かってたり・・・?」


薫「え~と・・・はい。でも、神聖なことかもしれないから、自分からは言い出し辛くて」


ああぁ、そこまでバレてるなんて・・・。

でも、薫から言い出してくれたのは、最大限な気遣いなのかもしれない。

聞いた話によると、天の国では"真名"というのが存在しなく、その神聖さも分からないそうだ。

ここまで気を遣われて、逃げるなんて孫家の名に泥を塗るわ!


蓮華「薫!」


薫「は、はい!」


蓮華「えっと・・・私の事───














【小蓮SIDE】


シャオは、薫がやってくるのを白虎の"周々"の背に乗って待っていた。

数分ぐらい待っていると、薫が走って待ち合わせ場所までやってきた・・・何故か、傍らにお姉ちゃんがいるけど。


小蓮「遅いよ、薫!」


薫「シャオちゃん、ごめんね。少し遅れちゃった」


蓮華「シャオ! 薫を外出させる時は、必ず私に伝えなさいって言ったでしょ!」


小蓮「え~。だって、お姉ちゃんはこの後、亞莎と演習に行くんでしょ? 居ないなら意味ないじゃん」


蓮華「今日も、薫を演習に連れて行こうと思ってたの・・・はぁ、とにかく今後は必ず私に報告すること。いい?」


小蓮「は~い」


まったく過保護過ぎだよぉ・・・。


小蓮「早く行こ、薫!」


薫「うん。それじゃまた今度、演習に参加するね"蓮華"」


・・・ん?


蓮華「ええ。あっ、これだけは守って。必ず夕刻までには戻ってくること。分かった?」


薫「大丈夫だよ、必ず守るから」


んんん???


薫「行ってくるね」


蓮華「行ってらっしゃい」


何か、シャオが知らない間に、すごく仲良くなってるんだけど・・・!

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