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真・恋姫†無双~三人の御使い~  作者: 泣き虫
董編
26/35

第三話「反董卓連合・・・華麗に進軍」

一刀「───という訳で、先鋒を任されたわけなんだけど」


頭に大きなタンコブを作った一刀は、目の前にそびえ立つ汜水関を軍を展開させて眺めていた。

汜水関の前では、愛紗と鈴々が「臆病者っ!」などの罵声を浴びせている。


雛里「・・・敵、出てきませんね」


朱里「汜水関には神速と謳われた"張遼"さんと、猛将"華雄"さんがいることは分かっています。おそらく、張遼さんが華雄さんを抑えているんだと思います」


星「しかし、これでは埓があきませんな」


桃花「どうしよっか、ご主人様? こう、天の力で何とかならない?」


一刀「んなこと出来るわけないでしょ・・・案が無いわけじゃないけど」


桃花「え? なになに、教えてっ!」


一刀「・・・星、ちょっと」


星「?」


話の輪から離れた一刀と星は、顔を近づけてひそひそと話始めた。

桃花、朱里、雛里の三人は首を傾げて、その様子を見守る。


一刀「・・・・・・って考えてるんだけど」


星「確かに華雄は・・・・・・・なるほど・・・うむ。さすがは我が主。ゲスの極みでございますな」


一刀「おい、人聞きの悪いことを言うなっ! だから星、一肌脱いでくれよ」


星「何を言うのです。こんな大役、主以外に務まるはずありません」


一刀「いや、ただあんたは外野で面白がりたいだけでしょ。絶対嫌だよ、俺」


星「では桃花様に・・・・・・と叫ばせるのですか? それもまた、主の趣味というならば仕方ありませんが」


一刀「いや、男の俺がやった方が余計にヤバイと思うんだけどっ!?」


桃花「ご主人様、星ちゃん、私達も会話に入れてよっ!」


星「ご安心なされ。主の策は、桃花様が要でございます」


桃花「え? 私?」










愛紗「猛将華雄とは名ばかりかっ!?」


鈴々「悔しかったら降りて来いなのだー!」


二人だけじゃなく、兵達全員が悪口を汜水関に向けて言い放っている。

関の中では、今にでも飛び出したい華雄が張遼(霞)に押さえ付けられているだろう。


鈴々「全然出てこないのだ」


愛紗「兵達も叫び疲れてきたか・・・」


愛紗も少し息が上がってしまって、一度後退を考えていた。

そこに兵士が一人、報告にやってきた


愛紗「どうした、何かあったのか?」


兵士A「は、はい。それが北郷様と劉備様が来ておりまして」


愛紗「なに!?」


驚愕している束の間、桃花と一刀は二人のもとまでやってきた。

僅かに、二人の頬が赤い。


桃花「あはは~、来ちゃった」


愛紗「桃花様っ!?」


鈴々「お姉ちゃんとお兄ちゃん、どうして来たのだ?」


一刀「今のままじゃ埓があかないからな。秘策を・・・ね」


桃花「う、うん・・・」


かぁぁっとさらに二人の顔が赤くなった。

その様子に愛紗と鈴々は疑問符を浮かべた。


一刀「ふぅ・・・よし! じゃあ、ちょっと行ってくる」


愛紗「え? 行ってくるって───ご主人様、桃花様。危険です!」


桃花「大丈夫だよ、愛紗ちゃん。上手くいったら、すぐ下がるから・・・」


弱々しく語尾が小さくなるのは、恐怖からではない。

モジモジしているその様子は、恥じる初心な乙女そのものだ。


愛紗「しかしっ・・・分かりました。ならば、私も同行させていただきます


鈴々「なら鈴々も!」


愛紗「鈴々、お前は何かあった時、兵を動かせるよう待機していろ」


鈴々「むぅ。分かったのだ」


一刀「・・・じゃあ、行こうか」


桃花「う、うん・・・」


愛紗(なんなんだ、このふわふわとした雰囲気は・・・?)


三人は部隊より先行して、汜水関に近づく。

汜水関内では・・・


華雄「くぅっ、離せ張遼! 完全に我らを舐めているっ!」


霞「どあほっ! それこそ敵の思うツボやっ! 誰か華雄を抑えつけときっ!」


兵達「「「はっ!」」」


華雄を三名の部下に任せて、霞は関の上から三人を見下ろした。

霞は、後ろに控えている黒髪が有名な関雲長だと分かったが、その前を歩く二人はあまり見覚えがなかった。


霞「あいつら何する気なんや?」


汜水関の兵士達、そして仲間の兵士達が注目している中、一刀が緊張した面持ちで桃花の後ろに立った。


一刀「じゃあ、やるぞ」


桃花「はいっ!・・・すぅ・・・はぁ」


一刀「すぅ───」


一刀も深呼吸をすると、声高らかに叫んだ。


一刀「華雄の・・・貧乳ぅうううっ!!!!」


  [もにゅ]

桃花「あんっ!」


愛紗「なっ!?」

霞「はぁっ!?」


全員「「「えっ!?」」」


一刀の両手に収まった大きなメロン二つ。

それを目撃した全員は目を丸くした・・・一人を除いて。


兵士A「ぐわぁっ!?」


兵士B「ぶへっ!?」


兵士C「か、華雄将軍、落ち着いて───ぐはっ!?」


霞「か、華雄っ! 落ち着くんやっ!」


華雄「うるさいっ! 張遼には私の気持ちなど分からないだろうっ! 何と言おうと私は出るっ!」


鬼の形相で駆け出した華雄を誰も止めることは出来なかった。

残された霞は、溜まっていたイライラが爆発し、荒い口調で兵に虎牢関まで撤退すると告げた。


兵士D「華雄将軍は!?」


霞「連れ戻すに決まってるやろっ! 張遼隊! 華雄の部隊を援護しつつ、撤退まで時間かせぐでぇっ!」


兵士「「「応っ!!!」」」











事態が動き出したのを、後方で見守っていた華琳は確認した。


華琳「始まったわね・・・桂花」


桂花「ここに」


華琳「あなたの意見を聞きたいわ。私はどうするべきかしら?」


桂花「ここは静観を通すべきだと。この後の虎牢関でこそ、華琳様の実力を発揮すべきです」


華琳「もし、劉備がここで破れた場合は?」


桂花「それならば、問題はありません。華雄が討って出た後、孫策が動き出し始めました。おそらく袁術の差金でしょう」


華琳「そう。このまま我らは、本隊と速度を合わせ進行する!」


魏兵「「「応っ!」」」












そして、袁術(美羽)の命令により、戦闘に参加した孫策は関羽達と合流した。


雪蓮「は~い、関羽」


愛紗「孫策?」


雪蓮「報告受けたわよ。あなたの主達、そういう関係だったんだ」


愛紗「うっ・・・」


ニヤニヤする雪蓮に何も言い返せない愛紗。

もう既に、一刀と桃花は顔を真っ赤にしながら下がっている。

  

  [ズキッ]

愛紗(・・・なんだ、この胸の痛みは)


二人のことを思い出すと、心臓を鷲づかみされるような感覚に襲われる。

もし、桃花の役目が自分だったらと想像した愛紗は、ボンっと顔を赤くした。


愛紗(な、何を考えてるんだ、私はぁ!?)


雪蓮(へ、へぇ~、関羽をも手懐けてるのね、あの御使い)


戦場のど真ん中で頭をガシガシとかく愛紗を見て、雪蓮は苦笑いを浮かべた。

まだ言葉を交わしていない一刀を恐れた・・・ある意味で。


華雄「ハァアアアアアアアっ!!」


愛紗・雪蓮「っ!」


馬上で巨大な斧を振るって突っ込んでくる猪に、二人は馬を走らせた。


雪蓮「関羽。あいつは私に任せちゃっていいわよ。汜水関取りは、本懐の足掛かりにならないもの」


愛紗「いいのか?」


雪蓮「あいつは母様にボロ負けして逃げた負け犬よ。この私が遅れを取ると思う?」


愛紗「・・・では任せた!」


馬の尻を叩いて、愛紗が先行していく。


華雄「行かせるかぁっ!」


愛紗「ハッ!」


横を通り過ぎようとした愛紗に、大斧が横薙ぎに襲いかかったが、愛紗はいとも簡単に斧を青龍刀で弾き返した。

華雄は追いかけようとしたが、次にやってきた雪蓮がそれを邪魔をする。


華雄「貴様、孫策かっ!」


雪蓮「あら、私のことは知っているようね。じゃあ自己紹介無しでいいわね、貧乳さん」


華雄「───殺すっ!」


馬を降りた二人が戦い始めると、その横を桃花と雪蓮の兵が通り過ぎて華雄の部隊と衝突した。

二つの軍隊を指揮しているのは、鈴々と明命だ。

今は仲間同士、お互いの兵の動きを見て指示を飛ばしていた。

そして先行した愛紗は、華雄の兵を切り伏せて汜水関を目指す。


愛紗「むっ、別の部隊・・・張遼か!」


開門した関の向こうから、騎馬隊が並列をなして現れた。

その中央で先陣を切るのは張遼だ。


霞「あれは、関羽か!? 華雄のことがあるっちゅうのに・・・関羽はうちが足止めする! お前らは華雄とその部隊を援護せい!」


兵士「「「応っ!」」」


霞「ほんまは、周りを気にせず思いっきりやりたいんやけど、今は我慢や!」


愛紗「関雲長! 参るっ!」


青龍刀の一突きが放たれた。しかし、霞は槍の柄がそれを防ぐ。

すれ違った二人は、馬をUターンさせ再び槍を構える。


霞「うらぁっ!」


愛紗(は、速いっ!?)


神速の突きを何とか防いだ愛紗。

噂通りの槍さばきに驚く愛紗だったが、霞も今の一撃を防がれたことに驚きを隠せなかった。


霞(確実に取った自信があったんやけどなぁ・・・ええで、最高やで関羽っ!)

 「っ! いかんいかん! 今は抑えへんと」


もう一度、打ち合おうとした時、部下の一人が大慌てで霞に走ってきた。


兵士E「張遼様! 後方から、連合の本隊が来ました。これ以上は戦線がもちません!」


霞「なんやて!? くっ、華雄・・・撤退や! 撤退ーっ!」


華雄を諦めることに胸を痛めながら、軍を引き上げていく。

愛紗は深追いせずに一旦、自分の部隊に戻ることにした。


鈴々「愛紗ー!」


愛紗「鈴々! 孫策の部隊は?」


鈴々「敵が逃げたから、向こうも兵を下げたのだ。華雄は逃げちゃったらしいけど、詳しくは分からないのだ」


愛紗「そうか。とりあえず、先に汜水関に入ろう。鈴々はご主人様のもとへ報告しに頼む」


鈴々「了解なのだ!」


ささぁーっと鈴々は一刀達がいる後方へ向かっていった。

愛紗は部隊を率いて汜水関に進行する。


愛紗「初戦は連合の勝利、か」


緊張が抜けて愛紗は、空を仰ぎ見ながら頬を緩ませた。












愛紗「さて、ご主人様」


一刀「え? 今ので終わりじゃないの?」


愛紗「何を言っているんですか。まだ、桃花様にしたことの説明がされていませんよ」


一刀「いや、あれは敵を引きずり出すためであって・・・あの、愛紗さん? お顔が怖いです」


愛紗「私は生まれつきこの顔付きです。桃花様も何故あんなことを受け入れたのですか?」


桃花「ふぇ!? え、えっと・・・えへへ~」


愛紗「・・・」


一刀「愛紗!? なにゆえ槍をこちらに向けるのでございましょうか!?」


怯えて尻餅をつく主を見て、家臣の星はくすくすと笑っていた。


星「ふふっ。予想通り過ぎる展開に、自分で自分を褒めたくなる・・・ん? どうしたのだ、三人共」


朱里「・・・いえ、何でも」


雛里「ない・・・ない・・・」


鈴々「鈴々だって、いつかバインバインに・・・」


星「ふむ。胸が無いのも無いなりに利点があるとは思うが」


朱里「星さんに、私達の気持ちなんて分かりませんよ」


星「・・・なるほど、闇は深いようだ」

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