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真・恋姫†無双~三人の御使い~  作者: 泣き虫
魏編
10/35

第四話「友達は大事に」

投稿は一週間おき、又は二週間おきにしたいと思います。

諸事情により前後する可能性はあります。

流琉「あの~、どうかしましたか?」


背中を壁に預けて座り込んでいた俺に声をかけてきた天使。

そして、その後ろで大きな紙袋を抱えている天使。

その天使達は、心配そうに俺のことを伺っている。


圭吾「ちょっと、な。疲れちまって」


と返した時、ぐぅ~っとお腹が鳴った。


季衣「兄ちゃん、お腹空いてるの?」


圭吾「まぁな」


ここ毎日、ロクなもん食ってないからな・・・。

すると、大きな紙袋を持つ天使の方が、ほくほくの肉まんを俺に差し出す。


季衣「あげる」


圭吾「いや、これってお前らの───」


季衣「困ってる人をほってけないよ。流琉もいいよね?」


流琉「うん。たくさん買っていますから、気にせず食べてください」


流琉と呼ばれた少女も、自分が抱えている紙袋から次は"桃まん"が出てきた。


流琉「それとも、最近出た新作のこの───ど、どうして泣いてるんですか!?」


今年で17歳の男児が、惨めにも無垢な少女達の気遣いだけで泣いてしまった。

この世界に来て、俺は初めて優しくされたのだ。


圭吾「いや、すまん・・・でも、それはお前達が食べなさい。育ち盛りなんだから」


流琉「え、でも───」


子供相手の食い物をもらうのは、何か高校生として情けなくなった俺は、気遣いを受け取らず、その場を立ち去ることにする。

だが、


季衣「ちょっと待ってよ!」


圭吾「おわっ!?」


紙袋を抱える逆の手で、俺のジャージが引っ張られる。

その力は、子供とは思えないほど強く、空腹も加わって俺は簡単に尻餅をついた。


流琉「何してるの、季衣! 大丈夫ですか?」


圭吾「あ、ああ、大丈bむぐっ!?」


振り返って受け答えする俺の口に、季衣と呼ばれる少女が肉まんを押し込んだ。

その力も強すぎて、殆ど噛まずに喉を通過していった。


圭吾「───ゴホッゴホッ」


流琉「季衣!!」


季衣「だってぇ」


彼女なりの優しさなのだろう、と俺は察したが、あまりにも強引すぎるやり方に、流琉と呼ばれる少女は説教モードに移行した。

彼女たちは幼少期からの知り合いのようで、小言の内容がどんどん過去に流れていく。


流琉「だいたい季衣は昔から───」


季衣「流琉はいつだって───」


流琉「なによ!?」


季衣「なんだよ!?」


圭吾「まぁまぁまぁまぁ!!」


子供のケンカに口出すのもどうかと思うが、表通りからの野次馬が増えてきたため、仲裁に入ることにした。

二人の肩を押して距離を取らせて、お互いが視界に入らないように間に入る。


圭吾「しっかり好意を受け取らなかったお兄さんが悪かった! だからな、ケンカをやめて仲良く肉まん食おう! な? な?」


季衣・流琉「「・・・ふんっ」」


二人の背中を押して、とりあえずここから離れる。

その間も二人は頬を膨らませたまま、お互いを見向きもしなかった。

しばらく歩いて気づいてみれば、町並みから離れた小川の流れる所まで来ていた。


圭吾「こんな所があるんだなぁ・・・ほら、そこの岩に座って食べようぜ」


いつの間にか俺が代わりに持っていた二つの紙袋から、肉まんと桃まんを二人に渡す。

無言で受け取り、二人は静かに食べ始めた。

だんだんと怒りの感情が収まっていき、二人はどのタイミングで声をかけようか迷っている。


圭吾「・・・二人は昔からの知り合いなのか?」


流琉「え、ええ」


季衣「親同士が仲良しで、小さい頃から一緒で・・・もう親はいないけど」


あっ、地雷踏んだ・・・。


季衣「でも何とか二人で生活して、今は───」


圭吾「いや、すまなかった! 聞いた俺が悪かったから、その話から離れよう!」


季衣「???」


この子達は、見た目とは裏腹に壮絶な人生を歩んできたんだろう。

それがこの世界の常識なのか・・・。前の世界で生きてきた俺には、とても受け止めきれない。


季衣「そういえば、兄ちゃんはどうしてあんなとこにいたの?」


圭吾「えっと・・・ちょっと他人家で厄介になっててな。嫌になって、抜け出してきた」


流琉「雇われていたんですか? じゃあ、抜け出したらマズイんじゃ」


圭吾「三日三晩も虫の死骸を出されるくらいなら、そいつらと鬼ごっこした方が気が楽だよ」


季衣「何そいつ! そんな酷い事する奴、僕がやっつけてやる!」






桂花「[ブルッ]・・・な、なに、今の?」





圭吾「あんがとよ。んじゃ、もう俺が間にいなくても大丈夫だな」


季衣・流琉「あっ」


二人はそこで顔を合わせて、再び俺の方に向いた。

三人して笑い合うと、二人に紙袋を返す。


圭吾「友達は大切にしろよ。ケンカはいけないことじゃないが、"俺みたいに"友達を失うことは辛いぞ」


我ながら格好いいセリフを言った俺は、若干恥ずかしながらその場を後にした。









季衣「変わった人だったね」


流琉「そうだね。服も見たことなかったし」


季衣「・・・」


流琉「・・・季衣、ごめんね」


季衣「ううん。僕の方こそ」


二人で顔を合わせると、ぷっと吹き出して張り詰めていた空気が柔らかくなった。


流琉「じゃあ、帰ろっか!」


季衣「うん!」


お互いに紙袋を抱え、空いた手で手を繋ぐ。

その様子を離れた岩陰から見守っていた圭吾も、静かにそこから去った。









のだが、


圭吾「あー・・・裸足辛い・・・」


城のあった町から脱出した俺は、森に入って方角も決まらぬまま走っていた。

近くに同じように町があればいいんだけど・・・。


圭吾「それだけあの子達に聞いときゃよかった・・・。何真面目に、良いお兄さんやってたんだか」


後悔しても仕方がない。

ヌカるんだ土に足を取られつつも、走り続けた。

そうして1時間近く進んでいると・・・。


圭吾「あ、あった・・・」


それなりに大きな村がそこにあった。

村は四つの門で固く閉ざされ、囲うように木材が3メートルぐらいの高さまで積み上げられている。

その一つの門に近づくと、門の上に設置された見張り台から村人が声をかけてきた。


村人1男「おめぇさん、まさか追い剥ぎにあったのかー?」


圭吾「あ?」


村人1男「最近、ここの辺りにも黄巾党って奴らが暴れまわっていてな。とりあえず入りな」


良心的な村人は、中にいる仲間に合図を送って俺を中に入れてくれた。

入るとすぐに左右に閑散とした露天が並ぶ。


村人2男「大変だったな。ほれ、飯は出せんが水くらい飲みな」


圭吾「いや、俺は・・・」


そこで否定しようと思ったが、このままの方が面倒にならないと思い黙った。

水の入った竹筒を頂き、村の中心部へその村人と歩き出す。

村の入口は露店が並んでいたのに、中心に近づくほど建物が減っていく。

外部から人間に目を向けた商売でもしてんのかね・・・?


村人2男「逃げてきたところ申し訳ないが、手を貸してくれないか。男手が足りないんだ」


圭吾「その黄巾党とやらの対策のため、か?」


村人2男「ああ。前までは反抗したら殺されると思って耐えてきたんだが、あの"三人組"が指揮して何回か撃退してるんだ」


村人が差す方向には、一風変わった服装の女性三人がいた。

・・・いや、服装に関しては、俺も他人のことは言えないけど。


村人2男「とりあえず、やる事はあの人達から聞いてくれ。んじゃ、俺は持ち場に戻っから」


圭吾「あっ、おい!」


あいつらに聞けって言われても、ねぇ。


真桜「おい、そこのあんさん!」


圭吾「あん?」


真桜「人手が足りんつうのに、何ぼーっと立ってんねん! さっさと手伝いせんかい!」


圭吾「は? いや、俺は───」


真桜「ほれ! 時間がないねん、頼むでほんま」


背中をバシッと叩かれ、巨乳の姉ちゃんは離れていく。

どうやら、相当切羽詰まってるようだった。

立ち去ることが出来ず、、渋々と渡された木箱を指定された場所に持って行くことにした。

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