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ハワイ沖決戦  作者: 草加
1/1

一部

昭和20年2月

ハワイ航空隊に所属する宮越は二式大艇を繰りながら海上に白い筋を見つけた。


「二時の方向、ウェーキー確認、本土からの輸送船団でしょうか?」


「バカ、ここはハワイ東方海域だぞ?潜水艦か鯨だ」


正操縦士の葛原は握り飯を頬張りながら二時の方向をみる。


「ん?」


雲に隠れてうまく見えないがやけに航跡がデカい、少なくとも鯨や潜水艦ではない。


「……二度あることは三度あるって言うが…まさかな」


葛原は一年前と5ヶ月前にあったとある出来事を思い出しながら呟く。


「おい、一応電文打てるようにしとけ、低空で目視確認する」


「了解」


宮越から管制を渡された葛原は螺旋状に降下しな がら舞い降りる。


「うお!」


雲を突き抜けた先に待っていたのは航跡航跡航跡、航跡の群れだった。


「ひぃふぅみぃよ……すげぇ、空母だけで6隻は居やがる」


「戦艦も8隻、見たことないのもあります」


「巡洋艦、駆逐艦に至っては数える気にもならんな」


葛原はため息をつくと後ろの通信員に怒鳴る。


「電文、打ち終わったか!」


「待って下さい、もう少し……」


「十時上方に敵機!」


二式大艇を補則したF6F二機が急降下してくる。


「機銃座は応戦!宮越ぃ!あれ、使えるか!?」


「起動に一分かかります!」


「遅い!三十秒だ!」


「了解!」


機銃座は必死に応戦し、F6Fをなかなか近づけない。


「機長!準備完了しま した!」


「よし、点火しろ!」


「了解、点火します!」


ゴゥ


二式大艇の主翼の四カ所から火が噴く。

F6Fのパイロット達は、してやったりと思ったがどうも様子がおかしい。

なぜか、速度が落ちないのだ、むしろ早くなっている様にも見える。


「宮越、こっちは任せて予備銃座に行け、ロケット推進が使える間に引き剥がしたい」


実はこの機体、緊急離脱用に4本のロケットを束ねたブースターを4基、主翼に装着した改良型なのだ。

これにより約五分間、最高速度をさらに100km/h上昇させることに成功した。


「了解、機体を頼みます」


「任せろ」


宮越が予備銃座に入り射撃を開始すると、こりゃたまらんとばかりにF6Fも距離を取る。

少しの間追尾してきた が、艦隊から離れるのはマズいと判断したのか、反転していった。


「敵機、反転しました」


「そうか」


操縦桿を握っていた葛原は思わず顔がほころぶ。

いや、この機に乗っている乗員全員が同じように顔をほころばせ、意気揚々と帰還していったのである。




「なに?大艦隊が接近中だと?」


オワフの司令部で会議をしていた山口多聞第一航空艦隊司令長官は、突然飛び込んできた通信兵から報告を受けていた。


「規模は?」


「は!空母6、戦艦8、巡洋艦、駆逐艦多数、輸送船団を帯同しているかと思われます!」


通信兵はそれと、と前置きをして、


「戦艦の内、4隻は新型艦の可能性大、とも報告が」


「わかった、直ぐに旗艦に戻る」


さて、 ここで何故山口多聞が居るのか説明せねばなるまい。

まずは、ここに至るまでの道程から……



第一次ミッドウェー海戦に置いて、空母三隻が急降下による爆撃を受け被弾した。

しかし、それらの空母は皆、既に攻撃隊が発艦した後だったのだ。

空母エンタープライズの攻撃隊が発艦作業に手間取ったため、10分間という空白が出来た。

第一航空艦隊はその間に攻撃隊の発艦を終えてしまったのだ。

赤城と加賀は被弾したものの戦闘航海には支障は無かった。

しかし、蒼龍は弾薬庫に格納途中だった爆弾、魚雷が誘爆を起こし弾薬庫に引火、爆沈してしまった。

飛龍は言わずもがな、スコールに隠れて無事だった。

空母より発艦した攻撃隊はエンタープライズ、ホーネットを擁するTF1 6に集中、エンタープライズに魚雷3、爆弾2を命中させ大破、ホーネットに魚雷5を命中させ撃沈という斯々たる戦果を挙げた。

更に、夜間におこなわれた潜水艦の雷撃によりヨークタウンを撃沈、米軍の太平洋に置ける稼働空母は皆無となった。

攻撃隊を甲板を養生した赤城、無傷の飛龍に収容した第一航空艦隊は、本土に反転した。

収容した機体が多すぎて発艦作業に支障をきたしていたのである。

ひとまずMI作戦は中止され、代わりにMO作戦の再度決行が決定した。

幸い、飛龍は航空隊の再編成で出撃可能な上、赤城、加賀は早期復帰となりそうだからだ。

昭和17年8月20日

大幅に強化されたMO機動部隊は、

飛龍、瑞鳳、翔鶴、瑞鶴の機動部隊本隊

隼鷹、龍譲の護衛部隊

金剛 型四隻主軸の前衛部隊

に分かれて一路、ポートモレスビーを目指す。

これに対して米は、基地航空隊で反撃をおこなった。

一応、サラトガ、ワスプが生き残ってはいたが、ホワイトハウスは戦力の保全を優先した。

いや、これは正しくない。出撃はしたが、陣容が判明した瞬間に回れ右したのだ。

6対2である、小型空母が混ざっているとはいえ勝てる訳がない。

ポートモレスビーは機動部隊本隊の空襲と金剛型の艦砲射撃による援護の元で上陸した一個師団、応久してスタンレー山脈を突破した二個師団によってあっという間に制圧された。

GFは次の目標に再びミッドウェーを指定した。

昭和18年3月12日、全ての艦の修理、改装が完了した翌月、満を辞して第二次MI作戦が発令された。

これが第二次ミッドウェー海戦である。

日本は戦艦8、空母10という戦力を投入、これに対して米は新鋭のエセックス級2、修理が完了したエンタープライズ、ワスプ、サラトガ、ノースカロライナ級5を投入した。

最終的に日本側は瑞鳳、龍譲を失い、飛鷹が大破、大和と陸奥が小破した。

対して米はワスプとサラトガ、更にヨークタウンⅡ、インディアナを失い、損傷艦が山ほど出た。

なかでも悲惨なのはエンタープライズを拿捕された事だ。

米戦艦部隊が闇夜に乗じて前衛部隊に夜襲を仕掛け、救援のため別方向から進撃していた第一航空艦隊の砲戦部隊が偶然拿捕してしまったのだ。

ただ、輸送船団の三分の一を沈めた事は戦略的見れば評価できる。

結局は占領を許したが、陸軍部隊にかなりの消耗を敷いた。


昭和18年8月25日、遂にハワイ攻略作戦が発令される。

日本側は戦艦全て、空母も南方に残した龍鳳と護衛空母以外を全て投入、陸軍も精鋭四個師団を参加させた。

更に、ミッドウェーに陸海軍合同の特別航空隊250機が展開し、常にハワイに対して空爆を行っていた。

この時期になるとエセックス級が五隻は稼働状態にあり、更にインディペンデンス級が四隻戦力化され、戦艦も全て修理が完了していた。

米は、エセックス級4、インディペンデンス級4、ノースカロライナ級4、基地航空隊200機、陸軍三個師団で防衛体制を整えた。

ただし、航空戦力はミッドウェーに展開していた陸海軍合同航空隊で既にかなりの被害を受けていた、残るはほぼ旧式機で、とてもではないが戦力として換算できなくなっていた。

日本側は金剛型を除く戦艦全て、隼鷹型、鳳翔で編成された前衛部隊

金剛型、翔鶴型、赤城、加賀、飛龍、竣工後1ヶ月で参加した千歳型(戦況が逼迫せず、資材不足が無かったので予定道理竣工)、エンタープライズを改装した峰龍の機動部隊

の二手に別れて、北方海域より侵入した。

詳細は省くが、結果的に歴戦の空母飛龍が沈み、翔鶴が大破、さらに戦艦は山城が沈み伊勢が大破した。

母艦航空隊も無視できない損害を受けた。

一方、米はカンビアベイ、サウスダコタ、インディアナが沈んだ。

さらにエセックスが沈没寸前の被害を受けたが、持ち前のダメコン技術でなんとかサンディエゴまで持っていけた。

しかし、そのほかの艦もとても戦闘航海に耐えきれない。

もはやハワイから撤退するしかなかった。

戦艦10隻の援護の元、ワイキキビーチに強襲上陸した陸軍部隊はあっという間に橋頭堡を確保、住民の反発により市街地戦を放棄した米軍を追撃した。

オワフの攻略には半月かかった。

その間もミッドウェーからの航空支援、グェゼリンで補給した戦艦群の他島砲撃が続いた。


オワフ攻略後は他島の攻略に乗り出し、その間に真珠湾の復興作業が始められた。

ことに、重油タンクが残っていたのは暁光だ、さらに酷く痛めつけられていると思われた湾口設備、湾内で拿捕されたマサチューセッツ、アラバマ、他の旧式戦艦群、数隻の護衛空母にかんしても、数ヶ月の復旧作業で使用可能であった。



結果、現在はトラックを上回る根拠地として機能しており、ドッグを利用して艦艇のメンテナンスも可能、本土と結ぶシーレーンは常に対潜部隊が哨戒し、船団も護衛空母が必ず随伴するなど、まさに海軍の最重要拠点となっていた。


山口多聞中将は、MO作戦時、飛龍に座乗し、第二次ミッドウェー海戦に置いて前衛空母部隊の指揮官を担当、ハワイ攻略作戦は機動部隊を率い、勝利を手にしていた。

現在は第一航空艦隊司令長官とハワイ陸海軍合同司令部副司令を兼任している。



「動ける艦は?」


山口は第三艦隊旗艦、翔鶴に集まる参謀達と共に今後の対応策を考えるために、駆け足で長官艇に向かいながら問いかける。


「空母は赤城、翔鶴型、雲龍型2、大鳳、隼鷹型の8隻、それと信濃も後三時間程度で出撃可能になります。

戦艦は金剛、榛名、甲斐、駿河(旧マサチューセッツ、アラバマ)です。大和、武蔵、峰龍は現在本土での修理、整備を終え、グェゼリンを通過したころでしょう。

水雷戦隊は第二水戦が対潜任務の為に出撃するところでしたから今すぐ動けます」


「よし、ハワイ全域に警鐘を出せ。

全艦出港、信濃は燃料と弾薬の補給が完了し次第一航艦と合流するよう伝えろ」


「了解」


通信兵は近くの通信所に駆けていく。

山口は長官艇に飛び乗った。


(しかし何故この時期に……)


米海軍は一年間に及ぶハワイ奪還作戦が頓挫し、ノルマンディーでの苦戦もあって民衆の厭戦気分が高まり、外務省による和平交渉が始まろうとする頃である。

さらに言うならハワイ奪還作戦に置いて、アメリカ海軍は二度の決戦で空母6隻、戦艦2隻、小艦艇多数を失い、戦力がだいぶ減っているはず。

勿論こちらも加賀と龍鳳を失った。

しかし、米はどうやら最新鋭の艦艇を多数戦力化したようだ。



(戦艦戦力は劣勢、しかし航空戦力においては優勢、ただ敵艦隊がこれ一つとは思えない、どこかに攻略部隊と支援部隊が居るはず)



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