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京女の公爵令嬢×元・浪速のトップ嬢。アップデートは薫り高きビジネスマナー(EQ)と共に  作者: 高瀬 八鳳


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驚愕の事実と事業提携パートナー

 みんなが帰り、私は自室へとアイリーンをしれっと案内した。


 私と彼女の二人だけ。


 アイリーンを、部屋の窓際の席に案内する。

 しかし、彼女の視線は、ベッド際の書斎机に向いている。


(部屋の調度品でも、ドレッサーでもなく、今日のプレゼン資料が散らかっている机に目がいくのね。ますます期待できるわ……。虎も興味深そうにきょろきょろしてるし、どんだけシュールな図なのよ)


 はやる心を抑えながら、私はこう切りだした。


「単刀直入にうかがうわ。あなた、口は堅い?」


 真っすぐに見つめ返してくるアイリーンの返事は、大人しい平民少女のものでも知らんけどの口調でもなく、落ち着いたビジネスパーソンのそれであった。


「事と場合によりますけど、それが仕事、契約事であれば、120%秘密厳守します。お話は、こちらにも利のある、正当な取引でしょうか?」


「フフフフフッツ、よろしいわ。では、ここからは、商談ということで。腹を割って話しましょう。あんた……大阪出身ちゃう? あと、なんで背中に虎せたろうてんのん?」


 アイリーンは一瞬目をまん丸にしてから、すぐに顔面をくしゃくしゃにして嬉しそうに声をだして笑った。


「えええーー、笑ける、そうくるか! いや、マリアンヌ姐さんこそ、なんでそんなガチ関西イントネーションで喋れんの?」


「うちは、生まれも育ちも京都の真ん中、老舗旅館の娘やさかい。ほんまもんの京都人です。関西弁ネイティブではあるけれど、京都を捨てて東京へ行ったので、公式には第一言語は関東弁ですの。ホホホ」


「いやいや、びっくりやわ。ほな、うちらは元日本人で、いわゆる異世界転生したってやつ?」


「多分そうでしょうね。ところで、しつこいけど、後ろの虎が気になるんやけど」


「いや、姐さんこそ、狐様を守護者にしてどこ目指してはんの? ってか、虎って何?」


 互いに背後を見合いっこして、後ろの方の存在を確認する。


 とりあえずは、感情が高ぶったりした時のオーラがこういう形であらわれるんだろうという事で合意した。


 なぜなら、二人とも、他にそんなオーラをしょっている人間を見た事がないのだから。

 そして、先程の茶会でも、令嬢達は誰もアイリーンの虎に気づいていなかった事もその考えの材料となった。


 ちなみに、やっぱりアイリーンは例の球団のファンだったそうだ。


 ドット以外の人間とぶっちゃけトークをするのは初めてなので、めちゃめちゃ気分爽快!


 私達は思いつくまま、様々な事を話した。

 そして、どこかでボロがでたら困るので、お互いに今の名前で呼び合おうと決めた。


「そおか、お互いなんで死んで、こっちに転生したのかはわからへんのやな」


「私はついこの前、記憶を取り戻したところよ。アイリーンはいつ前世を思い出したの?」


「うちは、はっきり記憶とは認識してへんかってん。子どもの頃から、しょっちゅう大阪のことを夢にみて、話し方もこないやし、なんとなく前世なんかなあと」


 互いに、質問をしながら、この現状について理解をすすめると、さらに驚くべき事実が判明した。


「うっそ、マジで? 姐さんが、あの時のマナーの先生? 白川まりな先生なん? 『マナーは愛、そして武器。あなたの人生、マナーの知識でかえましょう』全6回、うち大阪から東京まで全回受講しに通ってたで!」


「うっそ! 毎回、前列で食い入るように私をガン見していた、あのピンクの髪のヒョウ柄シャツ着た派手なギャル? あの、通天閣でてっぺんとる為に勉強してるって質問ガンガンしてきたあいりちゃんが、アイリーン?」


「そうそう、それうちや! ほんまにすごい偶然! いや、でもさっき京都の老舗旅館の娘ってきいた時に、ん?って思ったんやで。ほんま姐さんには感謝してる。うちがナンバーワンになれて、トップを5年間はることができたのは、あのマナー講座のお陰やねん。毎回、講座終わりにしつこく相談にも乗ってもろて、ほんまにおおきに」


「どうりで、あなたの15度のお辞儀に既視感を感じたわけね。苦労していたあなたが、ナンバーワンになり、その座を5年間も死守したなんて……すばらしいわ。マナー知識が役に立ったと言ってもらえて、こない嬉しい事はない。アイリーン、こちらこそありがとう」


 互いに、しばしウルウルと感慨深く見つめ合う。こと約3秒。

 私は意識をビジネスモードに切り替えた。


「さ、再会の喜びに浸るのはこの辺にして、商談にうつりましょう。私の方からはプロジェクト(仮)環境改善コンサル企画。名づけて『淑女の楽園計画。殿方に知恵を授け、掌の上で転がす為の甘い罠』へのご参画をぜひお願いしたいと思います。クッツクッツ……」


 つい、興奮して、笑いが漏れてしまった。

 アイリーンも大笑いしながら机をバンバン叩いている。

 虎も、そして私の狐様も、心なしか興奮している喜びの表情にみえる。


「姐さんも狐様も、えらい悪い顔してはるで。しかも、何っすか、その奇妙奇天烈なプロジェクト名は。詳しく聞かしてもらうとして、忘れんうちに言うときます。まもなく、婚約者のヒューイットとそのご両親と一緒にうちら新しい宿屋をオープンする予定やねん。元々、地方貴族の方の滞在用のお屋敷だったものを買い取ってリフォームしてます。で、ターゲットは裕福な平民、下級貴族の方々、そして地方や海外からのお客様です」


「なにそれ、おもろいやん! この世界では宿といえば平民用で、貴族が泊まる場所ってないもんな。 アイリーン、まさか高級ホテルをつくるん?」


「ご名答! うち、実は姐さんが京都の旅館の娘やって聞いて、憧れてたんや。キャバ嬢やめて、いつか旦那さんと一緒に小さい宿とかホテルやれたらええなあって」


「すごい、前世からの夢が叶うじゃないの! がんばってるのね、アイリーン。しかも愛しのダーリンと一緒って、ドラマみたい」


「愛しのダーリンって……姐さん、冷やかさんといて。まあ、めっちゃええ人なんよ、ヒューイットは。派手さはないけど、大らかで、働き者で」


 私は頬を染めるアイリーンに対し、パンパンと両手を叩いた。


「はいはい、お惚気はあとでじっくり聞かせていただきまひょ。まずは、お仕事お仕事、よろしおすか?」

 

(ちょっとちょっと、大丈夫? 前世で5年間トップをはった元キャバ嬢。男性への免疫はあると思うけれど、ホストにはまる嬢の話も聞いた事があるし、心配ね。仕事のできる女性がつまずく原因の、堂々ナンバーワンが恋愛脳の肥大だもの。いいわ、このマリアンヌ様のお眼鏡にかなうかどうか、じっくりみせてもらいましょう。えらい、楽しみやわあ)


「すんません、そやな。気合入れていきます。とにかく、リフォームとはいえ、お金を先出してるので、しっかり儲けて回収していかなあかん。その為には、お金を出し惜しみしない上客、太客をつかみたい。玄関ホールとレストランは共有やけど、3階が貴族フロア、2階が市民フロアとわけるつもり。そして、スタッフにマナーを勉強させて、身分の高い人にも対応できるようにしたい思てます」


「なるほど。貴族に対応できるレベルのマナーを身につければ、海外からのお客様にも応対できるわね。裕福な平民層にも、丁寧なサービスは受けると思うわ。マナーをホテルのブランド化のソフトに組み込み、良質な客層が集まる場所にするのね」


「そやねん、差別化をはかるために、ハード面では元貴族館を使用し、ソフト面でスタッフの一流のもてなし術にしたら、ホテルのイメージが固まるやろ。そこで、姐さんの出番や」


「よろしくてよ。そのホテルが、私の初B to B(法人相手の形態)クライアントね。誠心誠意つとめさせていただくわ。スタッフの皆様が悲鳴をあげるほど、みっちり教育いたします。お値段は初回限定サービス価格で提供するわ。そのかわり、ホテルに食堂スペースがあれば、そこを布教活動、つまり私のB to C (個人客相手の形態・デパートや小売り等)企画の提供場所として使わせてもらえる? 色々な講座をひらこうと思ってるの」


「しっかりしてはんなあ。まあ、その初回限定価格が、いくらでどこまでやってもらえるのか、伺いましょか」


  私もアイリーンも、ビジネスモードに入ったのがわかった。顔が、目つきが、互いにはっきりとかわったのが見て取れた。


 それと同時に、まったりしていた、アイリーンの虎もグルルルと唸ってそうな、恐ろしげな表情にかわった。


(おもしろい、仕事相手は、そうでないとなあ!)


 そんな熱い場面が展開されていた頃。


 王城では……第三王子シールは、王家専門の帝王教育に派遣された教師から逃げ出して、庭をぶらついている。


「あんな小難しい勉強、冗談じゃない。学園でも勉強ばかりなのに、自由時間を削られて、勉強ばかりじゃ息がつまるよ。それに、婚約者のララネは美しいけど、いつも怒っていて小言も多いし、つまらない。その点、あのピンクの髪の平民は、貴族令嬢にない可憐さがあるんだよな。顔も綺麗で無口で奥ゆかしい。今度の学園パーティーでは、二人っきりになって楽しく過ごそう。王子に見初められるなんて、平民には想像もできないだろう。あの子、嬉し泣きしちゃうかもな。フフフ、僕って罪な男だ」


 ニタニタと想像しながら笑う第三王子。


 少し離れた位置から王子を見守る侍従達は、その不穏なひとり言を聞いて額に手を当てるのであった。


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