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京女の公爵令嬢×元・浪速のトップ嬢。アップデートは薫り高きビジネスマナー(EQ)と共に  作者: 高瀬 八鳳


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22/22

とりあえず大円満、またはリスタート

 断罪回避の御前プレゼンから2か月後。

 淑女の会の「第一回総会」がホテルで行われている。


 メンバー大集結。

 アイリーン、ノートン夫人やララネをはじめとする会のコアメンバー、ウルリカ嬢、キャサリン嬢、セリーヌ嬢も勿論前にずらりと並ぶ。


 出席ドレスコードは「自分史上、最高に攻めたお洒落をすること」。


 皆、思い思いに、好みの衣服で参加する。


 一般的な貴族のドレスや、昔のドレスを自分でリメイクしたもの、平民がワンピースの裾を足し貴族ドレス風にしたもの。リボンやレースを貼ったり色とりどりの、わりと個性豊かな仮装大会に仕上がっている。


 さすがに、まだ男性の衣服を着る女性はでてきていない。

 だから、今日の私のいで立ちは、衝撃的だと思う。


 さながら女性だけで構成される宝塚歌劇団のトップ男役スター的な凛々しさがあるのではないかしら。


 自画自賛だけど。


「えええ? だ、男装? マリアンヌ様? す、素敵すぎる……」

「尊い……今日もマリアンヌ様は尊過ぎる……」


 この衣装は、サイファからのプレゼントだ。つまり、ドットが彼におねだりした結果だ。


 王宮御用達デザイナーがつくった、体にフィットする男性の衣服を着た私。なぜか、これでもかってほど金ぴかで、豪華過ぎる印象だけど。


 そして、結婚して髪を上げる夫人とは一味違う、短髪に見えるようなヘアアレンジをドットに施してもらった。

 自分でも悪くないと思う。


 というわけで、今日の立ち振る舞いは、男役さんのイメージで。


 まずは、私の挨拶で会がスタート。


 雄々しく見えるように両足を広げて皆の前に立つ。


「皆様、アップデート淑女の会へようこそ」 


 話をしながら、この1年のことが走馬灯のように思い出される。




 ララネ、アイリーンとの邂逅により、記憶が戻る。


 アップデート淑女の会の設立、サブスク化した講座と新聞づくり。


 ホテルオープンサポート、スタッフ教育。


 トラブル対応やドット、サイファとのやりとり。


 アイリーンとの大浴場や愚痴会、そして、最後の大勝負。


 断罪回避と、みんなとの連携。




 感謝と、喜びを感じながら。


 言葉に力をこめて、参加者みんなに語り掛ける。


 目をウルウルさせて私を見つめるララネやコアメンバーたち。そして、第一期生、二期生の古参会員となった皆様方。

 タチアナと宰相夫人の姿も見える。


「なんて、素敵! 男装姿なんて、さすがマリアンヌ様」


「ああ、今日もマリアンヌ様の尊いお姿が拝見できて幸せですわ……」


「あの手の動き、目線、凛とした姿勢。どれもが完璧ですわ」


 新規の会員も、なんかよくわからないままに、その熱気にのみこまれて、さながらライブ会場のような異様な盛り上がりになった。


 私の次に、アイリーン、ノートン侯爵夫人、そしてララネが挨拶と、今後の会の方向性などを説明し、これまでの収支報告書と特別会報を皆に手渡した。


 ここで、総会はいったん終了する。


 その後は、軽食付きプロモーション体験会へと移行。 興味がある方々に、会の説明を行うイベントだ。


 新しく講師となったララネ達が前に立ち、こんなことを学べるのよ、とプチ講座を行う。


 なぜか、アシスタントをシール王子が務め、ララネ専用の豪華な木枠ホワイトボードを運んで手伝っている。まんざらでもない表情だ。


 参加するのは貴族令嬢、平民女性、そして貴族の奥様方。ちらほらと男性の姿も見える。



(え、もしかして、あの柱の後ろにいるの、お兄様? いやいや。さすがにそれはない……ことなかった。隣にいる、手にオコノミヤキ持った女性、あれお母様だわ。……ここであの2人を見るなんで、ほんま何やこそばなるなあ)



 何とも言えない、嬉しくもむず痒い気持ちに襲われて、私は扇で額を押さえながら視線をよそにむけた。



 机の上には、大きな皿の上に、小さな容器が5つ並ぶ。

 小さく切られたオコノミヤキ、カレーもどき、きなこ団子に、美しく盛られた苺と桃、そしてさっぱり風味のレモンゼリーが。


 お皿の横には、紅茶と生姜湯風の甘い飲み物が添えられている。


(オコノミヤキとカレーもどきはどちらも匂いが強いから、どちらかにしたら?と言うたんやけどな。アイリーンは頑なに、カオスな魅力満載でええねん、どっちも食べてほしいからこのままいく!って言い張ったしなあ)


 このミニ会席料理のような一皿は、ホテルの人気メニューを少しずつ試せるとあり、講座内容と共に人気の体験コンテンツとなっている。


 体験会はララネ達に任せ、私とアイリーンは2階へあがり、そこから会場を見ている。



「アイリーン」


 そこへヒューイットがやってきた。


「あ、お疲れさん、ヒューイット」


 手を握り合う二人を横目でみながら、私は呆れ顔で言う。


「あらあら、いっつも顔合わせてはんのに、相変わらずお熱いことで」


 テへへと照れ笑いをする二人。


 そして、アイリーンが何かを見つけ声を上げた。


「あ、ほら、あそこ。重たい執着系の王子様と、猫可愛がりしてくるお姉さんメイドが、姐さんのこと探してんで。やっぱり、絶対来ると思てたわ」


 アイリーンの指さす方をみると、1階にきょろきょろとしながら、柱の陰にいる二人と後ろに従うブルーノの姿が。


「今日は来なくていいってあれほど言うたのに。……まあええわ。避けては通れない案件やもんな。恋愛脳をコントロールしてこそ、ビジネスパーソン。私も気合入れて、仕事もプライベートもバランス取りながらいきましょ」


「プライベートか仕事と愛の両立、とは言わへんのやな」


「そんな言葉、恥ずかしいてよお使わんわ。まあでも、サイファ様はBPからアライアンスパートナーに格上げしたわよ」


 サイファを見つめる私の心は、思いの他、温かく満ち足りている。


 私を見つけたサイファが小さく手をふった。


(……あかん、そんな嬉しそうに微笑まれたら、恋愛脳が肥大してしまう。気をつけんと、彼はただの優良株とはちがう。いつ暴落するかわからんリスクをもった人気商品やわ。でも……。熱のこもったあの瞳で見つめられるの、嫌いじゃないわ。)


 つられて、つい口元が緩む。


 私の笑みをみて、サイファがより一層、嬉しそうに顔をほころばせた。

 後ろの白狐様が九尾の尻尾をブンブン振って、私だけでなく、アイリーンや虎さんをバシバシ叩いている。


 実際には、物理的に叩かれているわけではないのだけれど、勝手に私の心情をあらわすのはやめてもらいたい。


 横からにやにやしながらアイリーンがつっこんでくる。


「はいはい、アライアンスパートナーですか。まあ、呼び名は何でもええですけど。あないなサイファさんの無垢な笑顔は初めてみるわ。姐さんも、まんざらでもないんやろ? モナ・リザ顔が崩れて、嬉しゅうて仕方ない小学生みたいなリンゴ顔になってんで」


「ちょっと、からかわんといて」


「ええやん、相思相愛でよろしいやんか! まあ、うちらほどやないけど。な、ヒューイット?」


「はははっ、アイリーン。君は最高に素敵だよ」


 アイリーンを抱きしめるヒューイット。


(相変わらず安定のバカップルぶりで、今日もよろしおすなあ。まあ、今日の所は大目にみとくけど。……確かに、私もサイファをみると、なんとも言えない気持ちが、こみ上げてくる。私は、私達は、アイリーンとヒューイットみたいな関係になれるのかしら……?)


 窓からは、爽やかな風が入ってくる。


 サイファ、ドット、そして複雑な目でドットを見つめるブルーノが階段からあがってくるのが見えた。


 私の後ろの狐も、アイリーンの後ろの虎も、落ち着いたようだ。

 白狐様は、いつの間にか、虎を枕にしてうたた寝している。


 シュールな図だわ……。


「……なかなかごっつい1年間やったな、姐さん。まあ、でもうちら、ようがんばってきた。たいしたもんや」


 いつになく、しんみりとするアイリーンに私は答える。


「いいえ、アイリーン。ここからよ。私達の伝説は、これから始まるのよ」


 私はアイリーンに握手を求め、手を差し出した。


「今後ともよろしくね、相棒さん。今更、嫌だといっても離さないわよ」


 アイリーンが目に強さを取り戻し、二かっと笑う。


「こっちのセリフやで、姐さん。うちは、美味しい商売は逃がさへん。これからも頼んます!」


 私達は、しっかりと手を握り合う。


 窓から差し込む夕日が、私達を祝福してくれているようだった。



***おまけの話***



 ホテルの裏口で、サイファを待つ二人。


「ドットさん、ちょっと相談いいっすか?」


「なんでしょう?」


「正直、オレ、(あるじ)がマジ怖いっつうか、気持ち悪く感じる時があるんですけど。そういう時は、どうすればいいですかね?」


「まあ、あなたの主なら、そう感じるのは当然ですね。狂犬味が過ぎますから」


「き、狂……。いや、さすがにその呼び方はまずいっすよ」


「それは失礼しました。私は私の主の為に、言葉の刃を研がなくてはならないので、つい」


 ブルーノは、ドットの戦闘シーンを思い出した。


(いや、もう充分強いのに、これ以上努力するの? すげえなあ)


「言葉の刃、っすか……。オレも、研いでみようかなあ」


 ブルーノの言葉に、フッと笑みを浮かべるドット。


 その笑顔を見て、鼓動が早まり、顔が赤くなるブルーノ。


「あなたの主が到着しましたよ。さ、はやくお嬢様の元にまいりましょう」


 さっさと歩きだすドットの後ろ姿を見ながら、ブルーノは心の中で呟いた。


(主も怖えけど、この人も超怖え。だけど……笑顔はクソ可愛いいんだよな。オレも、ちょっとは彼女に近づけるようにがんばってみるか)


 手ごわいヤンデレ王子を相手に対等に話すドットの後ろ姿に、ブルーノは尊敬と憧れと加速する恋心を覚えるのであった。


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