第23回配信「久方の思い出」
「あ、えっと、ラジオの前の皆様、こんにちは
さちです。」
「・・・・・・ノワよ。」
「本日もウィッカラジオやって行きたいと思います
視聴者の皆様はチャンネルをそのままに、最後までお付き合い下さい。」
「・・・・・・よろしく。」
「とは言ったものの、今日は一体どうしたんですか?
まだ雨乾都市まで辿り着いてないですよ。」
「うん・・・・・・ちょっと、ね。」
「ちなみに、現在は平原にある冒険者用の宿泊小屋で休んでいます。」
「見晴らしのいい、平原に、テントを建てるのは、外敵に襲われる観点からも、危険。」
「なので街道沿いにいくつか小屋があって、自由に利用していいようです。」
「そう言うわけで、今日は平原の真ん中から、お届け。」
「では、こんな場所からになりますが
とりあえず放送スタートですっ。」
「で、わざわざこんな場所から放送して何をするのでしょう?」
「こういう場所もある、って言うのも、伝えれればいいかなと。」
「それは次の街で道中の様子で言っておけばよかっただけのような気もしますが。」
「あと、何か今日は、さちがずっと、上の空だったから、気になって・・・・・・。」
「え、そうでしたか?
だとしてもわざわざ公開で聞かなくてもよかったような。」
「その辺りも含めて、旅の様子?」
「えぇ、そう言うものなのでしょうか?」
「で、どうしたの? いつもと様子が、違ったけど。」
「別に何もないですよ。」
「その割には、空見上げてたり、ぼーっとしてたり、何か悩んでるような?」
「うーん、まぁ、何と言いますか。」
「言いにくいことでも、リスナーさんなら、解決策があるかも、しれない。」
「いえ、悩みとかじゃないんですよ。」
「じゃあ・・・・・・なに?」
「ちょっと昔の事を思い出してまして。」
「昔の事・・・・・・?」
「えぇ、今日は私の名前を付けてくれた方と色々あった日なんです
それでその人の事をちょっと思い出してしまって・・・・・・。」
「さちの・・・・・・大切な、人?」
「はい。感謝してもしきれないぐらいお世話になった人です。」
「ふむふむ、どんな人だったか・・・・・・よかったら、ちょっと聞きたい。」
「まぁ、聞かれて困る話じゃないですしいいですけど。」
「じゃあ、お願い。」
「えぇ、まぁ公開放送なのもあって本人のプライバシーのために名前を伏せさせていただきますが。」
「そこは、当然・・・・・・。」
「私が人間の姿を取れるようになって、住んでたダンジョンから出たばかりの頃です。」
「かなり、最初だね。」
「えぇ、その時はまだ人間社会がどんなものかも知らずに勢いだけで行ったんですけど
最初に辿り着いた街が偶然世界の中心の一番大きな街だったんです。」
「運が、いいの・・・・・・かな?」
「逆に右も左も人間ばっかりですし、色々なものが溢れかえっていて
かえってどうしていいのか分からなくなってしまいまして。」
「たしかに、逆に分かりにくい、かもね。」
「とりあえずそこで色々と調べた結果、欲しい物を手に入れるにはお金と言うものが必要だと分かったんです。」
「今でも、路銀のやりくりは、苦労してるからね・・・・・・。」
「そこから色々と調べたりして
生産素材を取り扱う商人さんのところで働かせて貰える事になったんです。」
「ふむ、よかったね。」
「それから毎日素材を集めるのに奔走したんです
それで、ある日その商人さんのところに素材を買いに来た冒険者さんの案内をする事になったのです。」
「案内、何の?」
「ちょうどその素材の在庫がなかったので、冒険者さんを案内して一緒に取りに行ったんですよ。」
「なるほど・・・・・・。」
「ですが、そこで色々とトラブルがあった結果
私は商人さんの下を出て行く事になったのです。」
「せっかく、仕事を、見つけたのに。」
「そうしてまた行く先がなくなった私を引き取ってくれたのが
その時商人さんとのやり取りを見ていた、いえ、商人さんに言われるがままだった私に
やりたい事を気付かせてくれた冒険者さんだったんです。」
「やりたい事って、お金を貯める以外に?」
「いえ、お金を貯めるためと割り切っていましたが
やってて嬉しくない仕事も混ざっていましたので。」
「なるほど・・・・・・。」
「で、そこからその冒険者さんのところに住むようになりました
一緒に世界各地のダンジョンに挑んだり、採集とかの依頼をこなしたり
お知り合いの方がやってる冒険者酒場で一緒になってアルバイトしてみたり
人間社会や冒険者としての生活の事を習いながら、そうやって色々なところに着いて行って暮らしたんです。」
「それで・・・・・・今も、冒険者を続けてる、と。」
「はい。本当に色々教えてもらいました
それがなかったら人間社会に馴染めずに、欲しかった本とかも諦めて故郷のダンジョンに帰っていたかもしれません。」
「いい人、だったんだね・・・・・・。」
「えぇ、冒険者仲間の間ではお人好しとか、むしろお節介とか
そう言った感じで言われてましたけれど
とにかく困っている人がいたら声を掛けずにはいられないような、そんな方でした。」
「たしかに、私たちは、今も旅はしてるけど、人助けは、した事ない。」
「そうですね。まだまだ他人の事まで気にかけれるほど実力もないですし
やっぱり知らない方に声を掛けるのは苦手ですしね。」
「私も、直接話すのは、苦手・・・・・・。」
「まぁ、そんな感じで色々教えてもらってる時に
名前がないと不便だからって『さち』って付けて貰ったんですよ
もっとも、口頭でしか使わなかったので正確にどのような文字を書くのか分からないんですけど
そういう人でしたから、『幸せ』の字じゃないかなぁとか勝手に思ったりもしてますが。」
「でも、さちは、違う字で名乗ってるよね?」
「えぇ、その冒険者さんをはじめ、冒険者酒場でお世話になった人や尊敬する人から
そういう人を目指したいって意味も込めて名前の字をお借りしたんですよ。」
「それで、今の字?」
「はい。さんずいに少しに、知るで『さち』にしようと思ったんです。」
「その字に、そんな意味があったんだ。」
「さて、話は戻りますがそんな感じで冒険者として困ってる人を助けたりとか
そう言うのにご一緒していたのですが。」
「何か、あったの?」
「えぇ、とあるトラブルの解決のために活動していた時に
他の冒険者さんとの間でかえってトラブルになってしまったらしくって
冒険者としての活動を大幅に縮小する事になってしまうんです・・・・・・。」
「・・・・・・そんな、頑張っていたのに?」
「はい。多くの人と交友を持つと言うのは
その分だけ多くの方向からトラブルに巻き込まれる可能性も上がってしまうんです。」
「・・・・・・何だか、理不尽。」
「その頃にはすっかり冒険者として人間社会で生活できる程度には知識も経験も溜まってた私は
その人が信頼する別の冒険者さんに託されることになったのです。」
「その人は?」
「その人が、今の私やノワさんのパートナーであり
この世界に飛ばされた時に離れ離れになってしまったあの人なんです。」
「なるほど、そうやって出会ったんだ。」
「はい。元々お二人は仲のいい冒険者でよく遊びに行ったりしてましたので
私も一緒に行ったりして面識があったので、特に問題なくその人のところへ移る事になったんですけどね。」
「それで、活動を縮小したその人は、どうなったの?」
「しばらくしてほとぼりが醒めたぐらいに冒険者としての活動を再開して
たまに一緒に冒険に行ったりとこの世界に飛ばされるほんの前まで良好でしたよ。」
「そう・・・・・・ならよかった。」
「ただ、この世界に来てから数年
ずっと私とノワさんだけでしたから、お二人とも元気にしているのか心配ではありますが。」
「やっぱり、会いたい?」
「えぇ、会って色々な事を話したいですし
それに、お世話になった分をまだお返しできてませんから。」
「そう・・・・・・だよね。」
「まぁ、そういう感じで、色々教えてくれて名前も付けてくださったとある冒険者さんと
印象深い出来事があったのが数年前の今日だったので
ふと思い出してしまったんですよ。」
「その出来事は・・・・・・?」
「先方の許可がないとこればっかりは喋れません。」
「じゃあいい、プライバシーには、配慮する。」
「すみませんね。」
「それこそ、どこからトラブルになるか、分からないし・・・・・・。」
「では、昔話はこれぐらいにして進みましょう
急に別の世界に飛ばされるぐらいですから、急に何かのはずみにまた出会えるかもしれません。」
「分かった、話してくれて、ありがとう。」
「と、言うことですが目的地は雨乾都市のままでいいんですよね?」
「うん・・・・・・ルートもそのままだし、もう少し進めば、着くはず。」
「では次はそこに着いたら通常の放送ですね。」
「そうね・・・・・・今日は、急な放送になったから。」
「まぁ、不特定多数の視聴者さんの前で自分の事を話すのはちょっと恥ずかしいですけど
ノワさんが私の事を心配してくれたのは嬉しいですから。」
「そこまで、心配してない。」
「そこは素直に受け取ってくれていいんですよ。」
「素直も何も、ない・・・・・・。」
「またまたー。」
「とりあえず、尺的にはそろそろいいから、終わる。」
「今日は私の昔話に付き合ってくれてありがとうございました
次回は通常の放送をやっていくつもりです。」
「それまでに、また感想機能から、感想、要望、その他色々を、待ってる。」
「現在募集強化中のお題は
今年になって自分のここを変えたい場所
冒険の疲れを取るための視聴者さんお勧めの方法
の、2つとなっております。」
「じゃあ、次回の放送も、楽しみにして、欲しい。」
「本日はこれにて終了です。お疲れ様でした
お相手はさちと。」
「・・・・・・ノワでした。」
「今までもありがとうございました、そしてこれからも頑張ります
・・・・・・お姉さま。」
「ん、今ちょっと聞こえなかった。」
「何でもないです、また次回お会いいたしましょう。」
「・・・・・・またね。」




