表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/100

第六十六回 理想と秩序

 とある領国にて若い公子へ、王位が継承されることとなった。そこへ立ち寄った、旅の賢者。若い王は助言を求めて、さっそく賢者を王宮へ呼びました。

「いかにすれば、誰もが望むような素晴らしい王土を築けるのでしょうか。先生、この若輩めに、あるべき法の姿を御教授ください」

 熱意に満ちた王の眼に、賢者は思わず自分が秘めていた理想を語ってしまいます。

「ひとりひとり、民の声を聞くのです。そうして民の持つ不満を解消してあげなさい」

「なるほど、確かに民から不満がなくなれば、国に喜びが満ちるのは当然」

「ただし、ここが難しいのですが。王たる者、易々と法を曲げてはなりませんぞ」

「確かに。法あっての国ですからな」

「その両方を同時に成り立たせるのです。きっとあなたならば、成し遂げられることでしょう。健闘を祈りますぞ」

 全て語り終わり、賢者は満足して領国を立ち去りました。


 そして数年後。遊説先で賢者は恐ろしい噂を聞きます。

 その国を統治するのは残虐極まりない暴君。民は牛馬のごとく、こき使われて常に飢えている。王に逆らえば何人たりとも即座に処刑され、道に死体の絶えた日はない。それこそ、むかし賢者が教えを説いた王の領国だという。

 我が教えを守れば、理想通りの国ができているはずなのに、一体どうしたことか。義憤に燃える賢者は、領国へと急ぎ向かいました。


 果たして賢者が見たのは、噂以上の有様です。枯れた畑には、飢え死んだ人が山となりうち捨てられ、大路には処刑され磔になった死体が並んでいる。ところが丁重に迎えられた王宮は、多くの玉璧で豪奢に飾られ、鎖で繋がれた奴隷に溢れていました。

 光沢ある絹の衣を着た王が現れると、賢者は怒りを抑えきれず、すぐさま王に問いを投げかけます。

「これが、これこそが貴君の目指した王土だというのですか!?」

 すると王は賢者にひざまずいて礼拝を取り、自慢気な笑顔で答えました。

「確かに、最初は私も困りました。いくら民の不満を聞き望みを叶えても、後から後から下らない不満が出てきて尽きることがない。これでは国の法が守れるわけがありません。

 ですが、すぐにあなたが真に伝えたかったことは分かりましたよ! 不満を消すのではない。下らぬ不満など持つ、民の方を消せば良かったのですね。

 私はすぐさま、国への不満を持つ民を処刑する法を作りました。おかげで今や、誰もが我が国への満足を口にするようになりましたよ」

 そこで王は再び賢者へ、今度は最敬礼でもって感謝の意を伝えた。

「ありがとうございます。これで不平不満を持つ民すらいない、我が思い通りの国ができました」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ