第四十六回 尻とポエム
「地球は滅ぼうとしているッッッ! どうも司会の世紀末科学研究家ケケバヤシです」
そのテレビ番組は、いきなり男のドアップからはじまった。
「さて今回は緊急特番、生中継。果たして地球は滅ぶのか!? 恐怖の大予言の謎を解明しようと思います。
ではゲストを紹介しましょう。国民的アイドルにして、予言者。伸虎玉恵さんでーす」
営業スマイルで手を振る美少女。彼女こそ国民的アイドルにして、絶対に外れない予言を行うという占い師であった。
ただしその予言は、三行詩の形式で行われる。しかも内容は曖昧。ゆえに玉恵に神託が下り、予言が行われるたび、国民は注目していた。そして、どのような未来が予知されたのか。こぞって具体的な未来を予測するのである。
「さっそく、今回の予言。視聴者の皆様、御覧ください」
だが今回だけは、そんな呑気な雰囲気はなかった。フリップに描かれた三行詩が提示された瞬間、スタジオからどよめきが起こる。
フリップには、こう描かれていた。
明かされる真相
その時、世界よ滅べや滅べ
三行詩ではない。二行しかない。更にこの不吉極まりない内容である。恐怖を覚えない者などいなかった。
「予言したわたしにも最後の三行目が分からないんです。もう恐くって恐くって……」
玉恵も健気に青ざめている。だが司会者は自分をサムズアップで指さすと、
「ですが安心してください、玉恵さん! この謎……世紀末科学研究家ケケバヤシこと、わたくしが解いてみせましょう」
頼もしく返事した。
「推理タイム、スタァトゥッ!」
この際、三行詩の意味は置いておこう。問題は形式だ。なぜ最後の行がない。いや、待てよ……最後ということは、ケツだ。
そして自分でも見られない自分の部分とは、すなわち……尻!
「全て謎は解けた!」
ケケバヤシは叫ぶと、玉恵に襲いかかった。スタッフが取り押さえる暇すら与えない。暴れる玉恵を組み伏せながらミニスカートをめくり、パンツを剥ぎ取り、アイドルの可愛いお尻を白日の下にさらした。
するとそこに何か文字が描かれている。
「見てください! やはり予言者自身のお尻にこそ、三行詩の最後の行は刻印されていたのだ。
ほらほらカメラさん寄って寄って。えっとー、何て書いてあるんだ?」
と予言者は訴え叫ぶであろう
ケケバヤシが詩を読んだと同時に、玉恵は拘束を振りほどいた。玉恵は逃げると、素早くパンツをずり上げ、スカートの裾を抑えながら泣き叫ぶ。
「うああ恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい。嫁入り前の体なのに。誰にも肌なんて見せたことなんてないのに。全国放送の、しかも生放送でぇぇぇ。
滅べー。もういっそ、世界とか滅んでしまえぇぇぇ!」
えっとー。ケケバヤシは状況を頭の中で整理する。三行詩とはつまり総合すると。
明かされる真相
その時、世界よ滅べや滅べ
と予言者は訴え叫ぶであろう
イコール「お尻が丸見えになって、予言者が叫ぶ」となる。なるほどな。予言は的中したということか。どうやら地球の滅亡は免れたらしいな。この、ケケバヤシの手によって!
と綺麗にまとめようとしたところで、ケケバヤシは屈強なガードマンたちに連行された。
以上が騒ぎのケツ末である。尻だけに。
ケケバヤシはその後、グッジョブと称えられもしたが。さすがに仕事を干された挙げ句、玉恵のファンからは石持て追われる身となった。
だがケケバヤシは反省するどころか、挫けなかった。いやはや。地球滅亡の危機を救った英雄が匹夫扱いとはな。ヒップだけにね。
毎度お馴染み。小説書き仲間の紅月赤哉さんからのリクエストになります。