第四十四回 女王と蓋
大国に嫁いできた女王様は、明るい性格で民からもすぐ慕われるようになりました。ところが大臣たちはそれが気に入らない。
小国の出に過ぎない田舎娘では、我らのような歴史ある大国に相応しくない。もう少し品性を備えてくれないものか。女王様は性格が明るいのではない、単にお喋りなだけだ。口に蓋でもしてくれないものか。大臣たちは女王様の及ばぬ場所で、大いに陰口を叩きました。
流石の女王様も、大臣たちの悪口が続けば参ったものではありません。明るかった城内は、しだいに雰囲気が暗くなり。女王様の心労も募るばかりでした。
そんなある日のこと。
舞踏会に登場した女王様を見て、出席者たちは驚きました。女王様は冠の代わりに、鍋の蓋を頭に載せていたのです。
女王様の悪口をいってた大臣たちは大爆笑。ところが女王様は口をつぐんだまま、何も喋ろうとしません。そのまま気まずい時間が過ぎました。とうとう沈黙に耐えられなくなった者が、女王様に質問します。
「女王様はなぜ鍋の蓋を頭に載せてらっしゃるのです? 何も仰らないので、皆が困っております」
「あら、我が国では王権の象徴たる冠ではなく、鍋蓋にこそ品格が宿るもの。臣下たちは鍋蓋に忠誠を誓うものと聞いたのだけど……違っていたかしら?」
この返答に、悪口の主である大臣たちは、大いに恥をかくことになりました。さらに噂は国中に広まり、不忠の大臣たちは笑いものとなります。
というわけで今度は大臣たちが口に蓋をする番でしたとさ。