表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/100

第四十回 占いとナノマシン

 深宇宙探索の旅より、宇宙船は無事に着陸。ノーツ宇宙飛行士が下船し、無事な顔を見せると、群衆から歓声が上がった。偉大な業績に、ノーツは英雄として迎えられたのだ。

 だがノーツに今すぐ必要なのは、凱旋ではなく、休息である。ノーツは高級ホテルの一室へと通された。

「それで、私が出発してからの詳細な歴史について教えてはくれないかな?」

 ノーツの搭乗した宇宙船は、亜光速船であった。よってウラシマ効果により、船内では三年しか経過していないのに、地球では三十年の月日が過ぎていたのだ。休息も大事だが、ともかくは現状の立ち位置が知りたかった。

「了解しました。では、こちらを御覧ください」

 世話役の女性が端末を操作すると、空中に映像が投影される。

「ノーツ様が出発されてから二年後。ビッグブラザー様という偉大な科学者により、特殊なナノマシンを散布する計画が立案、実行されます。

 御存知のようにナノマシンは暴走すると重大な事故……異常増殖を起こす、いわゆるグレイ・グーを起こしかねません。ですから、使用者からは何らかの指示を受信する機能を持たせませんでした。

 代わりにビッグブラザー様はナノマシンに、情報を送信する機能だけを持たせたのです。そしてナノマシンは地球上のあらゆる水分子に浸透。人類は地球上で発生しうる全ての災害を完全に予知できるようになりました」

「へえ、そりゃ凄い」

 ノーツは純粋に関心し、テーブルの上に置かれたミネラルウォーターを飲もうとした。その瞬間、ホテルの外壁が爆音と共に崩れる。崩れた外壁の中からは、銃を持った男女数人が出てきた。

「動くな!」

 銃口を向けられては敵わない。世話役もノーツも両手を上げる。

「来い!」

 あれよあれよという間に、ノーツは正体不明のテロリストたちに拉致されてしまった。大急ぎでホテル前に駐車してあった自動車に乗せられ、猛スピードで走り出す。

「で、どうして私が誘拐されなきゃならんのか。理由くらいは説明してくれるかな?」

 するとテロリストのひとりが、深々と頭を下げた。

「申し訳ありません、ノーツ様。ですが貴方は我らレジスタンスに残された、唯一の希望なのです」

「希望?」

「はい。ビッグブラザーの散布したナノマシンは、確かに何の操作もできません。ですが、地球上全ての水分子に浸透し、あらゆる情報を支配できるようになったのです。もちろん、人間の体内にある水分まで。

 結果、人類は全てのプライバシーを失いました。抵抗の意思を持つ者は、全てビッグブラザーに筒抜けになり処刑されます。唯一、ナノマシンに汚染されていないノーツ様こそが……」

 といいかけて、彼の頭蓋は木っ端微塵になった。どこからか狙撃されたのだ。次々に他のレジスタンスたちも狙撃され殺される。異常なまでに正確な狙撃だ。いや違う。例のナノマシンで、レジスタンスの位置を把握できたからこその精度なのだろう。これが、全人類をも監視するというビッグブラザーの力なのか。

 運転手を失った自動車は、街路樹に激突して停止する。ノーツは割れた自動車の窓から這い出た。逃げなければ。だが、どこへ?

 蛇口を捻れば水道水が溢れ、空には雲。川は流れ、海は延々と続いている。この地球上で水のない場所なんて……どこにある?

 抜けるような青い空の下、ノーツは絶望に立ちすくんだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ