第四回 牛と消滅
遂に宇宙人と地球人との対談が始まった。
「ほほう、するとあなたは地球でいうところのスポーツ選手のようなものということになるわけですな」
「私の場合に限っては、またスポーツ選手とも違ってくるかもしれません。むしろ、日本文化圏におけるブシドーとかタオといった概念に近いでしょう」
「その違いとは?」
「ほとんどの者はレジャー、エンタテイメントとして行うものなのですが。私は手段が目的になったといいますか。《極める》のを目指すようになったわけです」
「極めると、どうなるんでしょうか?」
「そうですね。まず一対一で行うところを、極めることで、より多くを相手にすることができるようになります。また小さな部分だけを目標にしていたのが、より全身を対象とすることができるようにもなりました」
「なるほど、その極めた結果というのが……」
「そうです! 私のアルティメット・キワメ・キャトルミューティレーションは地球全土の牛に対して、しかも内臓だけではなく個体そのものを、消すにまで至ったのです!」
「だからって地球上の牛を絶滅させること、ないじゃないですかー!」
対談相手である地球人代表の畜産農家は怒り狂って怒鳴りつける。
さきほどまで自慢気に語っていた宇宙人は素に返り、その場へ土下座した。
「ホンマ自分、調子に乗り過ぎて、すんませんでしたー!」
以上がキャトルミューティレーション被害の会、第一回会合の顛末である。