第三回 交換と成長
「ここが才能を売る店ってトコか」
入ってきたのは、派手な服に、ゴテゴテとアクセサリをつけた。いかにも自分は金持ちであると主張しているかのような男であった。
深くローブを被った店主の老婆は、しゃがれ声で対応する。
「へい、らっしゃい。何か才能が御入り用で?」
「応よ、俺にアーティストの才能を売ってくれ」
「そのための対価は……御存知ですかな?」
「ああ。売られた才能によって得られる、一生分の収入を寄越せ、ってのがこの店のルールなんだろ?」
男は店主の前にドンと札束を放り投げた。
「俺様は親が既に金持ちだからな。金には不自由しねェんだ。だが金があっても、自己顕示欲ってヤツ? 他人から尊敬されてェって欲はどうにもならねえ。金で俺自身がどうにかならねェ限りな……」
「ええ、全くその通りでございましゅ」
「だが、この店なら俺様は誰しもから尊敬される天才になれる! さあ売ってくれ。俺様がアーティストとして活躍できるよう、才能を!」
「はいはい、お待ちくださいませ。今から計算しましゅからね」
老婆はソロバンを取り出すと、しばらく何か計算しだした。そして……
「はい、御客様へアーティストの才能をお売りした場合の生涯収入が出ましたじゃ」
「おう幾らだ? 何億だって払ってやるぞ」
「残念ながら、御客様へ才能を売ることはできませんじゃ」
驚いた男は老婆の胸ぐらを掴んで叫んだ。
「どういうことだよ! 金なら幾らでも払うってんだろ」
「いえね。御客様がアーティストの才能を持った場合、一生に稼ぐ金はゼロ円。御客様は才能があったとしても、自分では何も作らない。作ろうともしない。そういうお方だったということですじゃ」
顔を真っ赤にして怒り狂う男を前にして老婆は笑った。
「一円でも価値があるのなら話は別ですじゃが、儲けにもならない、商品を無駄にするだけでは、お売りできませんな。これぞ、まさしく宝の持ち腐れというやつですか」




